全て貴方の所為です。　俤

(むかしむかしうみおとされたが)

昔々、生み堕とされたが、

(あなたはせんたくしをまちがえました)

あなたは選択肢を間違えました。

(それはみにくいひとのこで)

それは、醜い人の子で、

(さぞけむたがられるでしょう)

さぞ煙たがられるでしょう。

(よっつのせんでかこんだら)

四つの線で囲んだら、

(どくさたちはよろこぶのだ)

ドクサ達は喜ぶのだ。

(あかとくろにみおくられ)

赤と黒に見送られ、

(うしろをふりかえってはいけません)

後ろを振り返ってはいけません。

(ぜったいにです)

絶対にです。

(ごうがんなこえはおおきくなり)

傲岸な声は大きくなり、

(おわりがせまっていた)

終りが追っていた。

(めをとじて)

目を閉じて、

(みみをふさいだ)

耳を塞いだ。

(おのれをまもるために)

己を守る為に。

(だがゆらいでいた)

だが、揺らいでいた。

(さんいつしたかいすいに)

散逸した海水に、

(くびまでつかれば)

首まで浸かれば、

(ねむれたのに)

眠れたのに。

(ふえたつみはせいめいをやどし)

増えた罪は、生命を宿し、

(かがみをみがくひとつのてとなるでしょう)

鏡を磨く一つの手となるでしょう。

(しかしそれはかんこつだったいにすぎず)

しかしそれは、換骨奪胎(かんこつだったい)に過ぎず、

(ひどくもろいものでしょう)

酷く脆いモノでしょう。

(まっぷたつにわかれたのなら)

真っ二つに別れたのなら、

(せかいはまもなくおわるのだ)

世界はまもなく終わるのだ。

(かみにいのるものもいた)

神に祈る者も居た。

(なきさけぶこどももなかにはいた)

泣き叫ぶ子供も中には居た。

(すべてあなたのせいです)

全て貴方の所為です。

(ひとをのみこんでおおきくなり)

人を飲み込んで大きくなり、

(きづけばこわれていた)

気づけば壊れていた。

(つまさきから)

つま先から、

(あたままで)

頭まで、

(ぐりっちのあめでぬれていた)

グリッチの雨で濡れていた。

(もどらない)

戻らない、

(もどれない)

戻れない。

(ひかぎゃくあっしゅくのびほう)

非可逆圧縮の弥縫（ひぼう）。

(だれもかれもいないのに)

誰も彼も居ないのに、

(いないのにさがした)

居ないのに、探した。

(とおくとおくにみえたのは)

遠く遠くに見えたのは、

(とうろうをせにたたずむおもかげ)

灯籠を背に佇む俤。

(おもかげ)

俤。

(いまだあるいていた)

未だ、歩いていた。

(さんいつしたかいすいに)

散逸した海水に、

(くびまでつかれば)

首まで浸かれば、

(ねむれたのに)

眠れたのに。

(いまだにゆらいでいた)

未だに、揺らいでいた。

(とりいをくぐってみました)

鳥居をくぐってみました。

(あなたはせんたくしを)

あなたは選択肢を、

(まちがえました)

間違えました。