一夜之夢
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歌詞(問題文)
(そっとてをさしかわし)
そっと、手を差し交し。
(そのからだをよせて)
その身体を、寄せて。
(いきまじりのたわむれ)
吐息混じりの戯れ。
(そばかかえささやく)
側、抱え、囁く。
(いろにおぼれていてはならないのですと)
「色に溺れていては、ならないのです」と。
(ことばだけのもろくもささやかなぜんだて)
言葉だけの、脆くも、ささやかな膳立て。
(さぁおわらぬよるを)
さぁ、終わらぬ夜を。
(いずれすべてあなたのもの)
いずれ全て、貴方の物。
(などとうそぶけばもうこのてのなか)
等と嘯けば、もうこの掌の中。
(いくせんというしんかをもち)
幾千と云う臣下を持ち
(いくまんというなをしたがえ)
幾万と云う名を従え
(そんなちからをてにしながら)
そんな権力を手にしながら
(このからだひとつにおぼれゆくさまよ)
この肢体一つに溺れ逝く様よ。
(あああついのよあついのよと)
「ああ、熱いのよ、熱いのよ」と。
(さけんでみればおうずるように)
叫んでみれば、応ずるように、
(はげしくいきおいづく)
激しく勢い付く。
(さながらそうあかごににて)
宛ら、そう、赤子に似て。
(ひとよのゆめそれはねつびょうのように)
一夜之夢、それは、熱病のように。
(したたるつきのしずくに)
滴る、月の雫に。
(そのりょうてをかざして)
その両手を、翳して。
(どこまでもいっしょに)
どこまでも一緒に。
(ただよいにとけゆく)
ただ、宵に融け逝く。
(いまはわたしだけをみておねがいだからと)
「今は私だけを見て。お願いだから」と。
(めをうるませてみあげるこれだけでいのままに)
目を潤ませて、見上げる。此れだけで、意の儘に。
(ああたわいのないものね)
嗚呼、他愛のないものね。
(こよいもまたつみかさなる)
今宵もまた、積み重なる。
(くちさきばかりのあわれないせいしゃ)
口先ばかりの、哀れな為政者。
(いくせんというちをたばねて)
幾千と云う地を束ねて
(いくまんというてんをのぞみ)
幾万と云う天を望み
(そんなたいしをいだきながら)
そんな大志を抱きながら
(このからだひとつにくずれおちるさまよ)
この肢体一つに崩れ堕ちる様よ。
(ああこわいのよこわいのよと)
「ああ、怖いのよ、怖いのよ」と。
(そうしてとけぬいとをからめて)
そうして、解けぬ糸を絡めて、
(たぐりよせるように)
手繰り寄せるように。
(さながらそうてごまににて)
宛ら、そう、手駒に似て。
(ひとよのゆめそれはえきびょうのように)
一夜之夢、それは、疫病のように。
(いかなるひとでさえ)
如何なる強者でさえ
(とりことなればみなおなじ)
虜となれば、皆同じ。
(このみにとらわれゆく)
この身に囚われ逝く。
(それがわたしにはたまらない)
それが、私には、堪らない。
(いくせんというひとをおろし)
幾千と云う人を降し
(いくまんというひとをあやめ)
幾万と云う人を危め
(それでもなおあくることなく)
其れでも猶、厭くることなく。
(とまるにたりずたることをしらず)
吾不足止、未不知足也。
(さぁさいごにはもっともっと)
「さぁ、最後には、もっともっと…」
(そうしてすべてをわたしにあずけさせるように)
そうして、全てを私に預けさせるように。
(さながらそうしもべににて)
宛ら、そう、下僕に似て。
(ひとよのゆめそれはねつびょうのように)
一夜之夢、それは、熱病のように。