親不孝/葵木ゴウ

(ねぇとうさんかあさん)

ねぇ、父さん、母さん

(ぼくみたいなこどもをもってしあわせでしょうか)

僕みたいな子供を持って幸せでしょうか

(ねぇここんとこぼくは)

ねぇ、ここんとこ僕は

(じょうずないきかたよりじょうずなしにかたばっかしあんするおやふこうものだ)

上手な生き方より上手な死に方ばっか思案する親不孝者だ

(ろくにめもあわせないのはきらってるとかじゃなくてさ)

ろくに目も合わせないのは嫌ってるとかじゃなくてさ

(としおいたあなたのかおをみるのがこわいから)

年老いたあなたの顔を見るのが怖いから

(ようしゃなくじかんのながれをつきつけられて)

容赦なく時間の流れを突き付けられて

(いまだかわれぬぼくがうしろめたくなるから)

未だ変われぬ僕が後ろめたくなるから

(いきててよかったと)

「いきててよかった」と

(うまれてよかったと)

「うまれてよかった」と

(きのきいたうそのひとつもつけそうにないな)

気の利いた嘘の一つもつけそうにないな

(でまどでほこりをかぶってるかぞくしゃしんのなかのぼくらは)

出窓で埃を被ってる家族写真の中の僕らは

(みらいをうたがうこともせずわらってる)

未来を疑うこともせず笑ってる

(ねぇかあさん)

ねぇ、母さん

(あなたがかってくれたぎたーのおかげで)

あなたが買ってくれたギターのお陰で

(ぼくのじんせいはだいぶかわったようなそんなきがしてるけど)

僕の人生はだいぶ変わったような、そんな気がしてるけど

(あなたはあれはまちがいだったとくやんでいますか)

あなたは「あれはまちがいだった」と悔やんでいますか

(ねぇとうさん)

ねぇ、父さん

(あなたはたいびょうをわずらってからみるみるよわった)

あなたは大病を患ってからみるみる弱った

(かおをあわせるたびにじんせいのおわりをさとったようなはなしをするけど)

顔を合わせる度に人生の終わりを悟ったような話をするけど

(なんにもいえねぇよ)

なんにも言えねぇよ

(まっとうなしごとについて)

真っ当な仕事に就いて

(ゆめなんてそうそうにすてて)

夢なんて早々に捨てて

(そうすればこんなうたもうまれなかった)

そうすればこんな歌も生まれなかった

(ありがとうよりもごめんなさいがにあうじんせいを)

「ありがとう」よりも「ごめんなさい」が似合う人生を

(えらんだのはじぶんだ)

選んだのは自分だ

(あなたのせいじゃない)

あなたの所為じゃない

(だからもうこれいじょうくるしまないように)

だからもうこれ以上苦しまないように

(せめて)

せめて

(いきててよかったの)

「いきててよかったの？」

(うまれてよかったの)

「うまれてよかったの？」

(そのたぐいのじもんやせきばくにとどめをさしたい)

その類いの自問や寂寞にとどめを刺したい

(ひにひにちいさくなるせなか)

日に日に小さくなる背中

(せおわせてたおもにをおろすよ)

背負わせてた重荷を降ろすよ

(だめだなぁここでもくちをつく)

駄目だなぁ、ここでも口を衝く

(ごめんな)

「ごめんな」

(ねぇとうさんかあさん)

ねぇ、父さん、母さん

(じんせいってもんはせんたくとこうかいのれんぞくだ)

人生ってもんは選択と後悔の連続だ

(ただひとつ)

ただ一つ、

(あなたたちのこどもとしてうまれたせんたくを)

あなたたちの子供として生まれた選択を

(くやんでなんかいないことそれだけはたしか)

悔やんでなんかいないこと、それだけは確か