洒落怖《旅館の求人》

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洒落にならない怖い話

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問題文

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(ちょうど2ねんまえくらいのことです。)

丁度2年くらい前のことです。

(りょこうにいきたいのでばいとをさがしていたときのことです。)

旅行に行きたいのでバイトを探していた時の事です。

(あついひがつづいてあせをかきながらきゅうじんをめくってはでんわしてました。)

暑い日が続いて汗をかきながら求人をめくっては電話してました。

(ところが、なぜかどこもかしこもだめ、だめだめ。)

ところが、何故かどこもかしこも駄目、駄目駄目。

(すりきれたたたみのうえにだいのじにねころがり、)

擦り切れた畳の上に大の字に寝転がり、

(てきとうにあつめたきゅうじんざっしをぺらぺらとあくたいをつきながらめくってたんです。)

適当に集めた求人雑誌をペラペラと悪態をつきながらめくってたんです。

(ふけいきだな・・・せつでんのため、よるまででんきはおとしています。)

不景気だな・・・節電の為、夜まで電気は落としています。

(くらいへやにおちそうでおちないゆうひがさしこんでいます。)

暗い部屋に落ちそうで落ちない夕日が差し込んでいます。

(まどわくにさえぎられたぶぶんだけが)

窓枠に遮られた部分だけが

(まるでくらいじゅうじかのようなかげをたたみにおとしていました。)

まるで暗い十字架のような影を畳に落としていました。

(とおくででんしゃのおとがひびきます。)

遠くで電車の音が響きます。

(めをつむるとちがうへやからゆうげのかおりがしてきます。)

目をつむると違う部屋から夕餉の香りがしてきます。

(「かっぷらーめんあったな」)

「カップラーメンあったな」

(わたしはからだをだるそうにおこしちらかったきゅうじんざっしをかたづけました。)

私は体をだるそうに起こし散らかった求人雑誌を片付けました。

(ふと・・・ぐうぜんひらいたのでしょうかぺーじがめくれていました。)

ふと・・偶然開いたのでしょうかページがめくれていました。

(そこにはぼうけんのりょかんがばいとをぼしゅうしているものでした。)

そこには某県の旅館がバイトを募集しているものでした。

(そのばしょはまさにわたしがりょこうにいってみたいとおもってたところでした。)

その場所はまさに私が旅行に行ってみたいと思ってた所でした。

(じょうけんはなつのきかんだけのものでじきゅうはあまり、、)

条件は夏の期間だけのもので時給はあまり、、

(というかぜんぜんたかくありませんでしたが、)

というか全然高くありませんでしたが、

(すみこみでしょくじつき、というところにつよくひかれました。)

住み込みで食事つき、というところに強く惹かれました。

など

(ずっとかっぷめんしかたべてません。)

ずっとカップ麺しか食べてません。

(まかないりょうりでもてづくりのものがたべれて、しかもいきたかったばしょ。)

まかない料理でも手作りのものが食べれて、しかも行きたかった場所。

(わたしはすぐにでんわしました。)

私はすぐに電話しました。

(「はい。ありがとうございます!まるまるりょかんです。」)

「はい。ありがとうございます!○○旅館です。」

(「あ、すみません。きゅうじんこうこくをみたものですが、)

「あ、すみません。求人広告を見たものですが、

(まだぼしゅうしてますでしょうか?」)

まだ募集してますでしょうか?」

(「え、しょうしょうおまちください。・・・ざ・・ざざ・・い・・そう・・だ・・」)

「え、少々お待ち下さい。・・・ザ・・ザザ・・い・・そう・・だ・・」

(うけつけはわかそうなじょせいでした。)

受付は若そうな女性でした。

(でんわのむこうがわでひくいこえのだんせいと(おそらくはやどのしゅじん?))

電話の向こう側で低い声の男性と(恐らくは宿の主人?)

