怖い話《霊柩車》

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実話

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問題文

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(kさんというわかいじょせいが、りょうしんそしておばあちゃんといっしょにすんでいました。)

Kさんという若い女性が、両親そしておばあちゃんと一緒に住んでいました。

(おばあちゃんはもともとはとてもきだてのよいひとだったらしいのですが、)

おばあちゃんは元々はとても気立ての良い人だったらしいのですが、

(すうねんまえからねたきりになり、だんだんへんくつになってしまい、)

数年前から寝たきりになり、段々偏屈になってしまい、

(かいごをするははおやにむかってねちねちとぐちやいやみをいうばかりでなく)

介護をする母親に向かってねちねちと愚痴や嫌味を言うばかりでなく

(「あんたたちはわたしがはやくしねばいいとおもっているんだろう」などと)

「あんたたちは私が早く死ねばいいと思っているんだろう」などと

(くりかえしたりしたため、あいそがつかされて)

繰り返したりしたため、愛想がつかされて

(ほんとうにそうおもわれるようになりました。)

本当にそう思われるようになりました。

(かいごはざつになり、うんどうもまんぞくにさせてもらえず、)

介護は雑になり、運動も満足にさせて貰えず、

(しょくじのしつもおちたために、かそくどてきにからだがよわっていきました。)

食事の質も落ちたために、加速度的に体が弱っていきました。

(さいごにはふとんからおきだすどころか、からだもうごかせずくちすらもきけず、)

最後には布団から起き出すどころか、体も動かせず口すらもきけず、

(ただふとんのなかでいきをしているだけというようなじょうたいになりました。)

ただ布団の中で息をしているだけというような状態になりました。

(はたからみていてもいのちがながくないだろうことはあきらかでした。)

はたから見ていても命が長くないだろうことは明らかでした。

(さてkさんのへやはにかいにあり、あるばんかのじょがねていると、)

さてKさんの部屋は二階にあり、ある晩彼女が寝ていると、

(ふいにくらくしょんのおとがひびきました。)

不意にクラクションの音が響きました。

(kさんはそのままきにせずねていたのですが、しばらくするとまたおとがします。)

Kさんはそのまま気にせず寝ていたのですが、暫くするとまた音がします。

(なんかいもなんかいもなるので、じかんがじかんですし、)

何回も何回も鳴るので、時間が時間ですし、

(あまりのひじょうしきさにはらをたててかーてんをめくってそとをみました。)

あまりの非常識さに腹を立ててカーテンを捲って外を見ました。

(kさんはぞっとしました。)

Kさんはゾッとしました。

(いえのまえにとまっていたのはおおきないちだいのれいきゅうしゃだったのです。)

家の前に停まっていたのは大きな一台の霊柩車だったのです。

(はたしてひとがのっているのかいないのか、)

果たして人が乗っているのかいないのか、

など

(えんじんをかけているようすもなく、ひっそりとしています。)

エンジンをかけている様子もなく、ひっそりとしています。

(kさんはこわくなってふとんをあたまからこうむりました。)

Kさんは怖くなって布団を頭から被りました。

(がたがたとふるえていましたが、そのあとはなにのおともすることなく、)

ガタガタと震えていましたが、その後は何の音もすることなく、

(じつにしずかなものでした。)

実に静かなものでした。

(あさになってkさんは、りょうしんにきのうのよるくらくしょんのおとを)

朝になってKさんは、両親に昨日の夜クラクションの音を

(きかなかったかどうかたずねました。ふたりはしらないといいます。)

聞かなかったかどうか尋ねました。二人は知らないと言います。

(あれだけのおとをだしていてきづかないわけはありませんが、)

あれだけの音を出していて気付かないわけはありませんが、

(りょうしんがうそをついているようにもみえないし、)

両親が嘘をついているようにも見えないし、

(またつくりゆうもないようにおもわれました。)

またつく理由もないように思われました。

(あさになってたしょうはれいせいなしこうをとりもどしたのでしょう。)

朝になって多少は冷静な思考を取り戻したのでしょう。

(kさんは、あれはもしかしておばあちゃんをむかえにきたのではないか)

Kさんは、あれはもしかしておばあちゃんを迎えに来たのではないか

(というけつろんにいたりました。かのじょにはそれいがいかんがえられなかったのです。)

という結論に至りました。彼女にはそれ以外考えられなかったのです。

(しかし、おばあちゃんはあいかわらず「げんき」なままでした。)

しかし、おばあちゃんは相変わらず「元気」なままでした。

(よくじつのよるにもれいきゅうしゃはやってきました。)

翌日の夜にも霊柩車はやって来ました。

(つぎのよるもです。kさんはむししようとしたのですが、)

次の夜もです。Kさんは無視しようとしたのですが、

(ふしぎなことにkさんがにかいからくるまをみおろさないかぎり、)

不思議なことにKさんが二階から車を見降ろさない限り、

(くらくしょんのおとはぜったいになりやまないのです。)

クラクションの音は絶対に鳴りやまないのです。

(きょうふでまんじりともしないよるがつづいたため、)

恐怖でまんじりともしない夜が続いたため、

(kさんはしだいにのいろーぜぎみになっていきました。)

Kさんは次第にノイローゼ気味になっていきました。

(なのかめのことです。りょうしんがあるようじで)

七日目のことです。両親がある用事で

(しんせきのいえにでかけなくてはならなくなりました。)

