レモン哀歌
高村光太郎の詩「レモン哀歌」
レモン。異常だった彼女を正常な意識に戻し、彼女との最後の思い出の象徴。妻に先立たれていった詩人の受け入れがたい苦悩が存在している。
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問題文
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(そんなにもあなたはれもんをまっていた)
そんなにもあなたはレモンを待つてゐた
(かなしくしろいあかるいしのとこで)
かなしく白いあかるい死の床で
(わたしのてからとったひとつのれもんを)
私の手からとつた一つのレモンを
(あなたのきれいなはががりりとかんだ)
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ
(とぱーずいろのこうきがたつ)
トパアズいろの香気が立つ
(そのすうてきのてんのものなるれもんのしるは)
その数滴の天のものなるレモンの汁は
(ぱっとあなたのいしきをせいじょうにした)
ぱつとあなたの意識を正常にした
(あなたのあおくすんだめがかすかにわらう)
あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ
(わたしのてをにぎるあなたのちからのけんこうさよ)
わたしの手を握るあなたの力の健康さよ
(あなたののどにあらしはあるが)
あなたの咽喉に嵐はあるが
(こういういのちのせとぎわに)
かういふ命の瀬戸ぎはに
(ちえこはもとのちえことなり)
智恵子はもとの智恵子となり
(しょうがいのあいをいっしゅんにかたむけた)
生涯の愛を一瞬にかたむけた
(それからひととき)
それからひと時
(むかしさんてんでしたようなしんこきゅうをひとつして)
昔山巓でしたやうな深呼吸を一つして
(あなたのきかんはそれなりとまった)
あなたの機関はそれなり止まつた
(しゃしんのまえにさしたさくらのはなかげに)
写真の前に挿した桜の花かげに
(すずしくはなつれもんをきょうもおこう)
すずしく光つレモンを今日も置かう