怖い話《異界への扉》

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投稿者投稿者やゆいいね0お気に入り登録
プレイ回数122難易度(4.9) 4552打 長文
実話
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 哀歌🌙💜 3420 D 3.6 93.1% 1229.2 4538 334 92 2024/07/26
2 いやぁ… 3240 E++ 3.6 90.1% 1234.5 4491 491 92 2024/07/25

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問題文

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(けんちくほうだかなんだかで5かい(6かいかも)いじょうのたてものには)

建築法だか何だかで5階(6階かも)以上の建物には

(えれべーたーをせっちしないといかんらしい。)

エレベーターを設置しないといかんらしい。

(だからおれがまえすんでいたこうそくぞいのまんしょんにも、)

だから俺が前住んでいた高速沿いのマンションにも、

(とうぜんながらえれべーたーがひとつあった。)

当然ながらエレベーターが一つあった。

(6かいにすんでいたおれがかいだんをつかうことはまったくといっていいほどなかった。)

6階に住んでいた俺が階段を使うことは全くと言っていいほどなかった。

(まあ、たぶんだれもがそうだろう。)

まあ、多分誰もがそうだろう。

(くるひもくるひもえれべーたーのおせわになった。)

来る日も来る日もエレベーターのお世話になった。

(かいだんはおりるならともかくのぼるのはなかなかにつらい。)

階段は下りるならともかく上るのはなかなかに辛い。

(だが、つらいのはわかっていても、いまのおれはもっぱらかいだんしかつかわない。)

だが、辛いのは分かっていても、今の俺は専ら階段しか使わない。

(だいがくのこうぎがないへいじつのひるごろ、)

大学の講義がない平日の昼頃、

(おれはこんびにでめしをかってこようとへやをでた。)

俺はコンビニで飯を買ってこようと部屋を出た。

(1かいにおりるにはとうぜんえれべーたーをつかう。)

1階に下りるには当然エレベーターを使う。

(えれべーたーはさいじょうかいの8かいにとまっていて、)

エレベーターは最上階の8階に止まっていて、

(いままさにだれかがのるかおりるかしているところのようだった。)

今まさに誰かが乗るか下りるかしているところのようだった。

(おれはかいかのぼたんをおし、えれべーたーがおりてくるのをまった。)

俺は階下のボタンを押し、エレベーターが下りてくるのを待った。

(ひらいたえれべーたーのどあのむこうにはちゅうねんのおばあさんがひとりいた。)

開いたエレベーターのドアの向こうには中年のおばあさんが一人いた。

(ちょくちょくみかけるひとだったから、たぶん8かいのじゅうにんだったんだろ。)

ちょくちょく見かける人だったから、多分8階の住人だったんだろ。

(かるくえしゃくしてえれべーたーにのりこむ。1かいのぼたんはすでにおされている。)

軽く会釈してエレベーターに乗り込む。1階のボタンは既に押されている。

(4かいでいちどえれべーたーがとまり、うんそうやのにいちゃんがのってきた。)

4階で一度エレベーターが止まり、運送屋の兄ちゃんが乗ってきた。

(さんにんともなかよくもくてきのかいは1かいだ。)

三人とも仲良く目的の階は1階だ。

など

(だが。えれべーたーはとうとつに3かいと2かいのあいだでとまってしまう。)

だが。エレベーターは唐突に3階と2階の間で止まってしまう。

(いっしゅんかるいgがからだをおさえつけてきた。)

一瞬軽いGが体を押さえつけてきた。

(おれをふくめたしつないのさんにんはさんにんともかおをみあわせた。)

俺を含めた室内の三人は三人とも顔を見合わせた。

(なにだ。こしょうだろうか。ていでん、ではないようだ。)

何だ。故障だろうか。停電、ではないようだ。

(えれべーたーないのあかりにはいじょうがない。)

エレベーター内の明かりには異常がない。

(「どう・・・したんすかね」)

「どう・・・したんすかね」

(おれがぼそりとつぶやく。おばさんもうんそうやもくびをかしげる。)

俺がぼそりと呟く。おばさんも運送屋も首を傾げる。

(しばらくまってもうごくけはいがない。と、うんそうやがまっさきにこうどうした。)

暫く待っても動く気配がない。と、運送屋が真っ先に行動した。

(かれはないせんぼたんをおした。おうとうがない。たんそくするうんそうや。)

彼は内線ボタンを押した。応答がない。嘆息する運送屋。

(「いったいどうなってんでしょう」)

