蟹工船3

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プレイ回数810難易度(4.8) 2277打 長文
1929年小林多喜二の小説。プロレタリア文学を代表する作品。
原文は青空文庫から。感嘆符、疑問符、句読点などを除き記号は省略しています。 ルビを<>で示し、一部の原文の読みを読みやすさを優先して無視し、わかりやすくしています。当用漢字が使われていることに注意してください。

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(そこからすこしはなれたたなに、ふつかよいのあおぶくれにむくんだかおをした、) そこから少し離れた棚に、宿酔<ふつかよい>の青ぶくれにムクンだ顔をした、 (あたまのまえだけをながくしたわかいぎょふが、) 頭の前だけを長くした若い漁夫が、 (おれあもうこんどこそあふねさこねえっておもってたんだけれどもな) 「俺アもう今度こそア船さ来ねえッて思ってたんだけれどもな」 (とおおごえでいっていた。) と大声で云っていた。 (しゅうせんやにひっぱりまわされて、だいなしになってよ。) 「周旋屋に引っ張り廻されて、文無しになってよ。 (また、なげえことくたばるめにあわされるんだ) ----又、長げえことくたばるめに合わされるんだ」 (こっちにせをみせているおなじところからきているらしいおとこが、) こっちに背を見せている同じ処から来ているらしい男が、 (それになにかひそひそいっていた。) それに何かヒソヒソ云っていた。 (はっちのおりくちにはじめかまあしをみせて、) ハッチの降口に始め鎌足を見せて、 (ごろごろするおおきなむかしふうのしんげんぶくろをになったおとこが、はしごをおりてきた。) ゴロゴロする大きな昔風の信玄袋を担った男が、梯子を下りてきた。 (ゆかにたってきょろきょろみまわしていたが、) 床に立ってキョロキョロ見廻わしていたが、 (あいているのをみつけると、たなにのぼってきた。) 空いているのを見付けると、棚に上って来た。 (きょうはといって、よこのおとこにあたまをさげた。) 「今日は」と云って、横の男に頭を下げた。 (かおがなにかでそまったように、あぶらじみて、くろかった。) 顔が何かで染ったように、油じみて、黒かった。 (なかまさえれてもらえます) 「仲間さ入<え>れて貰えます」 (あとでわかったことだが、) 後で分ったことだが、 (このおとこは、ふねへくるすぐまえまでゆうばりたんこうにななねんもこうふをしていた。) この男は、船へ来るすぐ前まで夕張炭坑に七年も坑夫をしていた。 (それがこのまえのがすばくはつで、あやうくしにそこねてから) それがこの前のガス爆発で、危く死に損ねてから (まえになんどかあったことだが) ----前に何度かあった事だが---- (ふいとこうふがおそろしくなり、やまをおりてしまった。) フイと坑夫が恐ろしくなり、鉱山<やま>を下りてしまった。
など
(ばくはつのとき、かれはおなじこうないにとろっこをおしてはたらいていた。) 爆発のとき、彼は同じ坑内にトロッコを押して働いていた。 (とろっこにいっぱいせきたんをつんで、ほかのひとのうけもちばまでおしていったときだった。) トロッコに一杯石炭を積んで、他の人の受持場まで押して行った時だった。 (かれはひゃくのまぐねしうむをしゅんかんめのまえでたかれたとおもった。) 彼は百のマグネシウムを瞬間眼の前でたかれたと思った。 (それと、そして1/500びょうもちがわず、) それと、そして1/500秒もちがわず、 (じぶんのからだがかみっきれのようにどこかへとびあがったとおもった。) 自分の身体が紙ッ片<かみっきれ>のように何処かへ飛び上ったと思った。 (なんだいというとろっこががすのあつりょくで、) 何台というトロッコがガスの圧力で、 (めのまえをからのまっちばこよりもかるくふっとんでいった。) 眼の前を空のマッチ箱よりも軽くフッ飛んで行った。 (それっきりわからなかった。どのくらいたったか、じぶんのうなったこえでめがひらいた。) それッ切り分らなかった。どの位経ったか、自分のうなった声で眼が開いた。 (かんとくやこうふがばくはつがほかへおよばないように、たんこうにかべをつくっていた。) 監督や工夫が爆発が他へ及ばないように、坑道に壁を作っていた。 (かれはそのときかべのうしろから、たすければたすけることのできるたんこうふの、) 彼はその時壁の後から、助ければ助けることの出来る炭坑夫の、 (いちどきいたらこころにぬいこまれでもするように、けっしてわすれることのできない、) 一度聞いたら心に縫い込まれでもするように、決して忘れることの出来ない、 (すくいをもとめるこえをはっきりきいた。) 救いを求める声を「ハッキリ」聞いた。 (かれはきゅうにたちあがると、きがくるったように、) ----彼は急に立ち上ると、気が狂ったように、 (だめだ、だめだ!とみなのなかにとびこんで、さけびだした。) 「駄目だ、駄目だ!」と皆の中に飛びこんで、叫びだした。 (かれはまえのときは、じぶんでそのかべをつくったことがあった。) (彼は前の時は、自分でその壁を作ったことがあった。 (そのときはなんでもなかったのだったが) そのときは何んでもなかったのだったが) (ばかやろう!ここさひでもうつってみろ、おおぞんだ) 「馬鹿野郎! ここさ火でも移ってみろ、大損だ」 (だが、だんだんこえのひくくなっていくのがわかるではないか!) だが、だんだん声の低くなって行くのが分るではないか! (かれはなにをおもったのか、てをふったり、) 彼は何を思ったのか、手を振ったり、 (わめいたりして、むちゃくちゃにこうどうをはしりだした。) わめいたりして、無茶苦茶に坑道を走り出した。 (なんどものめったり、こうぼくにひたいをうちつけた。ぜんしんどろとちまみれになった。) 何度ものめったり、坑木に額を打ちつけた。全身ドロと血まみれになった。 (とちゅう、とろっこのまくらぎにつまずいて、ともえなげにでもされたように、) 途中、トロッコの枕木につまずいて、巴投げにでもされたように、 (れーるのうえにたたきつけられて、またきをうしなってしまった。) レールの上にたたきつけられて、又気を失ってしまった。 (そのことをきいていたわかいぎょふは、) その事を聞いていた若い漁夫は、 (さあ、ここだってそうたいしてかわらないがといった。) 「さあ、ここだってそう大して変らないが......」と云った。 (かれはこうふどくとくな、まばゆいような、) 彼は坑夫独特な、まばゆいような、 (きいろっぽくつやのないまなざしをぎょふのうえにじっとおいて、だまっていた。) 黄色ッぽく艶のない眼差を漁夫の上にじっと置いて、黙っていた。
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