フェイト

問題文
(ばぜっと、せかいはつづいている。)
バゼット、世界は続いている。
(ひんしすんぜんであろうがだんまつまにのたうちまわろうが、いまもこうしていきている。)
瀕死寸前であろうが断末魔にのたうちまわろうが、今もこうして生きている。
(それをきぼうがないと、おまえはわらうのか)
それを希望がないと、おまえは笑うのか
(そうとも。あぁ、そうだとも。あのとき、きしでなくおとことして)
そうとも。あぁ、そうだとも。あのとき、騎士でなく男として
(ちゅうしんでなくじんとして、あなたをぞうおしていたならば)
忠臣でなく人として、貴方を憎悪していたならば
(おのれは、あのおんなをすくえたかもしれないのだっ!)
己は、あの女を救えたかもしれないのだッ!
(ええ、かたじけない。だがわたしも、こういうかたちでしかおもいをとげられなかったのでしょう)
ええ、忝い。だが私も、こういう形でしか想いを遂げられなかったのでしょう
(わたしは・・・・・・あなたのてで、さばかれたかった。)
私は……貴方の手で、裁かれたかった。
(おうよほかのだれでもない、あなたじしんのいかりによって、わがみのつみをとわれたかった)
王よ他の誰でもない、あなた自身の怒りによって、我が身の罪を問われたかった
(こんなゆがんだかたちとはいえ、さいごにあなたのむねをかりられた)
こんな歪んだ形とはいえ、最後に貴方の胸を借りられた
(おうのうでにいだかれて、おうにみとられながらいくなど・・・・・・)
王の腕に抱かれて、王に看取られながら逝くなど……
(はは、このわたしが、まるで・・・・・・ちゅうせつのきしだったかのようではありませぬか)
はは、この私が、まるで……忠節の騎士だったかのようではありませぬか
(「おうはくによりもひとをあいした。かのじょはそのためににんげんせいと、おのれのじんせいをふういんした。」)
「王は国よりも人を愛した。彼女はその為に人間性と、己の人生を封印した。」
(おうのこころはひとびとにはつたわらずあるきしはこういいのこしてしろをさったのです。)
王の心は人々には伝わらずある騎士はこう言い残して城を去ったのです。
(”おうには、ひとのこころがわからない”と。」)
"王には、人の心が分からない"と。」
(「わたしはそのことばをみみにしたとき、くるったのでしょう。」)
「私はその言葉を耳にした時、狂ったのでしょう。」
(「しんにこころないのはどちらか。)
「真に心ないのはどちらか。
(きゃめろっとでこりつしながらも、さいごまでひとをあいしたのはどちらなのか。」)
キャメロットで孤立しながらも、最後まで人を愛したのはどちらなのか。」
(「はじめからさいごまでだれにもあいされなかったのは、はたしてだれだったのか」)
「始めから最後まで――誰にも愛されなかったのは、はたして誰だったのか」
(「わたしはかのじょをとりまくすべてにいきどおりをかんじ)
「私は彼女を取り巻くすべてに憤りを感じ
(にくしみはふかいのないじぶんじしんにしゅうそくした。」)
憎しみは不甲斐のない自分自身に収束した。」
(「・・・だれかが。だれかがかのじょをすくわなければいけなかったのです。」)
「…誰かが。誰かが彼女を救わなければいけなかったのです。」
(「それがわかっていながら、わたしはみずからのくのうにまけきちせんしにみをだとした。」)
「それが分かっていながら、私は自らの苦悩に負け狂戦士に身を堕とした。」
(「ばっか、そんなものおまえ、かきたいものにきまっているだろう!!)
「バッカ、そんなものオマエ、“書きたいもの”に決まっているだろう!!
(ゆだったもうそうにとりつかれ、)
ゆだった妄想にとりつかれ、
(いっぽうつうこうのぼうそうをしたあげく、ゆいいつのりてんであるうつくしさをだいなしにするおひめさま!)
一方通行の暴走をしたあげく唯一の利点である美しさを台無しにするお姫さま
(かいていてたまらなくおもしろかったぞぅ!)
書いていてたまらなく面白かったぞぅ!
(わきたつじんましんをこたえながらりあじゅうばくはつしろ、とさけびたいのをこたえてな!)
沸き立つジンマシンを堪えながらリア充爆発しろ、と叫びたいのを堪えてな!