「一体どうなってんでしょう」

(うんそうやのぎもんはおれのぎもんでもあった。)

運送屋の疑問は俺の疑問でもあった。

(たぶんすうじにしてみればたいしたじかんはなかったはずだ。)

多分数字にしてみれば大した時間はなかったはずだ。

(ちんもくは3ぷんにもみたないくらいだったろう。)

沈黙は3分にも満たないくらいだったろう。

(それでもばくぜんとしたふあんとあせりをかきたてるにはじゅうぶんなじかんだった。)

それでも漠然とした不安と焦りを掻き立てるには十分な時間だった。

(なんとなくみんなそわそわしはじめたころ、えれべーたーがきゅうにかどうをさいかいした。)

何となくみんなそわそわし始めた頃、エレベーターが急に稼働を再開した。

(おばさんがみじかくわっとこえをあげる。おれもとつぜんなんでちょっとおどろいた。)

おばさんが短くわっと声を上げる。俺も突然何でちょっと驚いた。

(しかし、だ。)

しかし、だ。

(おしているのは1かいのぼたんだけだというのに、)

押しているのは1階のボタンだけだというのに、

(どういうわけかしたにはむかわない。)

どういうわけか下には向かわない。

(えれべーたーはうえにしんこうしていた。)

エレベーターは上に進行していた。

(すぅっと4かいをぬけ、5かい、6かい・・・)

すぅっと4階を抜け、5階、6階・・・

(7かいでとまり、がらっとどあがひらいた。)

7階で止まり、がらっとドアが開いた。

(おれはいぶかしげにひらいたどあをみる。まったく、なになんだ。)

俺は訝しげに開いたドアを見る。全く、何なんだ。

(いったいなんだっていうんだこれは。)

一体なんだっていうんだこれは。

(「なんかふあんていみたいだから」)

「なんか不安定みたいだから」

(おばさんがえれべーたーをおりながらいった。)

おばさんがエレベーターを降りながら言った。

(「なんかふあんていみたいだから、かいだんでおりるほうがいいとおもいますよ。)

「なんか不安定みたいだから、階段で降りる方がいいと思いますよ。

(またなにがおこるかわからないし」)

また何が起こるか分からないし」

(「そりゃそうですね」と、うんそうやもえれべーたーをおりた。)

「そりゃそうですね」と、運送屋もエレベーターを降りた。

(とうぜんだ。まったくもっておばさんのいうとおりだ。)

当然だ。全く持っておばさんの言うとおりだ。

(いまはうんよくそとへでられるじょうたいだが、つぎはかんづめにされるかもしれない。)

今は運よく外へ出られる状態だが、次は缶詰にされるかもしれない。

(へたをすればどうさふりょうがげんいんでけがをするかのうせいもある。)

下手をすれば動作不良が原因で怪我をする可能性もある。

(そんなのはごめんだ。)

そんなのはごめんだ。

(おれもこのしんようできないえれべーたーをつかうきなどはなく、)

俺もこの信用できないエレベーターを使う気などはなく、

(ふたりといっしょにおりようとおもっていた。)

二人と一緒に降りようと思っていた。

(いや、まて。なにかがおかしいきがする。)

いや、待て。何かがおかしい気がする。

(えれべーたのむこうにみえるふうけいは、たしかにまんしょんの7かいのそれである。)

エレベータの向こうに見える風景は、確かにマンションの7階のそれである。

(だが・・・やけにくらい。でんきがひとつもついていない。あかりがないのだ。)

だが・・・やけに暗い。電気が一つも点いていない。明かりがないのだ。

(つうろのおくがしにんできるかできないかというくらいくらい。)

通路の奥が視認できるかできないかというくらい暗い。

(やはりていでんか?そうおもってふりかえってみると、)

やはり停電か?そう思って振り返ってみると、

(えれべーたーのなかだけはばちがいなようにあかりがともっている。)

エレベーターの中だけは場違いなように明かりが灯っている。

(そうだ。どうさにいじょうがあるとはいえ、えれべーたーはいちおうはかどうしている。)

そうだ。動作に異常があるとはいえ、エレベーターは一応は稼働している。

(ていでんなわけはない。どうも、なにかへんだ。)

停電なわけはない。どうも、何か変だ。

(いわかんをいだきつつ、おれはふと7かいからのぞけるそとのこうけいにめをやってみた。)