(こごえでかいわをしていました。)

小声で会話をしていました。

(わたしはどきどきしながらなぜかせいざなんかしちゃったりして、、まってました。)

私はドキドキしながらなぜか正座なんかしちゃったりして、、待ってました。

(やがてじゅわきをにぎるけはいがしました。)

やがて受話器を握る気配がしました。

(「はい。おでんわかわりました。えと・・・ばいとですか?」)

「はい。お電話変わりました。えと・・・バイトですか?」

(「はい。まるまるきゅうじんでここのことをしりまして、ぜひおねがいしたいのですが」)

「はい。○○求人でここの事を知りまして、是非お願いしたいのですが」

(「あー、ありがとうございます。こちらこそおねがいしたいです。」)

「あー、ありがとうございます。こちらこそお願いしたいです。

(いつからこれますか?」)

いつから来れますか?」

(「いつでもわたしはかまいません」)

「いつでも私は構いません」

(「じゃ、あしたからでもおねがいします、すみませんおなまえは?」)

「じゃ、明日からでもお願いします。すみませんお名前は?」

(「かみおです」)

「神尾(仮名)です」

(「かみおくんね。はやくいらっしゃい。」)

「神尾君ね。はやくいらっしゃい。」

(とんとんびょうしだった。うんがよかった。)

とんとん拍子だった。運が良かった。

(わたしはでんわのようけんなどわすれないようにろくおんするようにしている。)

私は電話の要件など忘れないように録音するようにしている。

(さいどでんわをさいせいしながらひつようじこうをめもっていく。)

再度電話を再生しながら必要事項をメモっていく。

(すみこみなのでもっていくもののなかに)

住み込みなので持っていくものの中に

(ほけんしょうなどもひつようとのことだったのでそれもめもする。)

保険証なども必要とのことだったのでそれもメモする。

(そのやどのきゅうじんのぺーじをみるとしろくろでやどのしゃしんがうつっていた。)

その宿の求人のページを見ると白黒で宿の写真が写っていた。

(こじんまりとしているがしぜんにかこまれたよさそうなばしょだ。)

こじんまりとしているが自然に囲まれた良さそうな場所だ。

(わたしはきゅうにばいとがきまり、)

私は急にバイトが決まり、

(しかもいきたかったばしょだということもあってほっとした。)

しかも行きたかった場所だということもあってホッとした。

(しかしなにかおかしい。わたしははなうたをうたいながらかっぷめんをつくった。)

しかし何かおかしい。私は鼻歌を歌いながらカップ麺を作った。

(なにかはなうたもおかしくかんじる。)

何か鼻歌もおかしく感じる。

(ひはいつのまにかとっぷりとくれ、)

日はいつの間にかとっぷりと暮れ、

(あけっぱなしのまどからしっけのおおいなまあたたかいかぜがはいってくる。)

あけっぱなしの窓から湿気の多い生温かい風が入ってくる。

(わたしはかっぷめんをすすりながら、なにがおかしいのかきづいた。)

私はカップ麺をすすりながら、何がおかしいのか気付いた。

(じょうけんはよく、おかねをかせぎながらりょこうもあじわえる。おんなのこもいるようだ。)

条件は良く、お金を稼ぎながら旅行も味わえる。女の子もいるようだ。

(りょかんならであいもあるかもしれない。だが、なにかおかしい。)

旅館なら出会いもあるかもしれない。だが、何かおかしい。

(くらやみにまどのがらすがかがみになっている。)

暗闇に窓のガラスが鏡になっている。

(そのくらいまどにわたしのかおがうつっていた。)

その暗い窓に私の顔が映っていた。

(なぜか、まったくうれしくなかった。)

なぜか、まったく嬉しくなかった。

(りゆうはわからないがわたしははげしくおちこんでいた。)

理由はわからないが私は激しく落ち込んでいた。

(まどにうつったとしをとったかのようなせいきのないじぶんのかおをみつめつづけた。)

窓に映った年をとったかのような生気のない自分の顔を見つめ続けた。

(つぎのひ、わたしはひどいずつうにめざめた。はげしくおえつする。かぜか?)

次の日、私は酷い頭痛に目覚めた。激しく嗚咽する。風邪か?

(わたしはふらふらしながらはをみがいた。はぐきからちがしたたった。)

私はふらふらしながら歯を磨いた。歯茎から血が滴った。

(かがみでかおをみる。ぎょっとした。)

鏡で顔を見る。ギョッとした。

(めのしたにはくっきりとすみでかえがいたようなくまができており、)

目の下にはくっきりと墨で描いたようなクマが出来ており、

(かおいろはまっしろ、まるで・・・。)

顔色は真っ白、まるで・・・。

(ばいとやめようともおもったが、すでにじゅんびはよるのうちにととのえている。)

バイトやめようとも思ったが、既に準備は夜のうちに整えている。

(しかしきがのらない。そのときでんわがなった。)

しかし気が乗らない。そのとき電話が鳴った。

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