海野十三『予報省告示』

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荒唐無稽の出来事を予報形式で、終戦直後までの時代に遡った作品。
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1 すもさん 4966 B 5.2 94.2% 1501.4 7940 483 95 2024/11/15

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(じんれき10946ねん13がつ9にち。ほんじつをもってちきゅうはげんしばくだんをじゃっきし、)

人暦一万九百四十六年十三月九日。本日を以て地球は原子爆弾を惹起し、

(だいばくはつは23じかんにわたってけいぞくしたあと、ちきゅうはかんぜんにがすじょうとかす。なお、この)

大爆発は二十三時間に亘って継続した後、地球は完全にガス状と化す。尚、この

(がすじょうちきゅうが、はたしてしんせいうんにまではってんしうるや、それともうちゅうじんとして)

ガス状地球が、果して新星雲にまで発展し得るや、それとも宇宙塵として

(ていめいするにすぎさるや、もっかのところよほうしりょうぶそくのためすいていしがたい。)

低迷するに過ぎさるや、目下のところ予報資料不足のため推定しがたい。

(じんれき10800ねん。ちきゅうはいまやだい5ひょうがきのさんかによりだっするにいたった。きこうは)

人暦一万八百年。地球は今や第五氷河期の惨禍により脱するに至った。気候は

(ほとんどせいじょうにふくした。こおりはほくい50どまで、およびなんい50どまで、おおうにすぎ)

殆んど正常に復した。氷は北緯五十度まで、及び南緯五十度まで、蔽うに過ぎ

(ない。しょくぶつは、だい5ひょうがきしゅうらいまえの0.5ぱーせんとしかそんざいせず、しかもすいじゃくの)

ない。植物は、第五氷河期襲来前の〇.五パーセントしか存在せず、而も衰弱の

(しるしがいちじるしく、ぜんじすいめつするものとおもわれる。ちきゅうはいまやきんぞくのせかいである。かれら)

徴が著しく、漸次衰滅するものと思われる。地球は今や金属の世界である。彼ら

(きんぞくのちのうといしによって、けんらんたるしんちきゅうがけんせつされようとしている。ちきゅうは)

金属の智能と意志によって、絢爛たる新地球が建設されようとしている。地球は

(だいこうじによってけいじょうをしゅうせいされたうえ、こうてんのきずなをたちきってじゆうきどうをさいようする)

大工事によって形状を修整された上、公転の絆を断ち切って自由軌道を採用する

(ことになろう。これらのだいこうじやじりきうんこうのため、げんしりょくえねるぎーのかつようは)

ことになろう。これらの大工事や自力運行のため、原子力エネルギーの活用は

(きかきゅうすうてきにぞうだいされる。が、そこにあるしゅのききをはらんでいるようである。)

幾何級数的に増大される。が、そこに或る種の危機を孕んでいるようである。

(じんれき9111ねん。ついにだい5ひょうがきがしゅうらい!つきはついにかいすいにふれほうかいする。)

人暦九千百十一年。遂に第五氷河期が襲来! 月は遂に海水に触れ崩壊する。

(そのはへんとじんどはちきゅうぜんめんをおおい、そらはあんこくとかし、つづいてきおんこうかがはじまり、)

その破片と塵土は地球全面を蔽い、空は暗黒と化し、続いて気温降下が始まり、

(それはきゅうげきにこうかしていき、ちひょうはじんそくにひょうがきてきけいかんにかわる。しょくぶつの)

それは急激に降下して行き、地表は迅速に氷河期的景観に変わる。植物の

(とうしするものかずしれず、せかいのこうつうはとぜつし、ちつじょはもはやたもたれなくなる。)

凍死するもの数知れず、世界の交通は杜絶し、秩序はもはや保たれなくなる。

(さしものせかいしはいぞくたりしかどうしょくぶつたちも、そのせいぶつてきじゃくてんによりせいぞんを)

さしもの世界支配族たりし可動植物たちも、その生物的弱点により生存を

(おどされるにいたり、ことにかれらのむはんせいなほんのうしゅぎは、このようなてんさいにたいする)

脅されるに至り、殊に彼らの無反省な本能主義は、このような天災に対する

(よういをかいていたので、だい5ひょうがきのしゅうらいはかれらにとってちめいてきだげきである。)

