詠唱

問題文
(そのおとこははかにすみあらゆるものもあらゆるくさりも)
その男は墓に住み あらゆる者も あらゆる鎖も
(あらゆるすべてをもってしてもつなぎとめることができない)
あらゆる総てをもってしても繋ぎ止めることが出来ない
(かれはばくさをちぎりかせをこわしくるいなきさけぶはかのぬし)
彼は縛鎖を千切り 枷を壊し 狂い泣き叫ぶ墓の主
(このよのありとあらゆるものすべてかれをおさえるちからをもたない)
この世のありとあらゆるモノ総て 彼を抑える力を持たない
(ゆえかみはとわれたきさまはなにものか)
ゆえ 神は問われた 貴様は何者か
(ぐもんなりむちもうまいしらぬならばこたえようわがなはれぎおん)
愚問なり 無知蒙昧 知らぬならば答えよう 我が名はレギオン
(そうぞうしこうてうごんかんすだいごうちゅう)
創造 至高天・黄金冠す第五宇宙
(ああ、ひのひかりはいらぬ。ならばよるこそわがせかい)
ああ、日の光は要らぬ。ならば夜こそ我が世界
(よるにむてきとなるまじんになりたいこのちくしょうにそまるちをしぼりだし)
夜に無敵となる魔人になりたい この畜生に染まる血を絞り出し
(われをしんせいさせるたんびとぼうぎゃくとさつりくのけしんやみのふしちょう)
我を新生させる耽美と暴虐と殺戮の化身――闇の不死鳥
(しもりのばらきし)
死森の薔薇騎士
(このみはゆうきゅうをいきしもの。ゆえにだれもがわれをおきざりさきにいく)
この身は悠久を生きし者。ゆえに誰もが我を置き去り先に行く
(おいすがりたいがおいつけない。さいはとどかず、なまのしゅんかんがことなるさをうめたいとねがい)
追い縋りたいが追いつけない。才は届かず、生の瞬間が異なる差を埋めたいと願
(ゆえにあしをひくのだみずぞこのましょうなみだてあそべよ)
ゆえに足を引くのだ――水底の魔性 波立て遊べよ
(ごうもんじょうのしょくひとかげ)
拷問城の食人影
(われはかがやきにやかれるもの。とどかぬほしをおいつづけるもの)
我は輝きに焼かれる者。届かぬ星を追い続ける者
(とどかぬゆえにそれはとうとく、とうといがゆえにはなれたくない)
届かぬゆえに其は尊く、尊いがゆえに離れたくない
(おおうおいつづけようどこまでも。われはおんみのむねでやかれたいにげばなきほむらのせかい)
追おう追い続けよう何処までも。我は御身の胸で焼かれたい逃げ場なき焔の世界
(しょうねつせかいげきつうのけん)
焦熱世界・激痛の剣
(せっしょくをおそれる。せっしょくをいむ。わがあいとははいごにひろがるれきさつのわだち)
接触を恐れる。接触を忌む。我が愛とは背後に広がる轢殺の轍
(ただわすれさせてほしいとせつにねがう。すべてをおきざり、のろわしききおくはきょうらんのおりへ)
ただ忘れさせてほしいと切に願う。総てを置き去り、呪わしき記憶は狂乱の檻へ
(われはたださいそくのさついでありたいむさぼりしきょうじゅう)
我はただ最速の殺意でありたい貪りし凶獣
(みんな、ほろびるがいいしせかかいきょうじゅうへんじょう)
皆、滅びるがいい死世界・凶獣変生
(われはしゅうえんをのぞむもの。しのきょくてんをめざすもの)
我は終焉を望む者。死の極点を目指す者
(ゆいいつむにのおわりこそをもとめるゆえに、)
唯一無二の終わりこそを求めるゆえに、
(はがねのきゅうどうにくもりなしまくひきのてっけんくだけちるがいい)
鋼の求道に曇りなし幕引きの鉄拳砕け散るがいい
(ひとせかいしゅうえんへんじょう)
人世界・終焉変生
(しんあいなるはくちょうよこのつのぶえとこのつるぎとゆびわをかれにあたえたまえ)
親愛なる白鳥よ この角笛とこの剣と指輪を彼に与えたまえ
(このつのぶえはきけんにさいしてすくいをもたらし)
この角笛は危険に際して救いをもたらし
