心霊写真 -37-
師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文
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(ここはほんどうではなく、くろたにけのじゅうきょぶぶんのいっしつだ。)
ここは本堂ではなく、黒谷家の住居部分の一室だ。
(にわにめんしたじょうしきのひろいへやだった。)
庭に面した畳敷の広い部屋だった。
(りょかんにあるようなてーぶるがまんなかにあり、)
旅館にあるようなテーブルが真ん中にあり、
(ぼくらはそれをかこんでざぶとんにこしをおろしていた。)
僕らはそれを囲んで座布団に腰を下ろしていた。
(からだがよわいらしいあきちゃんはついさっきしょうげつにみつかり、)
身体が弱いらしいアキちゃんはついさっき正月に見つかり、
(ちゅうしょくのあとにのむくすりをのまされてかおをしかめていたが、)
昼食の後に飲む薬を飲まされて顔をしかめていたが、
(きげんはなおったようだった。)
機嫌は直ったようだった。
(「だめだよ」)
「だめだよ」
(しょうげつおしょうのあしおとがさったあとで、あきちゃんはわらいながらちいさくそういった。)
正月和尚の足音が去った後で、アキちゃんは笑いながら小さくそう言った。
(ぼくはまたへんなかんかくにおちいる。)
僕はまた変な感覚に陥る。
(さっきひのきのしたで、「またきてね」といって)
さっきヒノキの下で、「またきてね」と言って
(だれもいないばしょをみながらしきりにうなずいていた。それとおなじだ。)
誰もいない場所を見ながらしきりに頷いていた。それと同じだ。
(けげんなひょうじょうをうかべるぼくに、ししょうはこうきいてきた。)
怪訝な表情を浮かべる僕に、師匠はこう訊いてきた。
(「いま、このへやになんにんいるかわかるか」)
「今、この部屋に何人いるか分かるか」
(それをきいて、おもわずてーぶるについているにんげんのかおをじゅんばんにながめる。)
それを聞いて、思わずテーブルについている人間の顔を順番に眺める。
(ししょう。なつお。あきちゃん。そしてぼく。)
師匠。夏雄。アキちゃん。そして僕。
(「よにんですけど」)
「四人ですけど」
(そのこたえをかくにんしてから、ししょうはなつおにもおなじことをきいた。)
その答えを確認してから、師匠は夏雄にも同じことを訊いた。
(なつおは、きょうみなさそうなかおをしながらも、ぼそりといった。)
夏雄は、興味なさそうな顔をしながらも、ボソリと言った。
(「ななにん」)
「七人」
など
(はあ?なんでそうなるんだ。)
はあ?なんでそうなるんだ。
(ぼくはへやのなかをもういちどみまわしたが、)
僕は部屋の中をもう一度見回したが、
(てーぶるのまわりにすわっているにんげんのほかにもだれもいなかった。)
テーブルの回りに座っている人間の他にも誰もいなかった。
(「おしいな。はちにんだ」)
「惜しいな。八人だ」
(ししょうはにやりとわらう。そしてぼくのほうをいみしんにみつめる。)
師匠はニヤリと笑う。そして僕の方を意味深に見つめる。
(れいのことか。)
霊のことか。
(めにみえないそういうそんざいのかずもふくめてだと。)
目に見えないそういう存在の数も含めてだと。
(そういうことなら、ぼくだって・・・・・)
そういうことなら、僕だって・・・・・
(しかくではなく、べつのかんかくをかくちょうさせ、いしきをしゅうちゅうする。)
視覚ではなく、別の感覚を拡張させ、意識を集中する。
(へやちゅうにそのかんかくのねをはりめぐらせ、)
部屋中にその感覚の根を張り巡らせ、
(ひとならぬもののけはいがわだかまっているようなばしょをみつける。)
人ならぬものの気配がわだかまっているような場所を見つける。
(てんじょうふきん。なにか、いる。さまようものが。)
天井付近。なにか、いる。彷徨うものが。
(しかしみつけられたのはそれだけだった。ぼくらとあわせてごにん。)
しかし見つけられたのはそれだけだった。僕らと合わせて五人。
(しかしなつおはななにんといい、ししょうははちにんといった。これはどういうことなのか。)
しかし夏雄は七人と言い、師匠は八人と言った。これはどういうことなのか。
(ししょうはつづける。)
師匠は続ける。
(「と、いいたいところだけど。わたしのこたえがただしいとはかぎらない。)
「と、言いたいところだけど。わたしの答えが正しいとは限らない。
(さて、おひいようにおたずねしてみましょう」)
さて、おひい様にお訪ねしてみましょう」
(いんぎんなたいどで、ししょうはあきちゃんのほうにむきなおった。)
慇懃(いんぎん)な態度で、師匠はアキちゃんの方に向き直った。
(そして「いま、このへやにはなんにんいますか」とたずねる。)
そして「今、この部屋には何人いますか」と訊ねる。
(あきちゃんはめをぱちぱちとさせ、)
アキちゃんは目をぱちぱちとさせ、
(じぶんのよこにいるなつおからじゅんにゆびをさしてかぞえはじめた。)
自分の横にいる夏雄から順に指をさして数え始めた。
(「ひい、ふう、みい、よう、いつ、むう、なな、やあ、ここの、)
「ひい、ふう、みい、よう、いつ、むう、なな、やあ、ここの、
(とお・・・・・」)
とお・・・・・」
(ゆびさきはてーぶるからはずれ、なにもないかべぎわまですすんで、)
指先はテーブルから外れ、なにもない壁際まで進んで、
(またすこしかくどをかえながらもどってくる。)
また少し角度を変えながら戻ってくる。
(「・・・・・にじゅいち、にじゅに、にじゅさん、にじゅし・・・・・」)
「・・・・・にじゅいち、にじゅに、にじゅさん、にじゅし・・・・・」
(にじゅうななのところでぼくをゆびさし、)
二十七のところで僕を指さし、
(そのままそのちいさなゆびはなにもないくうかんにむかってうごきつづける。)
そのままその小さな指は何もない空間に向かって動き続ける。
(「ああ、もういい。もういい」)
「ああ、もういい。もういい」
(ししょうはあきちゃんをとめた。)
師匠はアキちゃんを止めた。
(え?)
え?
(なにこれ。)
なにこれ。
(ぼくはしりのすわりがわるくなるかんじにおそわれ、そわそわしてきた。)
僕は尻の座りが悪くなる感じに襲われ、そわそわしてきた。
(なにをかぞえた。なにをかぞえたんだ。)
何を数えた。何を数えたんだ。
(ふるいもくぞうじゅうたくのにおいがみちるへや。)
古い木造住宅の匂いが満ちる部屋。
(ふるいもくぞうじゅうたくのにおいがみちるへや。)
古い木造住宅の匂いが満ちる部屋。
(にわにめんし、まどがらすのむこうからさわやかなひかりがさしこむへやに、)
庭に面し、窓ガラスの向こうから爽やかな光が差し込む部屋に、
(まったくべつのへやがかさなっているようなきがした。)
全く別の部屋が重なっているような気がした。
(しろとくろ。ねがとぽじ。)
白と黒。ネガとポジ。
(そこに、なにがいるのか。)
そこに、何がいるのか。