用意を欠いていたので、第五氷河期の襲来は彼らにとって致命的打撃である。

(なお、とうじざんそんしたやく3ぜんめいのちきゅうじんるいはゆくえふめいとなる。かれらのおおくは、ちてい)

尚、当時残存した約三千名の地球人類は行方不明となる。彼らの多くは、地底

など

(ていじゅうのどりょくなかばにおいて、こうどうないでしめつ。じんれき8194ねん。しはいとうきょくの)

定住の努力半ばに於て、坑道内で死滅。人暦八千百九十四年。支配当局の

(げんじゅうたるとりしまりとけいかいにもかかわらず、ちきゅうがいにだつひせるちきゅうじんるいのそうすうは、この)

厳重たる取締と警戒にも拘らず、地球外に脱飛せる地球人類の総数は、この

(としにおいてさいだいきろくにたっし、この1ねんかんだけで95まん5せんよめいとすいていされる。)

年に於て最大記録に達し、この一年間だけで九十五万五千余名と推定される。

(そしてだつひにせいこうせず、りりくいぜんにおいてしょくぶつのためとりおさえられしょけいされたものは、)

そして脱飛に成功せず、離陸以前に於て植物のため取押えられ処刑された者は、

(やく4せん4ひゃくまんめいにたっする。かれらだつひしゃたちのおおくがめざすところは、りゅうこつざみっしゅう)

約四千四百万名に達する。彼ら脱飛者たちの多くが目指すところは、龍骨座密集

(せいずにぞくするすばるたいようけいの7このわくせいであるが、かれらがこのうちゅういじゅうに)

星図に属するスバル太陽系の七個の惑星であるが、彼らがこの宇宙移住に

(せいこうするためにはさいたんろをとるとしてやく1せんこうねんのきょりをしょうひせねばならず、)

成功するためには最短路をとるとして約一千光年の距離を翔飛せねばならず、

(じっさいにもくてきちへとうたつしうるものはぜんたいの1ぱーせんとていどであろう。しかしちきゅう)

実際に目的地へ到達し得る者は全体の一パーセント程度であろう。しかし地球

(じんるいとしては、しょくぶつよりうけるかこくなるあっぱくによるぜつぼうと、だい5ひょうがきしゅうらいの)

人類としては、植物より受ける過酷なる圧迫による絶望と、第五氷河期襲来の

(よそくとにより、きけんをしょうちで、このさいごのとばくにさんかするほかない。)

予測とにより、危険を承知で、この最後の賭博に参加する外ない。

(じんれき6550ねん。せかいのこんらんはきょくどにたっする。こんらんをしょうずるいんしは、なんと)

人暦六千五百五十年。世界の混乱は極度に達する。混乱を生ずる因子は、何と

(いってもないゆうがいかんのげきかにある。すなわちちきゅうがいのほかのわくせいからのしんにゅうしゃは)

いっても内憂外患の激化にある。すなわち地球外の他の惑星からの侵入者は

(4せんまんにたっし、これをぼうえいするちきゅうしょくぶつとちきゅうじんるいとはじつりょくにおいてつねに)

四千万に達し、これを防衛する地球植物と地球人類とは実力に於て常に

(ふりなるたちばにあり、しかもちきゅうしょくぶつ、ことにかどうしょくぶつはちきゅうじんるいをふくじゅうないし)

不利なる立場にあり、而も地球植物、殊に可動植物は地球人類を服従乃至

(むりょくかせんとしていたるところにおいてぼうこうをこととし、しじょうさいこうのあんこくじだいである。この)

無力化せんとして到る所に於て暴行を事とし、史上最高の暗黒時代である。この

(こんらんのきゅうきょくにおいて、ちのうのてんでちきゅうせいぶつよりだんちがいにすぐれているほかの)

混乱の究極に於て、智能の点で地球生物より段違いにすぐれている他の

(わくせいよりのしんにゅうしゃがしょうりをしめそうにおもわれるじきがあったが、なぜかかれらは)

惑星よりの侵入者が勝利を占めそうに思われる時機があったが、何故か彼らは

(とつぜんてったいをかいししたので、うちゅうのしんにゅうしゃによるわざわいはきゅうにかいしょうするにいたる。)

