プレゼント

(おたずねしますこのあたりでついさっき)

お訪ねします　この辺りでついさっき

(なみだのおちるおとがきこえたきがして)

涙の落ちる音が聴こえた気がして

(かけつけたんだけどだれのなみだかな)

駆けつけたんだけど　誰の涙かな

(そういやきみはずいぶんあかいめをしてるね)

そういや君は　ずいぶん赤い目をしてるね

(ええとうん)

ええと、うん

(そうだいくつかのものがたりをぷれぜんとしてあげる)

そうだ　いくつかの物語をプレゼントしてあげる

(ちゃんとよんでおくこといいね)

ちゃんと読んでおく事　いいね

(それじゃまたあとで)

それじゃ　また後で

(せかいにだれもいないきがしたよるがあって)

世界に誰もいない気がした夜があって

(じぶんがいないきぶんにひたったあさがあって)

自分がいない気分に浸った朝があって

(めはとじてるほうがらくゆめだけみればいい)

目は閉じてる方が楽　夢だけ見ればいい

(くちもとじればあきれるうそはきかずにすむ)

口も閉じれば　呆れる嘘は聞かずに済む

(そうやってつくったがんじょうなとびら)

そうやって作った頑丈な扉

(このよでいちばんかたいかべでかこんだへや)

この世で一番固い壁で囲んだ部屋

(ところがこどくをのぞんだはずのりょうみみがまつのは)

ところが孤独を望んだ筈の両耳が待つのは

(このよでいちばんやわらかいのっくのおと)

この世で一番柔らかいノックの音

(ええとうん)

ええと、うん

(きっといまもまだふるえながら)

きっと　今もまだ震えながら

(わらおうとしてないて)

笑おうとして泣いて

(おとのないこえでたすけをよぶ)

音の無い声で助けを呼ぶ

(それはただしいすがた)

それは　正しい姿

(このままだっていいんだよ)

このままだっていいんだよ

(ゆうきもげんきもいきるうえでは)

勇気も元気も　生きる上では

(なくてこまるものじゃない)

無くて困る物じゃない

(あってこまることのほうがおおい)

あって困る事の方が多い

(でもさかべだけでいいところにわざわざとびらつくったんだよ)

でもさ　壁だけでいい所に　わざわざ扉作ったんだよ

(きらいだぜんぶすきなのに)

嫌いだ　全部　好きなのに

(ええとうん)

ええと、うん

(だいじょうぶきみはまだきみじしんをちゃんとみてあげてないだけ)

大丈夫　君はまだ君自身を　ちゃんと見てあげてないだけ

(だれだってそうさきみひとりじゃない)

誰だってそうさ　君一人じゃない

(ひどくはずかしいことで)

ひどく恥ずかしい事で

(でもにげられないことで)

でも逃げられない事で

(そりゃぼくだってねぇそりゃぼくだってねぇ)

そりゃ僕だってねぇ　そりゃ僕だってねぇ

(ほんとうにめんどうなことでだれにもたのめないことで)

本当に面倒な事で　誰にも頼めない事で

(そりゃぼくだってねぇ)

そりゃ僕だってねぇ

(まぁいいや)

まぁ　いいや

(すくなくともきみにはみかたがいるよ)

少なくとも君には味方がいるよ

(ぷれぜんとのものがたりのなかのじゅうにんたち)

プレゼントの物語の中の住人達

(さぁこれからなにをするんだい)

さぁ　これから何をするんだい

(ぼくはもういかなきゃ)

僕はもう行かなきゃ

(ほらまたどこかでなみだのおちるおと)

ほら　またどこかで　涙の落ちる音