源氏物語 若菜上2-3「朱雀院、結婚を苦慮」

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(「しかおもひたどるによりなむ。ひめみこたちのよづきたるありさまは、)

「しか思ひたどるによりなむ。皇女たちの世づきたるありさまは、

(うたてあはあはしきやうにもあり、またたかききはといへども、)

うたてあはあはしきやうにもあり、また高き際といへども、

(をんなはをとこにみゆるにつけてこそ、くやしげなることも、めざましきおもひも、)

女は男に見ゆるにつけてこそ、悔しげなることも、めざましき思ひも、

(おのづからうちまじるわざなめれと、かつはこころぐるしくおもひみだるるを、)

おのづからうちまじるわざなめれと、かつは心苦しく思ひ乱るるを、

(また、さるべきひとにたちおくれて、たのむかげどもにわかれぬるのち、)

また、さるべき人に立ちおくれて、頼む蔭どもに別れぬる後、

(こころをたててよのなかにすぐさむことも、むかしは、ひとのこころたひらかにて、)

心を立てて世の中に過ぐさむことも、昔は、人の心たひらかにて、

(よにゆるさるまじきほどのことをば、おもひおよばぬものとならひたりけむ、)

世に許さるまじきほどのことをば、思ひ及ばぬものとならひたりけむ、

(いまのよには、すきずきしくみだりがはしきことも、たぐひにふれてきこゆめりかし。)

今の世には、好き好きしく乱りがはしきことも、類に触れて聞こゆめりかし。

(きのふまでたかきおやのいへにあがめられかしづかれしひとのをんなの、)

昨日まで高き親の家にあがめられかしづかれし人の女の、

(けふはなほなほしくくだれるきはのすきどもになをたちあざむかれて、なきおやのおもてをふせ、)

今日は直々しく下れる際の好き者どもに名を立ち欺かれて、亡き親の面を伏せ、

(かげをはづかしむるたぐひおほくきこゆる。いひもてゆけばみなじことなり。)

影を恥づかしむるたぐひ多く聞こゆる。言ひもてゆけば皆同じことなり。

(ほどほどにつけて、すくせなどいふなることは、しりがたきわざなれば、)

ほどほどにつけて、宿世などいふなることは、知りがたきわざなれば、

(よろづにうしろめたくなむ。すべて、あしくもよくも、)

よろづにうしろめたくなむ。すべて、悪しくも善くも、

(さるべきひとのこころにゆるしおきたるままにてよのなかをすぐすは、すくせすくせにて、)

さるべき人の心に許しおきたるままにて世の中を過ぐすは、宿世宿世にて、

(のちのよにおとろへあるときも、みづからのあやまちにはならず。)

後の世に衰へある時も、みづからの過ちにはならず。

(ありへて、こよなきさいはひあり、めやすきことになるをりは、)

あり経て、こよなき幸ひあり、めやすきことになる折は、

(かくてもあしからざりけりとみゆれど、なほ、)

かくても悪しからざりけりと見ゆれど、なほ、

(たちまちふとうちききつけたるほどは、おやにしられず、さるべきひともゆるさぬに、)

たちまちふとうち聞きつけたるほどは、親に知られず、さるべき人も許さぬに、

(こころづからのしのびわざしいでたるなむ、)

心づからの忍びわざし出でたるなむ、

(をんなのみにはますことなききずとおぼゆるわざなる。)

女の身にはますことなき疵とおぼゆるわざなる。

など

(なほなほしきただびとのなからひにてだに、あはつけくこころづきなきことなり。)

直々しきただ人の仲らひにてだに、あはつけく心づきなきことなり。

(みづからのこころよりはなれてあるべきにもあらぬを、おもふこころよりほかにひとにもみえず、)

みづからの心より離れてあるべきにもあらぬを、思ふ心より他に人にも見えず、

(すくせのほどさだめられむなむ、いとかろがろしく、みのもてなし、)

宿世のほど定められむなむ、いと軽々しく、身のもてなし、

(ありさまおしはからるることなるを。)

ありさま推し量らるることなるを。

(あやしくものはかなきこころざまにやとみゆめるおんさまなるを、)

あやしくものはかなき心ざまにやと見ゆめる御さまなるを、

(これかれのこころにまかせ、もてなしきこゆな、)

これかれの心にまかせ、もてなしきこゆな、

(さやうなることのよにもりいでむこと、いとうきことなり」など、)

さやうなることの世に漏り出でむこと、いと憂きことなり」など、

(みすてたてまつりたまはむのちのよを、うしろめたげにおもひきこえさせたまへれば、)

見捨てたてまつり給はむ後の世を、うしろめたげに思ひきこえさせたまへれば、

(いよいよわづらはしくおもひあへり。)

いよいよわづらはしく思ひあへり。

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