都落ち

(はなさくやあからひくほほに)

花咲くや　赤ら引く頬に

(さざなみよるはうみ)

さざなみ寄るは海

(あなたはみずぎわひとりほほえむだけ)

貴方は水際一人微笑むだけ

(いま、おもいでにぼくはみやこおち)

今、思い出に僕は都落ち

(はなうた、きれいだね)

鼻歌、綺麗だね

(あすにはゆくんだぜ)

明日には往くんだぜ

(うみねこがないたね)

海猫が鳴いたね

(とりでもなくんだね)

鳥でも泣くんだね

(こころなしかわいたらわかれのじかんだぜ)

心なし乾いたら別れの時間だぜ

(なつかぜもまれてあなたにあさいかげ)

夏風揉まれて貴方に浅い影

(さらりはなさくやあからひくほほに)

さらり花咲くや　あから引く頬に

(さざなみ、よるはうみ)

さざなみ、夜は海

(あなたはみずぎわひとりてをふるだけ)

貴方は水際一人手を振るだけ

(いま、おもいでにぼくはみやこおち)

今、思い出に僕は都落ち

(あさやけ、きれいだね)

朝焼け、綺麗だね

(ふねはもうたつんだぜ)

舟はもう発つんだぜ

(うみねこがないたね)

海猫が鳴いたね

(あなたもなくんだね)

貴方も泣くんだね

(ひとざとはなれてなるおとはむかいなみ)

人里離れて鳴る音は向かい波

(とぶとりはとおくへあすからむこうまで)

飛ぶ鳥は遠くへ明日から向こうまで

(みずにおちながれやがてうき)

水に落ち流れやがて憂き

(あなたにこがれるふねはうみ)

貴方に焦がれる舟は海

(おしみかくゆびはおもうたけばかり)

惜しみ書く指は思う丈ばかり

(ちるおもいではなみかみやこおち)

散る思い出は波か都落ち

(みやこはなれてふねすすむ)

都離れて舟進む

(みずはながれてときもまた)

水は流れて時もまた

(ぼくはあなたのおもいでに)

僕は貴方の思い出に

(ただのきおくに)

ただの記憶に

(こふらくはあからひくほほの)

恋ふらくはあから引く頬の

(よせきゆなみのはな)

寄せ消ゆ波の花

(あなたはみずぎわひとりほほえむだけ)

貴方は水際一人微笑むだけ

(いま、おもいでにぼくは)

今、思い出に僕は

(さらりはなさくやあからひくほほに)

さらり花咲くや　あから引く頬に

(さざなみ、よるはうみ)

さざなみ、夜は海

(あなたはみずぎわひとりてをふるだけ)

貴方は水際一人手を振るだけ

(いま、さようならぼくはみやこおち)

今、左様なら　僕は都落ち