夏目漱石「こころ」3-23

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投稿者投稿者たけしいいね0お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」3-23
下)先生と遺書
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。

次:https://typing.twi1.me/game/386388

オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
8:疑ぐった(うたぐった)
9:疑わなかった(うたがわなかった)
26:御仰る(おっしゃる)
40:力める(つとめる)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
少し長くなっちゃいました。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7596 7.7 97.9% 268.4 2083 44 40 2024/09/24
2 なおきち 7446 7.6 96.9% 273.3 2100 65 40 2024/10/19
3 やまちゃん 4823 B 4.9 97.9% 422.7 2083 44 40 2024/10/27

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問題文

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(あなたはさだめてへんにおもうでしょう。)

貴方は定めて変に思うでしょう。

(そのわたくしがそこのおじょうさんをどうしてすくよゆうをもっているか。)

その私が其所の御嬢さんをどうして好く余裕を有っているか。

(そのおじょうさんのへたないけばなを、どうしてうれしがってながめるよゆうがあるか。)

その御嬢さんの下手な活花を、どうして嬉しがって眺める余裕があるか。

(おなじくへたなそのひとのことをどうしてよろこんできくよゆうがあるか。)

同じく下手なその人の琴をどうして喜こんで聞く余裕があるか。

(そうしつもんされたとき、わたくしはただりょうほうともじじつであったのだから、)

そう質問された時、私はただ両方とも事実であったのだから、

(じじつとしてあなたにおしえてあげるというよりほかにしかたがないのです。)

事実としてあなたに教えて上げるというより外に仕方がないのです。

(かいしゃくはあたまのあるあなたにまかせるとして、わたくしはただいちごんつけたしておきましょう。)

解釈は頭のある貴方に任せるとして、私はただ一言付け足して置きましょう。

(わたくしはかねにたいしてじんるいをうたぐったけれども、)

私は金に対して人類を疑ぐったけれども、

(あいにたいしては、まだじんるいをうたがわなかったのです。)

愛に対しては、まだ人類を疑わなかったのです。

(だからひとからみるとへんなものでも、)

だから他から見ると変なものでも、

(またじぶんでかんがえてみて、むじゅんしたものでも、)

また自分で考えて見て、矛盾したものでも、

(わたくしのむねのなかではへいきでりょうりつしていたのです。)

私の胸のなかでは平気で両立していたのです。

(わたくしはびぼうじんのことをつねにおくさんといっていましたから、)

私は未亡人の事を常に奥さんと云っていましたから、

(これからびぼうじんとよばずにおくさんといいます。)

これから未亡人と呼ばずに奥さんと云います。

(おくさんはわたくしをしずかなひと、おとなしいおとことひょうしました。)

奥さんは私を静かな人、大人しい男と評しました。

(それからべんきょうかだともほめてくれました。)

それから勉強家だとも褒めてくれました。

(けれどもわたくしのふあんなめつきや、きょときょとしたようすについては、)

けれども私の不安な眼つきや、きょときょとした様子については、

(なにごともくちへだしませんでした。)

何事も口へ出しませんでした。

(きがつかなかったのか、えんりょしていたのか、)

気が付かなかったのか、遠慮していたのか、

(どっちだかよくわかりませんが、)

どっちだかよく解りませんが、

など

(なにしろそこにはまるでちゅういをはらっていないらしくみえました。)

何しろ其所にはまるで注意を払っていないらしく見えました。

(それのみならず、あるばあいにわたくしをおうようなかただといって、)

それのみならず、ある場合に私を鷹揚な方だと云って、

(さもそんけいしたらしいくちのききかたをしたことがあります。)

さも尊敬したらしい口の利き方をした事があります。

(そのときしょうじきなわたくしはすこしかおをあからめて、むこうのことばをひていしました。)

その時正直な私は少し顔を赤らめて、向うの言葉を否定しました。

(するとおくさんは)

すると奥さんは

(「あなたはじぶんできがつかないから、おっしゃるんです」)

『あなたは自分で気が付かないから、御仰るんです』

(とまじめにせつめいしてくれました。)

と真面目に説明してくれました。

(おくさんははじめわたくしのようなしょせいをうちへおくつもりではなかったらしいのです。)

奥さんは始め私のような書生を宅へ置く積りではなかったらしいのです。

(どこかのやくしょへつとめるひとかなにかにざしきをかすりょうけんで、)

何処かの役所へ勤める人か何かに坐敷を貸す料簡で、

(きんじょのものにしゅうせんをたのんでいたらしいのです。)

近所のものに周旋を頼んでいたらしいのです。

(ほうきゅうがゆたかでなくって、やむをえずしろうとやにげしゅくするくらいのひとだからというかんがえが、)

俸給が豊でなくって、已を得ず素人屋に下宿する位の人だからという考えが、

(それでまえかたからおくさんのあたまのどこかにはいっていたのでしょう。)

それで前かたから奥さんの頭のどこかに這入っていたのでしょう。

(おくさんはじぶんのむねにえがいたそのそうぞうのおきゃくとわたくしとをひかくして、)

奥さんは自分の胸に描いたその想像の御客と私とを比較して、

(こっちのほうをおうようだといってほめるのです。)

こっちの方を鷹揚だと云って褒めるのです。

(なるほどそんなきりつめたせいかつをするひとにくらべたら、)

成程そんな切り詰めた生活をする人に比べたら、

(わたくしはきんせんにかけて、おうようだったかもしれません。)

私は金銭にかけて、鷹揚だったかも知れません。

(しかしそれはきしょうのもんだいではありませんから、)

然しそれは気性の問題ではありませんから、

(わたくしのないせいかつにとってほとんどかんけいのないのといっぱんでした。)

私の内生活に取って殆んど関係のないのと一般でした。

(おくさんはまたおんなだけにそれをわたくしのぜんたいにおしひろげて、)

奥さんはまた女だけにそれを私の全体に推し広げて、

(おなじことばをおうようしようとつとめるのです。)

同じ言葉を応用しようと力めるのです。

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