突然撤退を開始したので、宇宙の侵入者による禍は急に解消するに至る。

(せかいれき2200ねん。じんるいはちきゅうのしはいけんをついにしょくぶつにゆずらなければならなく)

世界暦二千二百年。人類は地球の支配権を遂に植物に譲らなければならなく

(なる。じんるいはもはやとうてい、そのりょうとちからのうえにおいて、かどうしょくぶつぐんにたいこうしうるもの)

なる。人類は最早到底、その量と力の上に於て、可動植物群に対抗し得るもの

(ではない。かれらしょくぶつぐんのほんのういずむとそのえねるぎーは、じんるいがじゅうらいつみあげた)

ではない。彼ら植物群の本能イズムとそのエネルギーは、人類が従来積上げた

(あらゆるぶんかりょくやぼうえいりょくをしょうさつし、むじひにじゅうりんし、そしてむざんにはかいして)

あらゆる文化力や防衛力を笑殺し、無慈悲に蹂躙し、そして無残に破壊して

(いく。じんるいのうんめいはあきらかにかたむいたといえる。せかいれき2105ねん。だい4ひょうがきは)

行く。人類の運命は明らかに傾いたといえる。世界暦二千百五年。第四氷河期は

(しゅうそくをつげた。ちきゅうのうえにふたたびはるがおとずれた。だが、しんこくなるちていたいぼうせいかつ)

終熄を告げた。地球の上に再び春が訪れた。だが、深刻なる地底耐乏生活

(ひゃくねんをへて、ちじょうにはいだしたひとたちは、ひょうがきいぜんのやくひゃくぶんの1にすぎない。)

百年を経て、地上に匍い出した人達は、氷河期以前の約百分の一に過ぎない。

(しかしこのりつは、よそうがいのこうせいせきである。ちきゅうじょうに、はるはおとずれ、なつはきたった。)

しかしこの率は、予想外の好成績である。地球上に、春は訪れ、夏は来った。

(ひゃっかひらき、じゅかいはひろがり、かびるいはおそろしくせいせいし、ちきゅうぜんたいはみどりでおおわれ)

百花開き、樹海は拡がり、黴類は恐ろしく生成し、地球全体は緑で蔽われ

(ひとびとはたらふくやさいやかじつをとってよろこぶ。だがひとびとは、はえとりごけがにんげんにかみつく)

人々はたらふく野菜や果実をとって悦ぶ。だが人々は、蠅取苔が人間に噛みつく

(ようになったり、ほこうするしょくぶつにであったりするので、すこしきみがわるくなる。)

ようになったり、歩行する植物に出会ったりするので、少し気味が悪くなる。

(せかいれき2055ねん。だい4ひょうがきがしゅうらい!きたたいへいようとみなみたいへいようとにおいて、)

世界暦二千五十五年。第四氷河期が襲来! 北太平洋と南太平洋とに於て、

(げきれつなるかざんかつどうがはじまり、そのふんしゅつぶつはてんくうにまいあがってたいようのひかりを)

激烈なる火山活動が始まり、その噴出物は天空に舞上って太陽の光を

(しゃだんするにいたる。かくしてひょうがきとなる。かざんがっかいはこれをほぼよほうしえたので)

遮断するに至る。かくして氷河期となる。火山学界はこれをほぼ予報し得たので

(あるが、さんかをまえにしてぼうぜんじしつのていたらく。けだしひょうがきのさいかはせかいのゆうする)

あるが、惨禍を前にして呆然自失の態たらく。蓋し氷河期の災禍は世界の有する

(こうぎょうりょくとはけたちがいにげきじんなのである。なお、ふこうちゅうのさいわいともいうべきは、)

工業力とは桁ちがいに激甚なのである。尚、不幸中の幸ともいうべきは、

(ちきゅうがいよりのしんこうがこのてんさいのためにしゅうそくしたことだ。)

地球外よりの侵寇がこの天災のために終熄したことだ。

(せかいれき2001ねん13がつ13にち。うちゅうせんそうがぼっぱつする。おうぴあんせいのわくせい)