(このつるぎはきょうふのしゅらばでしょうりをあたえるものなれど)
この剣は恐怖の修羅場で勝利を与える物なれど
(このゆびわはかつておまえをちじょくとくるしみからすくいだした)
この指輪はかつておまえを恥辱と苦しみから救い出した
(このわたしのことをごっとふりーとがしのぶよすがとなればいい)
この私のことをゴットフリートが偲ぶよすがとなればいい
(そうぞうしんせかいへかけりけよおうごんかするしらとりのきし)
創造 神世界へ 翔けよ黄金化する白鳥の騎士
(かつてどこかでそしてこれほどこうふくだったことがあるだろうか)
かつて何処かで そしてこれほど幸福だったことがあるだろうか
(あなたはすばらしいかけねなしにすばらしい)
あなたは素晴らしい 掛け値なしに素晴らしい
(しかしそれはだれもしらずまただれもきづかない)
しかしそれは誰も知らず また誰も気付かない
(おさないわたしはまだあなたをしらなかった)
幼い私は まだあなたを知らなかった
(いったいわたしはだれなのだろういったいどうして)
いったい私は誰なのだろういったいどうして
(わたしはあなたのもとにきたのだろう)
私はあなたの許に来たのだろう
(もしわたしがきしにあるまじきものならば、このまましんでしまいたい)
もし私が騎士にあるまじき者ならば、このまま死んでしまいたい
(なによりもこうふくなこのしゅんかんわたしはししてもけっしてわすれはしないだろうから)
何よりも幸福なこの瞬間私は死しても 決して忘れはしないだろうから
(ゆえにこいびとよかれおちろしがいをさらせ)
ゆえに恋人よ 枯れ落ちろ死骸を晒せ
(なにかがおとずれなにかがおこったわたしはあなたにといをなげたい)
何かが訪れ 何かが起こった 私はあなたに問いを投げたい
(ほんとうにこれでよいのかわたしはなにかあやまちをおかしていないか)
本当にこれでよいのか 私は何か過ちを犯していないか
(こいびとよわたしはあなただけをみあなただけをかんじよう)
恋人よ 私はあなただけを見 あなただけを感じよう
(わたしのあいでくちるあなたをわたしだけがしっているから)
私の愛で朽ちるあなたを 私だけが知っているから
(ゆえにこいびとよかれおちろ)
ゆえに恋人よ 枯れ落ちろ
(そうぞうしもりのばらきし)
創造 死森の薔薇騎士
(いかりはみじかいきょうきである)
『Ira furor brevis est.』
(しぜんにしたがえ)
『Sequere naturam.』
(よみがえるそうあなたはよみがえる)
蘇る そう あなたはよみがえる
(わたしのちりはみじかいやすらぎのなかをただよい)
私の塵は短い安らぎの中を漂い
(あなたののぞみしえいえんのいのちがやってくる)
あなたの望みし永遠の命がやってくる
(たねまきかれしあなたのいのちがふたたびここにはなをさかせる)
種蒔かれしあなたの命が 再びここに花を咲かせる
(かりいれるものがあるきまわりわれらししゃのかけらたちをひろいあつめる)
刈り入れる者が歩きまわり 我ら死者の 欠片たちを拾い集める
(おおしんぜよわがこころおおしんぜようしなうものはなにもない)
おお 信ぜよわが心 おお 信ぜよ 失うものは何もない
(わたしのものそれはわたしがのぞんだもの)
私のもの それは私が望んだもの
(わたしのものそれはわたしがあいしたたかってきたものなのだ)
私のもの それは私が愛し戦って来たものなのだ
(おおしんぜよあなたはいたずらにうまれてきたのではないのだと)
おお 信ぜよ あなたは徒に生まれて来たのではないのだと
(ただいたずらになまをむさぼりくるしんだのではないのだと)
ただ徒に生を貪り 苦しんだのではないのだと
(うまれてきたものはほろびねばならない)
生まれて来たものは 滅びねばならない