違和感を抱きつつ、俺はふと7階から覗ける外の光景に目をやってみた。

(なんだこれは。そらがあかい。あさやけかゆうやけか?だがいまはそんなじこくではない。)

なんだこれは。空が赤い。朝焼けか夕焼けか?だが今はそんな時刻ではない。

(たいようもくももなにもないそらだった。なんだかぞくりとするくらいせんめいなあか。)

太陽も雲も何もない空だった。なんだかぞくりとするくらい鮮明な赤。

(こんどはしせんをちにおろしてみる。)

今度は視線を地に下ろしてみる。

(まっくら、いや、まっくろだった。こうそくやびるのりんかくをしめすしるえっと。)

真っ暗、いや、真っ黒だった。高速やビルの輪郭を示すシルエット。

(それだけしかみえない。まんしょんとおなじくいっさいあかりがない。)

それだけしか見えない。マンションと同じく一切明かりがない。

(しかも。ふだんはいやというほどみみにするこうそくをとおるくるまのそうこうおんがまったくしない。)

しかも。普段は嫌というほど耳にする高速を通る車の走行音が全くしない。

(むおんだ。なにもきこえない。それにうごくものがみあたらない。)

無音だ。何も聞こえない。それに動くものが見当たらない。

(うまくいえないが、「いきている」においががんぜんのふうけいからまったくしなかった。)

上手く言えないが、「生きている」匂いが眼前の風景から全くしなかった。

(ただそらだけがやけにあかい。あかとくろのせかい。いまいちどふりかえる。)

ただ空だけがやけに赤い。赤と黒の世界。今一度振り返る。

(そんななか、やはりえれべーたーだけはあいかわらずあかるくともっていた。)

そんな中、やはりエレベーターだけは相変わらず明るく灯っていた。

(わずかなじかんをかんがえこんでいたら、えれべーたーのどあがしまりそうになった。)

わずかな時間を考え込んでいたら、エレベーターのドアが閉まりそうになった。

(まて。どうする。おりるべきか。それとも、とどまるべきか。)

待て。どうする。降りるべきか。それとも、留まるべきか。

(こんどはとくにふしんなどうさもなく、えれべーたーはおとなしく1かいまでちょっこうした。)

今度は特に不審な動作もなく、エレベーターは大人しく1階まで直行した。

(ひらいたどあのむこうは、いつもの1かいだった。)

開いたドアの向こうは、いつもの1階だった。

(ひとがあるき、くるまがはしる。せいかつのおと。そとはひるま。みなれたにちじょう。)

人が歩き、車が走る。生活の音。外は昼間。見慣れた日常。

(あんどした。もうだいじょうぶだ。おれはちょっかんてきにそうおもってえれべーたーをおりた。)

安堵した。もう大丈夫だ。俺は直感的にそう思ってエレベーターを降りた。

(きもちをおちつけたあと、あのふたりのことがきになった。)

気持ちを落ち着けた後、あの二人のことが気になった。

(おれはかいだんのまえでふたりがおりてくるのをまった。)

俺は階段の前で二人が下りてくるのを待った。

(しかし、まてどもまてどもだれもおりてこない。)

しかし、待てども待てども誰も降りてこない。

(15ふんほどたってもだれもおりてこなかった。)

15分ほど経っても誰も降りてこなかった。

(かいだんをおりるていどでここまでじかんがかかるのはおかしい。)

階段を降りる程度でここまで時間が掛かるのはおかしい。

(おれはめちゃくちゃにこわくなった。)

俺はめちゃくちゃに怖くなった。

(そとへでた。なんとなくそのばにいたくなかった。)

外へ出た。何となくその場にいたくなかった。

(そのひいらい、おれはえれべーたーにのりたくてものれないたいしつになった。)

その日以来、俺はエレベーターに乗りたくても乗れない体質になった。

(いまはべつのまんしょんにひっこし、しょうこうにはどこにいってもかいだんをつかっている。)

今は別のマンションに引っ越し、昇降には何処に行っても階段を使っている。

(かいだんなら「じつづき」だから、あっちのせかいにいってしまうしんぱいはない。)

階段なら「地続き」だから、あっちの世界に行ってしまう心配はない。

(えれべーたー、あれはいかいへのとびらなんだ。すくなくともおれはそうおもっている。)

エレベーター、あれは異界への扉なんだ。少なくとも俺はそう思っている。

(もうえれべーたーなんかにはぜったいにのりたくない。)

もうエレベーターなんかには絶対に乗りたくない。

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