桜の子/カンザキイオリ

(ちりぎわ)

散り際

(はじまりをしっていた)

始まりを知っていた

(ぼくらはとうめいでじゅんすいなあおさを)

僕らは透明で純粋な青さを

(おとなびたあかでそめた)

大人びた赤で染めた

(きみはさくらのこ)

君は桜の子

(ぼくらおなじかみいろで)

僕ら同じ髪色で

(おなじはだをしていたら)

同じ肌をしていたら

(ちぎれそうなきみのからだすべて)

千切れそうな君の体全て

(しれたきになれるだろう)

知れた気になれるだろう

(でもいいよ)

でもいいよ

(なにになれるかしらない)

何になれるか知らない

(きみもはるしかであえない)

君も春しか出会えない

(それでいいじゃん)

それでいいじゃん

(ふかくていなもんだろう)

不確定なもんだろう

(ちりぎわ)

散り際

(はじまりをしっていた)

始まりを知っていた

(ぼくらはとうめいでじゅんすいなあおさを)

僕らは透明で純粋な青さを

(しおづけでのみこんだ)

塩漬けで飲み込んだ

(きみはさくらのこ)

君は桜の子

(とつぜんあらわれたきみは)

突然現れた君は

(ぶたいをうばいさってったんだ)

舞台を奪い去ってったんだ

(はるかぜのようにまうように)

春風のように舞うように

(きみはどこかへきえたんだ)

君はどこかへ消えたんだ

(だからはるになれば)

だから春になれば

(ぼくはこのみちをあるく)

僕はこの道を歩く

(なんねんでもそこにいる)

何年でもそこにいる

(きみをさがしている)

君を探している

(ちりぎわ)

散り際

(はじまりをしっていた)

始まりを知っていた

(ぼくらはいっしゅんでちってしまうあおさを)

僕らは一瞬で散ってしまう青さを

(うけいれられないまんまおとなになってく)

受け入れられないまんま大人になってく

(たとえばぼくがさくらならば)

例えば僕が桜ならば

(きみとともにちれたなら)

君と共に散れたなら

(つちのなかできみのてをつないでそらにこいをしよう)

土の中で君の手を繋いで空に恋をしよう

(よまいごとにぼくはなんどでもきみをかさねている)

世迷言に僕は何度でも君を重ねている

(ちりぎわ)

散り際

(はなびらはしっていた)

花弁は知っていた

(ぼくらはとうめいでじゅんすいなあおさを)

僕らは透明で純粋な青さを

(おとなびたあかでけした)

大人びた赤で消した

(であうたびめぐるさよなら)

出会う旅巡るさよなら

(はるばかりまっている)

春ばかり待っている

(ぼくだけとうめいでじゅんすいなあおさを)

僕だけ透明で純粋な青さを

(うけいれられないよ)

受け入れられないよ

(きみはさくらのこ)

君は桜の子