(ほろびさったものはよみがえらねばならない)
滅び去ったものは よみがえらねばならない
(ふるえおののくのをやめよいきるためなんじじしんをよういせよ)
震えおののくのをやめよ生きるため 汝自身を用意せよ
(おおくるしみよなんじはすべてにしみとおる)
おお 苦しみよ 汝は全てに滲み通る
(おおしよすべてのせいふくしゃであったなんじからいまこそわたしはのがれでる)
おお 死よ 全ての征服者であった汝から 今こそ私は逃れ出る
(いわえよいまこそなんじがせいふくされるときなのだ)
祝えよ 今こそ汝が征服される時なのだ
(りゅうしゅつこちゅうせいひつふしそうぞうするいけにえさいだん)
流出 壺中聖櫃 不死創造する 生贄祭壇
(うみははばひろくむげんにひろがってながれだすものみずぞこのかがやきこそがえいきゅうふへん)
海は幅広く 無限に広がって流れ出すもの 水底の輝きこそが永久不変
(えいごうたるほしのはやさとともにいまこそしっそうしてかけぬけよう)
永劫たる星の速さと共に 今こそ疾走して駆け抜けよう
(どうかききとどけてほしい)
どうか聞き届けてほしい
(せかいはおだやかにやすらげるひびをねがっている)
世界は穏やかに安らげる日々を願っている
(じゆうなたみとじゆうなせかいで)
自由な民と自由な世界で
(どうかこのしゅんかんにいわせてほしい)
どうかこの瞬間に言わせてほしい
(ときよとまれきみはだれよりもうつくしいから)
時よ止まれ 君は誰よりも美しいから
(えいえんのきみにねがうおれをたかみへとみちびいてくれ)
永遠の君に願う 俺を高みへと導いてくれ
(りゅうしゅつしんせかいへかたれちょうえつのものがたり)
流出 新世界へ語れ超越の物語
(いかりのひしゅうまつのときてんちばんぶつはかいじんとかし)
怒りの日 終末の時 天地万物は灰燼と化し
(だびでとしびらのよげんのごとくにくだけちる)
ダビデとシビラの予言のごとくに砕け散る
(たとえどれほどのせんりつがまちうけようともしんぱんしゃがきたり)
たとえどれほどの戦慄が待ち受けようとも 審判者が来たり
(きびしくただされひとつあまさずもえさりきえる)
厳しく糾され 一つ余さず燃え去り消える
(わがそうぐんにひびきわたれみょうなるしらべかいせんのごうほうよ)
我が総軍に響き渡れ 妙なる調べ 開戦の号砲よ
(みんなすべからくぎょくざのしたにつどうべし)
皆すべからく 玉座の下に集うべし
(かれのひなみだとつみのさばきをきょうらはいよりよみがえらん)
彼の日 涙と罪の裁きを 卿ら 灰より 蘇らん
(さればてんしゅよそのときかれらをゆるしたまえ)
されば天主よ その時彼らを許したまえ
(じひぶかきものよいまえいえんのしをあたえるえぃめん)
慈悲深き者よ 今永遠の死を与える エィメン
(りゅうしゅつこんとんよりあふれよいかりのひ)
流出 混沌より溢れよ怒りの日
(ぶきもことばもひとをきずつける)
武器も言葉も人を傷つける
(じゅんきょうはともをあたえ、けつぼうはともをためす)
順境は友を与え、欠乏は友を試す
(うんめいは、けいはくであるうんめいは、あたえたものをすぐにかえすようもとめる)
運命は、軽薄である 運命は、与えたものをすぐに返すよう求める
(うんめいは、それじしんがもうもくであるだけでなく、つねにたすけるものたちをもうもくにする)
運命は、それ自身が盲目であるだけでなく、常に助ける者たちを盲目にする
(わずかのおろかさをしりょにこんぜよ、ときにりせいをうしなうこともこのましい)
僅かの愚かさを思慮に混ぜよ、時に理性を失うことも好ましい
(たべろ、のめ、あそべ、しごにかいらくはなし)
食べろ、飲め、遊べ、死後に快楽はなし
(みちのけつまつをみる)
未知の結末を見る