已己巳己

(むすびかたひとつほどきかたひとつ)

結び方ひとつ、解き方ひとつ、

(あいしかたひとつがおなじだったなら)

愛し方ひとつが同じだったなら。

(おなじだったから)

同じだったから。

(おしゃべりはとくいたよるのはにがて)

お喋りは得意。頼るのは苦手。

(はなしあいはへりこぜりあいがふえた)

話し合いは減り、小競り合いが増えた。

(はじまりはいつもこころから)

はじまりは、いつも心から。

(はなしたてのてにのこんのおんど)

放したての手に残んの温度。

(はなしたてのわだいをさいど)

話したての話題を再度。

(おろしたてのふくをながくきていくように)

下ろしたての服を長く着ていくように、

(ぼくらはちんちゃくした)

僕らは沈着した。

(ほんのささいなむししたささくれが)

ほんの些細な、無視したささくれが

(しにいたるほどいたい)

死に至るほど痛い。

(いたい)

痛い。

(かんかくがにていてあまえかたがふしぜんで)

感覚が似ていて、甘え方が不自然で、

(それにどうじにきづくのがあまりにしぜんで)

それに同時に気づくのがあまりに自然で、

(はじまりはいつもくちから)

はじまりは、いつも口から。

(こころなんてありもしないものを)

心なんて在りもしないものを

(むくにしんじるこころはあるのに)

無垢に信じる心は在るのに。

(あなたにであいさえしなければ)

あなたに出会いさえしなければ

(こんなみじめなばけものにならずにすんだのに)

こんな惨めな化け物にならずに済んだのに。

(なんでこうなったかを)

なんでこうなったかを

(かんがえるじかんだけもじどおりしぬほどあってさ)

考える時間だけ文字通り、死ぬほどあってさ。

(ありがとうねあいしてくれて)

ありがとうね。愛してくれて。

(どんなかたちでもそれだけはつたわっている)

どんな形でも、それだけは伝わっている。

(さよならはこころから)

さよならは、心から。

(みみにとどくものだけがほんねじゃない)

耳に届くものだけが本音じゃない。

(みみをかたむけるだけじゃふづりあい)

耳を傾けるだけじゃ不釣り合い。

(あなたとはこころではなしたい)

あなたとは、こころで話したい。

(ぼくはそうしたいよ)

僕は、そうしたいよ。

(むすびかたひとつほどきかたひとつ)

結び方ひとつ、解き方ひとつ、

(あいしかたひとつがおなじだった)

愛し方ひとつが同じだった。

(はなしずみのわだいをなんどもなんども)

話し済みの話題を何度も、何度も、

(のうのしわにきざむ)

脳のしわに刻む。

(くちにしなくてもおもったじてんでとか)

口にしなくても思った時点で、とか

(そんなわけはないでしょう)

そんなわけはないでしょう。

(いわないさとさをやどるやさしさを)

言わない聡さを、宿る優しさを

(あなたからまなぶ)

あなたから学ぶ。

(あなたがひつようでした)

あなたが必要でした。

(じゃあそういったら)

じゃあ、そう言ったら？

(そのためのこころだこころなんだろう)

そのための心だ。心なんだろう。

(そのためのくちだくちなんだろう)

そのための口だ。口なんだろう。