堀辰雄 風立ちぬ 序曲 2

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プレイ回数98難易度(4.5) 2025打 長文
タグ小説 長文
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 subaru 7086 7.4 95.2% 270.5 2018 101 37 2024/03/18
2 だだんどん 6117 A++ 6.7 91.3% 296.7 2005 190 37 2024/04/22
3 とも 5287 B++ 6.0 88.8% 332.1 2009 253 37 2024/03/22
4 なんだかな 5000 B+ 5.2 95.6% 386.0 2023 93 37 2024/03/20
5 もっちゃん先生 4497 C+ 4.7 94.3% 422.7 2023 122 37 2024/03/15

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問題文

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(おまえたちがたっていったのち、ひごとひごとずっとわたしのむねをしめつけていた、)

お前達が発って行ったのち、日ごと日ごとずっと私の胸をしめつけていた、

(あのかなしみににたようなこうふくのふんいきを、)

あの悲しみに似たような幸福の雰囲気を、

(わたしはいまだにはっきりとよみがえらせることができる。)

私はいまだにはっきりと蘇らせることが出来る。

(わたしはしゅうじつ、ほてるにとじこもっていた。)

私は終日、ホテルに閉じ籠っていた。

(そうしてながいあいだおまえのためにうっちゃっておいたじぶんのしごとにとりかかりだした。)

そうして長い間お前のために打棄って置いた自分の仕事に取りかかり出した。

(わたしはじぶんにもおもいがけないくらい、しずかにそのしごとにぼっとうすることができた。)

私は自分にも思いがけない位、静かにその仕事に没頭することが出来た。

(そのうちにすべてがほかのきせつにうつっていった。)

そのうちにすべてが他の季節に移って行った。

(そしていよいよわたしもしゅっぱつしようとするぜんじつ、)

そしていよいよ私も出発しようとする前日、

(わたしはひさしぶりでほてるからさんぽにでかけていった。)

私はひさしぶりでホテルから散歩に出かけて行った。

(あきははやしのなかをみちがえるばかりにらんざつにしていた。)

秋は林の中を見ちがえるばかりに乱雑にしていた。

(はのだいぶすくなくなったきぎは、そのあいだから、)

葉のだいぶ少くなった木々は、その間から、

(ひとけのたえたべっそうのてらすをずっとぜんぽうにのりださせていた。)

人けの絶えた別荘のテラスをずっと前方にのり出させていた。

(きんるいのしめっぽいにおいがおちばのにおいにいりまじっていた。)

菌類の湿っぽい匂いが落葉の匂いに入りまじっていた。

(そういうおもいがけないくらいのきせつのすいいが、)

そういう思いがけない位の季節の推移が、

(おまえとわかれてからわたしのしらぬまにこんなにもたってしまったじかんというものが、)

お前と別れてから私の知らぬ間にこんなにも立ってしまった時間というものが、

(わたしにはいようにかんじられた。)

私には異様に感じられた。

(わたしのこころのうちのどこかしらに、おまえからひきはなされているのは)

私の心の裡の何処かしらに、お前から引き離されているのは

(ただいちじてきだといったかくしんのようなものがあって、)

ただ一時的だと云った確信のようなものがあって、

(そのためこうしたじかんのすいいまでが、)

そのためこうした時間の推移までが、

(わたしにはいままでとはぜんぜんことなったいみをもつようになりだしたのであろうか?)

私には今までとは全然異った意味を持つようになり出したのであろうか?

など

(・・・・・・そんなようなことを、わたしはすぐあとではっきりとたしかめるまで、)

……そんなようなことを、私はすぐあとではっきりと確かめるまで、

(なにやらぼんやりとかんじだしていた。)

何やらぼんやりと感じ出していた。

(わたしはそれからじゅうすうふんご、ひとつのはやしのつきたところ、そこからきゅうにうちひらけて、)

私はそれから十数分後、一つの林の尽きたところ、そこから急に打ちひらけて、

(とおいちへいせんまでもいったいにながめられる、いちめんにすすきのおいしげったそうげんのなかに、)

遠い地平線までも一帯に眺められる、一面に薄の生い茂った草原の中に、

(あしをふみいれていた。)

足を踏み入れていた。

(そしてわたしはそのかたわらの、すでにはのきいろくなりかけた)

そして私はその傍らの、既に葉の黄いろくなりかけた

(いっぽんのしらかばのこかげにみをよこたえた。)

一本の白樺の木蔭に身を横たえた。

(そこは、そのなつのひび、おまえがえをかいているのをながめながら、)

其処は、その夏の日々、お前が絵を描いているのを眺めながら、

(わたしがいつもいまのようにみをよこたえていたところだった。)

私がいつも今のように身を横たえていたところだった。

(あのときにはほとんどいつもにゅうどうぐもにさえぎられていたちへいせんのあたりには、いまは、)

あの時には殆んどいつも入道雲に遮られていた地平線のあたりには、今は、

(どこかしらない、とおくのさんみゃくまでが、まっしろなほさきをなびかせた)

何処か知らない、遠くの山脈までが、真っ白な穂先をなびかせた

(すすきのうえをわけながら、そのりんかくをひとつひとつくっきりとみせていた。)

薄の上を分けながら、その輪廓を一つ一つくっきりと見せていた。

(わたしはそれらのとおいさんみゃくのすがたをみんなあんきしてしまうくらい、)

私はそれらの遠い山脈の姿をみんな暗記してしまう位、

(じっとめにちからをいれてみいっているうちに、いままでじぶんのうちにひそんでいた、)

じっと目に力を入れて見入っているうちに、いままで自分の裡に潜んでいた、

(しぜんがじぶんのためにきわめておいてくれたものを)

自然が自分のために極めて置いてくれたものを

(いまこそやっとみいだしたというかくしんを、)

今こそ漸っと見出したと云う確信を、

(だんだんはっきりとじぶんのいしきにのぼらせはじめていた。・・・・・・)

だんだんはっきりと自分の意識に上らせはじめていた。……

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