世界暦二千一年十三月十三日。宇宙戦争が勃発する。オウピアン星の惑星

(きりきずのぐんじしゅぎみんぞくぐんだんせん2ひゃくまんにんがしゅうらいする。しんこうのもくてきは、ちきゅうを)

キリキズの軍事主義民族軍団千二百万人が襲来する。侵寇の目的は、地球を

(しげんこの1つとするにあり、ことにじんるいのかちくかというきたないよくぼうをゆうしている。)

資源庫の一つとするにあり、殊に人類の家畜化という穢い欲望を有している。

(ちきゅうぼうえいぐんはだいくせんにおちいる。にほんこくみんはぶんかがいこうのめんにおいておおいにかつやくし、)

地球防衛軍は大苦戦に陥る。日本国民は文化外交の面に於いて大いに活躍し、

(そうとうのしゅうかくあり。なお、うちゅうせんそうのぼっぱつにより、だい3じせかいせんそうはきゅうせんとなり、)

相当の収穫あり。尚、宇宙戦争の勃発により、第三次世界戦争は休戦となり、

(きゅうてんちょっかしてせかいどうめいなる。せかいれき2000ねん1がつ19にち。たいせいようおうだんの)

急転直下して世界同盟成る。世界暦二千年一月十九日。大西洋横断の

(りょかくきとかもつきが2かげつまえよりしくしくとしてゆくえふめいとなっていたが、そのじけんを)

旅客機と貨物機が二ヶ月前より頻々として行方不明となっていたが、その事件を

(ちょうさのけっかほんじつ1だいはっけんなる。それによれば、たいせいようのせきどうふきんのかいちゅうに)

調査の結果本日一大発見成る。それによれば、大西洋の赤道附近の海中に

(かいぞくだんあり、じゅうらいゆくえふめいなりしひとびとはかいていのせんそうのごときもののなかに)

怪賊団あり、従来行方不明なりし人々は海底の船艙の如きものの中に

(ゆうへいせられていることがあきらかとなった。とうじ、せかいせんそうちゅうではあったが、その)

幽閉せられて居ることが明かとなった。当時、世界戦争中ではあったが、その

(せんそうちゅうのふべんふりをしのんで、これらのふしゅうのだっかんがこころみられた。しかしあいては)

戦争中の不便不利を忍んで、これらの俘囚の奪還が試みられた。しかし相手は

(きょだいなるはんげきりょくをゆうし、しかもわれらのちしきにぜんぜんなきぶきをゆうしていて、だっかんは)

巨大なる反撃力を有し、而もわれらの知識に全然なき武器を有して居て、奪還は

(ふせいこうにおわった。そしてしりえたのは、かいぞくだんがちきゅうじんるいではなく、ほかのわくせいの)

不成功に終った。そして知り得たのは、怪賊団が地球人類ではなく、他の惑星の

(せいぶつぐんのそしきするえんせいたいないしたんけんたいらしいということだけであった。9がつ9にち、)

生物群の組織する遠征隊乃至探検隊らしいということだけであった。九月九日、

(かれらはこつぜんとして、たいせいようかいちゅうをてっきょし、このしゅのじけんはあとをたった。)

彼らは忽然として、大西洋海中を撤去し、この種の事件は跡を絶った。

(せかいれき1999ねん4がつ1にち。だい3せかいせんそうがぼっぱつする。ただし4がつばかでは)

世界暦千九百九十九年四月一日。第三世界戦争が勃発する。但し四月馬鹿では

(ない。せかいれき1990ねん。にんげんのじゅみょうはむげんとなしうることにせいこうする。その)

ない。世界暦千九百九十年。人間の寿命は無限となし得ることに成功する。その

(ほうほうは、しゅじゅつほうときかいだいようほうとで、ぜんしゃはこうしゃにひし1せんばいこうかである。この)

方法は、手術法と機械代用法とで、前者は後者に比し一千倍高価である。この

(せいこうは、せかいじゅうをかんきせしめ、せかいさいが3かげつれんぞくにおこなわれる。じんるいはこうふくの)

成功は、世界中を歓喜せしめ、世界祭が三ヶ月連続に行われる。人類は幸福の

(ぜっちょうにある。せかいれき1980ねん。かせいたんけんはふせいこうにおわる。かせいじょうりくはぜったいに)

