夏目漱石「こころ」3-25
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。
次:https://typing.twi1.me/game/387021
オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
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19:御這入なさい(おはいんなさい)
21:序に(ついでに)
29:浚う(さらう)
35:痕迹(こんせき)
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少し長めです。
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | berry | 7765 | 神 | 7.9 | 98.0% | 231.4 | 1833 | 36 | 35 | 2024/09/24 |
2 | なおきち | 7516 | 神 | 7.8 | 96.4% | 237.2 | 1851 | 68 | 35 | 2024/10/19 |
3 | 饅頭餅美 | 5222 | B+ | 5.5 | 94.4% | 334.1 | 1855 | 110 | 35 | 2024/10/11 |
4 | やまちゃん | 4971 | B | 5.0 | 98.5% | 364.3 | 1838 | 27 | 35 | 2024/10/28 |
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問題文
(わたくしをよびにくるのは、たいていおじょうさんでした。)
私を呼びに来るのは、大抵御嬢さんでした。
(おじょうさんはえんがわをちょっかくにまがって、わたくしのへやのまえにたつこともありますし、)
御嬢さんは縁側を直角に曲って、私の室の前に立つ事もありますし、
(ちゃのまをぬけて、つぎのへやのふすまのかげからすがたをみせることもありました。)
茶の間を抜けて、次の室の襖の陰から姿を見せる事もありました。
(おじょうさんは、そこへきてちょっととまります。)
御嬢さんは、其所へ来て一寸留まります。
(それからきっとわたくしのなをよんで、「おべんきょう?」とききます。)
それからきっと私の名を呼んで、『御勉強?』と聞きます。
(わたくしはたいていむずかしいしょもつをつくえのまえにあけて、それをみつめていましたから、)
私は大抵むずかしい書物を机の前に開けて、それを見詰めていましたから、
(はたでみたらさぞべんきょうかのようにみえたのでしょう。)
傍で見たらさぞ勉強家のように見えたのでしょう。
(しかしじっさいをいうと、それほどねっしんにしょもつをけんきゅうしてはいなかったのです。)
しかし実際を云うと、それ程熱心に書物を研究してはいなかったのです。
(ぺーじのうえにめをつけていながら、)
頁の上に眼を着けていながら、
(おじょうさんのよびにくるのをまっているくらいなものでした。)
御嬢さんの呼びに来るのを待っている位なものでした。
(まっていてこないと、しかたがないからわたくしのほうでたちあがるのです。)
待っていて来ないと、仕方がないから私の方で立ち上るのです。
(そうしてむこうのへやのまえへいって、こちらから「おべんきょうですか」ときくのです。)
そうして向うの室の前へ行って、此方から『御勉強ですか』と聞くのです。
(おじょうさんのへやはちゃのまとつづいたろくじょうでした。)
御嬢さんの部屋は茶の間と続いた六畳でした。
(おくさんはそのちゃのまにいることもあるし、)
奥さんはその茶の間にいる事もあるし、
(またおじょうさんのへやにいることもありました。)
又御嬢さんの部屋にいる事もありました。
(つまりこのふたつのへやはしきりがあっても、ないとおなじことで、)
つまりこの二つの部屋は仕切があっても、ないと同じ事で、
(おやこふたりがいったりきたりして、どっちつかずにせんりょうしていたのです。)
親子二人が往ったり来たりして、どっち付かずに占領していたのです。
(わたくしがそとからこえをかけると、)
私が外から声を掛けると、
(「おはいんなさい」とこたえるのはきっとおくさんでした。)
『御這入なさい』と答えるのはきっと奥さんでした。
(おじょうさんはそこにいてもめったにへんじをしたことがありませんでした。)
御嬢さんは其所にいても滅多に返事をした事がありませんでした。
(ときたまおじょうさんひとりで、ようがあってわたくしのへやへはいったついでに、)
時たま御嬢さん一人で、用があって私の室へ這入った序に、
(そこにすわってはなしこむようなばあいもそのうちにでてきました。)
其所に坐って話し込むような場合もその内に出て来ました。
(そういうときには、わたくしのこころがみょうにふあんにおかされてくるのです。)
そういう時には、私の心が妙に不安に冒されて来るのです。
(そうしてわかいおんなとたださしむかいですわっているのがふあんなのだとばかりは)
そうして若い女とただ差向いで坐っているのが不安なのだとばかりは
(おもえませんでした。)
思えませんでした。
(わたくしはなんだかそわそわしだすのです。)
私は何だかそわそわし出すのです。
(じぶんでじぶんをうらぎるようなふしぜんなたいどがわたくしをくるしめるのです。)
自分で自分を裏切るような不自然な態度が私を苦しめるのです。
(しかしあいてのほうはかえってへいきでした。)
然し相手の方は却って平気でした。
(これがことをさらうのにこえさえろくにだせなかったあのおんなかしらとうたがわれるくらい、)
これが琴を浚うのに声さえ碌に出せなかったあの女かしらと疑がわれる位、
(はずかしがらないのです。)
耻ずかしがらないのです。
(あまりながくなるので、ちゃのまからははによばれても、)
あまり長くなるので、茶の間から母に呼ばれても、
(「はい」とへんじをするだけで、よういにこしをあげないことさえありました。)
『はい』と返事をするだけで、容易に腰を上げない事さえありました。
(それでいておじょうさんはけっしてこどもではなかったのです。)
それでいて御嬢さんは決して子供ではなかったのです。
(わたくしのめにはよくそれがわかっていました。)
私の眼には能くそれが解っていました。
(よくわかるようにふるまってみせるこんせきさえあきらかでした。)
能く解るように振舞って見せる痕迹さえ明らかでした。