ペーパームーン

(ひだりむねにつけたぎこちないこさーじゅ)

左胸につけた　ぎこちないコサージュ

(よばれるなまえかんじょうのないへんじをするだけ)

呼ばれる名前　感情のない返事をするだけ

(あのこうもんをでればかたがきがかわるの)

あの校門を出れば　肩書きが変わるの

(みなれたこのきょうしつをとびだすことができない)

見慣れたこの教室を　飛び出すことができない

(よあけまえちかくてとおいみかづきのように)

夜明け前　近くて遠い三日月のように

(ぼくはあすのゆくえさえもつかめない)

僕は明日の行方さえも　掴めない

(だれかいきさきをおしえてせいふくをぬぎすてたら)

誰か行き先を教えて　制服を脱ぎ捨てたら

(すべてわかったふりをしてあるかなくちゃいけない)

全て分かった振りをして　歩かなくちゃいけない

(ぼくはみせかけのぺーぱーむーん)

僕は見せかけのペーパームーン

(なみだをうかべてはだきあうともだちに)

涙を浮かべては　抱き合う友達に

(わからないままぼくはただうなずいている)

分からないまま　僕はただ頷いている

(またねとてをふったあてのないやくそく)

「またね。」と手を振った　宛のない約束

(さよならにかわることばだれもおしえてくれない)

「さよなら」に代わる言葉　誰も教えてくれない

(じぶんできめたはずのきんみらいなのに)

自分で決めたはずの　近未来なのに

(ふあんだけがいまもぼくをはなれない)

不安だけが今も僕を　離れない

(きみのようにわらえない)

君のように笑えない

(きみのようになけない)

君のように泣けない

(だれか)

誰か

(だれかいきさきをおしえてはるがめぶきはじめたら)

誰か行き先を教えて　春が芽吹き始めたら

(おとなになったふりをしてわらわなくちゃいけない)

大人になった振りをして　笑わなくちゃいけない

(すぎさっていくきせつにながされていくだけ)

過ぎ去っていく季節に　流されていくだけ

(ぼくはみせかけのぺーぱーむーん)

僕は見せかけのペーパームーン