絶頂にある。世界暦千九百八十年。火星探検は不成功に終る。火星上陸は絶対に

(ふかのうとけっていされる。けだし、かせいじょうくうにあるうちゅうじんのぼうがいによるものと)

不可能と決定される。蓋し、火星上空にある宇宙塵の妨害によるものと

(おもわれる。なお、かせいにはせいぶつはなく、しょくぶつははんもしているが、かとうのもの)

思われる。なお、火星には生物はなく、植物は繁茂しているが、下等のもの

(ばかりで、かせいはいちろすいめつにちょくしんせることがはんめいし、ながいあいだのおとぎばなしがごはさんと)

ばかりで、火星は一路衰滅に直進せることが判明し、永い間のお伽噺が御破算と

(なる。せかいれき1960ねん8がつ8にち。げっせかいたんけんにせいこうする。つづいてせかいまんゆう)

なる。世界暦千九百六十年八月八日。月世界探検に成功する。つづいて世界漫遊

(ひこうがいしゃせつりつし、りょこうもうしこみしゃがさっとうする。せかいれき1955ねん。ちきゅう1しゅうが)

飛行会社設立し、旅行申込者が殺到する。世界暦千九百五十五年。地球一周が

(12じかんでできるようになる。げんしえんじんのかんせいをみたためである。うちゅう)

十二時間で出来るようになる。原子エンジンの完成を見たためである。宇宙

(ひこうのきぎょうがさかんになる。せかいれき1949ねん10がつ。にほんのしょくりょうけつぼうもんだいが)

飛行の企業が盛んになる。世界暦千九百四十九年十月。日本の食糧欠乏問題が

(かいけつする。こめをはじめ、しょくりょうはすべてじゆうはんばいとなる。せかいれき1947ねん。)

解決する。米を始め、食糧はすべて自由販売となる。世界暦千九百四十七年。

(きがのためにほんじんしするものぞくしゅつ。「ちゅう」みぎのよほうしょうこくじは、しょういんがせいしん)

飢餓のため日本人死するもの続出。〔註〕右の予報省告示は、省員が精神

(もうろうじょうたいによそくしたものであって、たぶんこのようなくらいことだらけのよほうは)

もうろう状態に予測したものであって、多分このような暗いことだらけの予報は

(ぜんぜんてきちゅうしないであろうとしりょうせられるが、はらのへったるにんげんというものは)

全然的中しないであろうと思料せられるが、腹の減ったる人間というものは

(どんなもうそうをいだくにいたるかといういがくてきしりょうとしてさんこうになるかとおもわれる)

どんな妄想を抱くに至るかという医学的資料として参考になるかと思われる

(ので、あえてけいさいするしだいなり。「どくごかんその1」このよほうしょうこくじは、そんなに)

ので、敢えて掲載する次第なり。〔読後感その一〕この予報省告示は、そんなに

(くらくないよ。じんるいはやがて、すばるたいようけいのわくせいへうちゅういじゅうし、かのちで)

暗くないよ。人類はやがて、スバル太陽系の惑星へ宇宙移住し、かの地で

(はんえいするのだから、あかるいじゃないか。(だいがくせい)「どくごかんその2」まだ2ねん)

繁栄するのだから、明るいじゃないか。(大学生)〔読後感その二〕まだ二年

(たたないと、しょくりょうじじょうはこうてんしないのですか。わたしはあと1ねんでかいふくするよう)

経たないと、食糧事情は好転しないのですか。私はあと一年で回復するよう

(いのっていますのに。(こだくさんのちちおや)「どくごかんその3」これがほんとうなら、)

祈っていますのに。(子沢山の父親)〔読後感その三〕これが本当なら、

(しきゅうに、せかいはきょうりょくして、ひょうがきたいさくちょうさじぎょうをおこすべきだとかんがえます。)

至急に、世界は協力して、氷河期対策調査事業を起すべきだと考えます。

((ふじんだいぎしこうほしゃ)「どくごかんその4」またせんそうだなどと、そんなふきつなことを)

(婦人代議士候補者)〔読後感その四〕また戦争だなどと、そんな不吉なことを

(いうなよ。(こりごりせい))

いうなよ。(懲々生)

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海野十三

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