(「・・・・・・まあ、なんだ、たしかに、にんぎょひめはやりすぎた。)
「……まあ、なんだ、確かに、人魚姫はやりすぎた。
(あのときはついかっとなってかいた。はんせいしている」)
あの時はついカッとなって書いた。反省している」
(「これはまほうのさいほうだ。ちえなきものにはほうせきに、ちえあるものにはむかちにうつる」)
「これは魔法の裁縫だ。知恵なき者には宝石に、知恵ある者には無価値に映る」
(「しらとりのようにとびたて。このいけは、おまえたちのすむばしょではない」)
「白鳥のように飛び立て。この池は、おまえたちの住む場所ではない」
(「かいのかけらよ、いのちにさされ」)
「カイの欠片よ、命に刺され」
(「げるだのなみだよ、こころをとかせ」)
「ゲルダの涙よ、心を溶かせ」
(「おあつまりのしんししょけん、しゅくじょのみなさま。)
「お集まりの紳士諸賢、淑女の皆様。
(これよりあんでるせんがかたりますはひとりのおんなのものがたり。)
これよりアンデルセンが語りますは一人の女の物語。
(あいにあふれ、あいにくるい、)
愛にあふれ、愛にくるい、
(あらゆるふどうとくをかんきのうちにむかえいれ、あまねくよくにまみれたおんな。)
あらゆる不道徳を歓喜のうちに迎え入れ、あまねく欲にまみれた女。
(おんなのなはせっしょういんきあら。)
女の名は殺生院キアラ。
(きあらをうつべくすだいしは、ただしきめをもつわれらがきぼう。)
キアラを討つべく集いしは、正しき目を持つ我らが希望。
(ぜんあくはさだまらぬものなれど、こたびはめいはく)
善悪は定まらぬ者なれど、此度は明白
(あくとはこれせっしょういん、ぜんとはこれこいするわかもの。)
悪とは是れ殺生院、善とは是れ恋する若者。
(このものがたりがいかなるしゅうえんをむかえるか)
この物語がいかなる終演を迎えるか
(どうぞみなさま、さいごまでめをおはなしなきように!」)
どうぞ皆様、最後まで目をお離しなきように!」
(「おまえたちはきあらをにくむがいい。)
「おまえたちはキアラを憎むがいい。
(あのおんなはほんとうに、しんそこからのどげどうだ。ゆるされるかちはない。)
あの女は本当に、心底からのド外道だ。赦される価値はない。
(だがどのようなにんげんであれ、)
だが―――どのような人間であれ、
(おのれのこうふくのためにじんせいをかけるのであれば、おれにはとうといひかりにみえる)
己の幸福のために人生をかけるのであれば、俺には尊い光に見える
(まぼろしのさまなとるにたらないちいさなあかりでも)
幻の様な取るに足らない小さな明かりでも
(あたたかい、さいごのあかりに、みえるのだ。)
温かい、最後の灯に、見えるのだ。
(これはそれだけのはなしだ、これはきあらのものがたりだったが)
これはそれだけの話だ、これはキアラの物語だったが
(おれのよみたかったものがたりでもある。」)
俺の読みたかった物語でもある。」
(「ふん、かくしてふではおれ、ものかきはわすれさられる。なんとすがすがしいことか!)
「ふん、かくして筆は折れ、物書きは忘れ去られる。何と清々しいことか!
(さらばだ、なやみおおきしょうねんしょうじょ!)
さらばだ、悩み多き少年少女!
(せいぜいひとにこいしあいにまよいせいにくるしむがいい!むだにつかえるじかんはないぞ!)
せいぜい人に恋し愛に迷い生に苦しむがいい!無駄に使える時間はないぞ!
(「ふふ、きみにはふぁくしみりのほうがべんりにでもみえるかね?)
「フフ、君にはファクシミリのほうが便利にでも見えるかね?
(これならでんきもつかわないしこしょうもない。じょうほうろうえいのしんぱいもかいむだ。)
これなら電気も使わないし故障もない。情報漏洩の心配も皆無だ。
(なにもあたらしいぎじゅつにたよらなくても)
なにも新しい技術に頼らなくても
(われわれまじゅつしはそれにおとらずべんりなどうぐを、とうのむかしにてにいれている」)
われわれ魔術師はそれに劣らず便利な道具を、とうの昔に手に入れている」
(「かちはある。ゆいいつのかちはあるのだ。われはここにせんげんする。)
「価値はある。唯一の価値はあるのだ。我はここに宣言する。
(このよにおいて、われのともはただひとり。)
この世において、我の友はただひとり。
(ならばこそそのかちはみらいえいごう、かわりはしない」)
ならばこそ―――その価値は未来永劫、変わりはしない」
(「ふふふ、ついにゆえつのなにたるかをわきまえたようだな。)
「フフフ、ついに愉悦の何たるかを弁えたようだな。
(でもこれはこれでそこがみえたかんじ。これからはみょうじだけでよんじゃおっかな」)
でもこれはこれで底が見えた感じ。これからは名字だけで呼んじゃおっかな」
(「ゆえつけんきゅうかいよ。よなよなうすぐらいきょうかいのちかにもぐりこみ)
「愉悦研究会よ。夜な夜な薄暗い教会の地下に潜り込み
(あやぎぬれいとふたりでさけをくみかわしつつ)
綺礼と二人で酒を酌み交わしつつ
(しんのゆえつとはなにかをえんえんもんどうしもうそうしつづけふははははっ!とじゃあくにわらいあう。)
真の愉悦とは何かを延々問答し妄想し続けフハハハハッ!と邪悪に笑い合う。
(そんなしんしのしゃこうば、それがゆえつとぎ。」)
そんな紳士の社交場、それが愉悦研。」
(「ちょうこだいぶんめいてくのろじーでつくられたぜんじどうおりょうりましーんだが、なにか?」)
「超古代文明テクノロジーで作られた全自動お料理マシーンだが、何か?」