私が明日死ぬなら

(わたしがあしたしぬならいくつかくやむことがあるでしょう)

私が明日死ぬなら、いくつか悔やむことがあるでしょう

(あのひとにつめたくしたことしぬことをおそれすぎたこと)

あの人に冷たくしたこと、死ぬことを恐れすぎたこと

(わたしがあしたしぬならだれにどれだけのかんしゃをしよう)

私が明日死ぬなら、誰にどれだけの感謝をしよう

(じょうだんでいうしねのことばじょうだんですんでくれたこと)

冗談で言う「死ね」の言葉、冗談で済んでくれたこと

(わたしがあしたしぬならすこしさきのみらいをゆめみよう)

私が明日死ぬなら、少し先の未来を夢みよう

(あたらしくうまれるいのちはまだわたしよりもとうといでしょう)

新しく生まれる命は、まだ私よりも尊いでしょう

(わたしがあしたしぬならせかいをのろうことばをのこそう)

私が明日死ぬなら、世界を呪う言葉を残そう

(きょうというひのつまらなさもおんがくにしてすくわれましょう)

今日という日のつまらなさも、音楽にして救われましょう

(わたしにみむきもしないでいてくれてありがとう)

「私に見向きもしないでいてくれてありがとう！」

(やくそくだよ もしもじぶんをきずつけたくなってしまったら)

約束だよ もしも自分を傷つけたくなってしまったら

(やくそくだよ わたしにふれたときのやさしさをおもいだしてよ)

約束だよ 私に触れた時の優しさを思い出してよ

(もしもあなたがあしたもいきたらすきなふくをきてでかけてみよう)

もしも、あなたが明日も生きたら 好きな服を着て出掛けてみよう

(あなたがあしたもいきたらきらいないろぜんぶぬりつぶそう)

あなたが明日も生きたら 嫌いな色全部塗り潰そう

(あなたがあしたもいきたら きのうになるきょうさえいとおしい)

あなたが明日も生きたら 昨日になる今日さえ愛おしい

(じごくのなかでたまにわらおう あなたがあしたもいきるなら)

地獄の中でたまに笑おう あなたが明日も生きるなら

(わたしがあしたしぬならもうしゃしんをながめるのはよそう)

私が明日死ぬなら、もう写真を眺めるのは止そう

(かみをきったひのごごのようにあなたにあいたくなるのでしょう)

髪を切った日の午後のように、あなたに会いたくなるのでしょう

(わたしがあしたしぬならしばらくだれもきづかないでしょう)

私が明日死ぬなら、しばらく誰も気づかないでしょう

(ぽすとにたまったふざいひょうがぼひょうのかわりになるでしょう)

ポストに溜まった不在票が墓標の代わりになるでしょう

(わたしがあしたしぬならのこされたあなたをおもいみよう)

私が明日死ぬなら、残されたあなたを惟よう

(かなしみだけはなたばにしていっしょにもやしてくれるでしょう)

悲しみだけ花束にして、一緒に燃やしてくれるでしょう

(わたしがあしたしぬならしあさってはひびにもどりましょう)

私が明日死ぬなら、明々後日は日々に戻りましょう

(うごきだすせかいのはれまにそのきれいなめをほそめるでしょう)

動き出す世界の晴れ間に、その綺麗な目を細めるでしょう

(たとえばいつか にわかあめのさびしさがあなたをおそっても)

例えばいつか にわか雨の寂しさがあなたを襲っても

(だいじょうぶかな こんなうたでもかさにしてどうにかやりすごすんだ)

大丈夫かな こんな歌でも傘にしてどうにかやり過ごすんだ

(やくそくだよ こきゅうのしかたをじょうずにおもいだせないなら)

約束だよ 呼吸の仕方を上手に思い出せないなら

(やくそくだよ つぶやくようにうたうようになみだをはきだしてよ)

約束だよ 呟くように、歌うように、涙を吐き出してよ

(きいてあなたがあしたもいきたら もうあさってもおなじことでしょう)

聴いて、あなたが明日も生きたら もう明後日も同じことでしょう

(あなたがあしたもいきたら たんじょうびのようにくらしましょう)

あなたが明日も生きたら 誕生日のように暮らしましょう

(あなたがあしたもいきたら かわらずくるしいひびをみつめ)

あなたが明日も生きたら 変わらず苦しい日々を見つめ

(このうたとこゆびをむすんで あなたはあしたもいきていくんだ)

この歌と小指を結んで あなたは明日も生きていくんだ

(やくそくだよ)

約束だよ