ナイトダイバー

(めぐるなつのよるほしがながれこんで)

巡る夏の夜 星が流れ込んで

(ひとりおよぐうみのそこてらしだすよ)

一人游ぐ海の底 照らし出すよ

(いろづいたせかいにうかんだちっぽけなぼくは)

色付いた世界に浮かんだちっぽけな僕は

(はてないしんかいのゆめをみている)

果てない深海の夢を見ている

(ねむれないをさんしゅうしたいまのすいしんはおよそろくせんめーたー)

「眠れない」を三周した今の水深は凡そロクセンメーター

(きがついてのぞきこんだまどのそとこうかいはじゅんちょうのようだ)

気が付いて覗き込んだ窓の外 航海は順調のようだ

(ながれるけしききおくなつのいろにおいはだざわりみずのおと)

流れる景色 記憶 夏の色 匂い 肌触り 水の音

(すぎさったおもいでがそっといきをする)

過ぎ去った思い出がそっと息をする

(つかれたひびをもがくばかりで)

疲れた日々を藻掻くばかりで

(おぼれかけのげんざいを)

溺れかけの現在を

(だきしめたならくちづけをして)

抱き締めたなら接吻をして

(わすれてさぁよるのうみのとりこに)

忘れて さぁ夜の海の虜に

(ひらくなつのはなよるにうつりこんで)

開く夏の花 夜に映り込んで

(ひとりくれるうみのそこひびきだすよ)

一人暮れる海の底 響き出すよ

(はなやいだせかいにうかんだぶきりょうなぼくは)

華やいだ世界に浮かんだ不器量な僕は

(まばゆいしんかいのゆめをみている)

眩い深海の夢を見ている

(やるせないをよんしゅうしてすでにすいしんはおよそななせんめーたー)

「遣る瀬無い」を四周して既に水深は凡そナナセンメーター

(きずついてふさぎこんでもじんせいはまだまだおわらないようだ)

傷ついて塞ぎ込んでも人生はまだまだ終わらないようだ

(こぼれるしずくおちたなみだくらいしんかいにきえてゆく)

零れる雫 落ちた涙 暗い深海に消えてゆく

(きらめいたおもいでがふっとよみがえる)

煌めいた思い出がふっと蘇る

(ささいなことでみずましされた)

些細なことで水増しされた

(にがいだけのこうかいを)

苦いだけの後悔を

(あまくとかしてくちうつしして)

甘く溶かして口移しして

(わすれてほらよるのうみのとりこに)

忘れて ほら夜の海の虜に

(すぎるなつのかぜよるはだまりこんで)

過ぎる夏の風 夜は黙り込んで

(ひとりよどむうみのそこながれだすよ)

一人淀む海の底 流れ出すよ

(かけだしたせかいにうかんだものぐさなぼくは)

駆け出した世界に浮かんだ物臭な僕は

(とけないしんかいのゆめをみている)

解けない深海の夢を見ている

(ついにほしのむれはかえって)

終に星の群れは還って

(よるがすこしかるくなる)

夜が少し軽くなる

(ふいにあさをつげるあいずも)

不意に朝を告げる合図も

(わすれてもうなつのうみのとりこに)

忘れて もう夏の海の虜に

(めぐるなつのよるほしがながれこんで)

巡る夏の夜 星が流れ込んで

(ひとりおよぐうみのそこてらしだすよ)

一人游ぐ海の底 照らし出すよ

(いろづいたせかいにうかんだちっぽけなぼくは)

色付いた世界に浮かんだちっぽけな僕は

(はてないしんかいのゆめにみとれたまま)

果てない深海の夢に見惚れたまま

(そしてなつのほしがきえてったあとは)

そして夏の星が消えてった後は

(どこまでもしずめてよねぇ)

どこまでも沈めてよ ねぇ

(まだねむるせかいをおこしたくなかったぼくは)

まだ眠る世界を起こしたくなかった僕は

(はかないしんかいのゆめをみている)

儚い深海の夢を見ている