あの夏の影 2
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問題文
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(あのうみ。)
あの海。
(あのゆうやけ。)
あの夕焼け。
(くだらないはなし。)
くだらない話。
(そして、みなと。)
そして、湊。
(あるなつのひ。)
ある夏の日。
(わたしはひさしぶりに、ひとりであのうみへいった。)
私は久しぶりに、一人であの海へ行った。
(ゆうがただった。)
夕方だった。
(すなはまにすわって、うみをながめていた。)
砂浜に座って、海を眺めていた。
(すると、すこしはなれたところによっつのかげがみえた。)
すると、少し離れたところに四つの影が見えた。
(わたしのかげ。)
私の影。
(そして、そのとなりにみっつ。)
そして、その隣に三つ。
(だれもいないのに。)
誰もいないのに。
(わたしはたちあがった。)
私は立ち上がった。
(かげはよっつだった。)
影は四つだった。
(むかしのわたしたちとおなじ。)
昔の私たちと同じ。
(よにんぶん。)
四人分。
(でも、なぜかこわくはなかった。)
でも、なぜか怖くはなかった。
(むしろ、)
むしろ、
(「そうだよね」)
「そうだよね」
(とおもった。)
と思った。
など
(あのなつ、わたしたちはごにんだった。)
あの夏、私たちは五人だった。
(でもいまここにいるのは、わたしひとり。)
でも今ここにいるのは、私一人。
(それでも、あのなつだけはよにんじゃなくて、)
それでも、あの夏だけは四人じゃなくて、
(ちゃんとごにんだった。)
ちゃんと五人だった。
(ゆうひがしずむ。)
夕日が沈む。
(かげがながくのびる。)
影が長く伸びる。
(そしていっしゅんだけ、)
そして一瞬だけ、
(わたしのすぐとなりに、もうひとつかげがかさなった。)
私のすぐ隣に、もう一つ影が重なった。
(わたしはなにもいわなかった。)
私は何も言わなかった。
(ただ、)
ただ、
(「またくるね」)
「また来るね」
(とつぶやいた。)
と呟いた。
(かえりみち、すまほをみると、むかしのぐるーぷlineからつうちがきていた。)
帰り道、スマホを見ると、昔のグループLINEから通知が来ていた。
(じゅうねんいじょううごいていなかったぐるーぷだった。)
十年以上動いていなかったグループだった。
(ひらく。)
開く。
(だれもめっせーじをおくっていない。)
誰もメッセージを送っていない。
(でも、あるばむにいちまいだけあたらしいしゃしんがついかされていた。)
でも、アルバムに一枚だけ新しい写真が追加されていた。
(ゆうやけのうみ。)
夕焼けの海。
(だれがとったのかはわからない。)
誰が撮ったのかはわからない。
(しゃしんのはしには、ごにんぶんのかげがのびていた。)
写真の端には、五人分の影が伸びていた。
(わたしはそのしゃしんをほぞんした。)
私はその写真を保存した。
(そして、みんなにおくった。)
そして、みんなに送った。
(だれもへんじはしなかった。)
誰も返事はしなかった。
(たぶん、みまちがいだったんだとおもう。)
たぶん、見間違いだったんだと思う。
(きっとだれかがむかしのしゃしんをまちがえてついかしただけ。)
きっと誰かが昔の写真を間違えて追加しただけ。
(そういうことにしておいた。)
そういうことにしておいた。
(だって、)
だって、
(あのなつがほんとうにおわってしまったなんて、)
あの夏が本当に終わってしまったなんて、
(いまでもすこししんじられないから。)
今でも少し信じられないから。
(なつがくるたび、わたしはおもう。)
夏が来るたび、私は思う。
(おとなになって、)
大人になって、
(すむばしょがかわって、)
住む場所が変わって、
(なまえがかわって、)
名前が変わって、
(あえなくなっても。)
会えなくなっても。
(あのひ、うみでわらったわたしたちは、)
あの日、海で笑った私たちは、
(まだどこかにいる。)
まだどこかにいる。
(ゆうぐれのすなはまで、)
夕暮れの砂浜で、
(なんねんたってもきえないかげみたいに。)
何年経っても消えない影みたいに。
(そしてたぶん、)
そしてたぶん、
(あいつはいまも、)
あいつは今も、
(すこしうしろをあるいている。)
少し後ろを歩いている。