親戚の家に出かけなくてはならなくなりました。

(ほんとうはkさんもいくのがのぞましく、)

本当はkさんも行くのが望ましく、

(またほんにんもたにんにはいえないりゆうでそうきぼうしたのですが、)

また本人も他人には言えない理由でそう希望したのですが、

(おばあちゃんがいるのでだれかがかならずそばにいなくてはなりません。)

おばあちゃんがいるので誰かが必ず傍にいなくてはなりません。

(kさんはごぞんじのようにのいろーぜでせいしんじょうたいがすぐれなかったために、)

kさんはご存じのようにノイローゼで精神状態が優れなかった為に、

(りょうしんはなかばきょうせいてきにるすばんをめいじつつ、ふたりそろってくるまででていきました。)

両親は半ば強制的に留守番を命じつつ、二人揃って車で出て行きました。

(kさんはきょうふをまぎらわそうとして)

kさんは恐怖を紛らわそうとして

(できるだけたのしいてれびばんぐみをみるようにつとめました。)

出来るだけ楽しいテレビ番組を見るように努めました。

(おばあちゃんのへやにはこわくてちかよりもせず、)

おばあちゃんの部屋には怖くて近寄りもせず、

(たべさせなくてはいけないちゅうしょくもそのままにしてほうっておきました。)

食べさせなくてはいけない昼食もそのままにして放っておきました。

(さてりょうしんはゆうがたにはかえるといいのこしていきましたが、)

さて両親は夕方には帰ると言い残して行きましたが、

(やくそくのじかんになってもかえってくるけはいがありません。)

約束の時間になっても帰ってくる気配がありません。

(じこくはよる9じをまわり、やがて12じがすぎ、)

時刻は夜9時を回り、やがて12時が過ぎ、

(いつもれいきゅうしゃがやってくるじかんがこくいっこくとせまってきても、)

いつも霊柩車がやってくる時間が刻一刻と迫ってきても、

(れんらくのでんわいっぽんすらないありさまなのでした。)

連絡の電話一本すらないありさまなのでした。

(はたして、そのひもくらくしょんはなりました。)

果たして、その日もクラクションは鳴りました。

(kさんはそのときいっかいにいたのですが、まぢかでみるのはいやだったので、)

kさんはその時一階にいたのですが、間近で見るのは嫌だったので、

(いつものとおりににかいのまどからそとをみおろしました。)

いつもの通りに二階の窓から外を見降ろしました。

(ところがどうでしょう。)

ところがどうでしょう。

(いつもはひっそりとしていたくるまから、なんにんものくろいふくをきたひとたちが)

いつもはひっそりとしていた車から、何人もの黒い服を着た人達が

(おりてきて、もんをひらけてはいってくるではありませんか。)

下りてきて、門を開けて入ってくるではありませんか。

(kさんはすっかりおそろしくなってしまいました。)

kさんはすっかり恐ろしくなってしまいました。

(そのうちにかいかでちゃいむのなるおとがきこえました。)

そのうちに階下でチャイムの鳴る音が聞こえました。

(しつこくなりつづけています。ちゃいむはかるいのっくのおとになり、)

しつこく鳴り続けています。チャイムは軽いノックの音になり、

(しまいにはものすごいいきおいでどあが「どんどんどんどん!」とたたかれはじめました。)

終いには物凄い勢いでドアが「ドンドンドンドン!」と叩かれ始めました。

(kさんはもういきたここちもしません。ところがkさんのあたまのなかに、)

kさんはもう生きた心地もしません。ところがkさんの頭の中に、

(「もしかしてげんかんのどあをしめわすれてはいないか」)

「もしかして玄関のドアを閉め忘れてはいないか」

(というふあんがうかびました。)

という不安が浮かびました。

(かんがえればかんがえるほどしめわすれたようなきがします。)

考えれば考えるほど閉め忘れたような気がします。

(kさんはとびあがり、ものすごいいきおいでげんかんをかけおりるとげんかんにむかいました。)

kさんは飛び上がり、物凄い勢いで玄関を駆け下りると玄関に向かいました。

(ところがどあにとうちゃくするそのしゅんかん、げんかんわきのでんわきがけたたましく)

ところがドアに到着するその瞬間、玄関脇の電話機がけたたましく

(なりはじめたのです。はげしくどあをたたくおとはつづいています。)

鳴り始めたのです。激しくドアを叩く音は続いています。

(kさんのあしはぴたりととまりうごけなくなり、)

kさんの足はぴたりと止まり動けなくなり、

(りょうみみをおさえてさけびだしたくなるしょうどうをがまんしながら、)

両耳を押さえて叫び出したくなる衝動を我慢しながら、

(いきおいよくじゅわきをとりました。「もしもし!もしもし!もしもし!」)

勢いよく受話器を取りました。「もしもし!もしもし!もしもし!」

(「まるまるさんのおたくですか?」いがいなことに、やわらかいおとこのひとのこえでした。)

「○○さんのお宅ですか?」意外なことに、柔らかい男の人の声でした。

(「こちらけいさつです。じつはおちついてきいていただきたいんですが、)

「こちら警察です。実は落ち着いて聞いていただきたいんですが、

(さきほどごりょうしんがこうつうじこでなくなられたんです。あのう、むすめさんですよね?)

先程ご両親が交通事故で無くなられたんです。あのう、娘さんですよね?

(もしもし、もしもし・・・」kさんはぼうぜんとたちすくみました。)

もしもし、もしもし・・・」kさんは呆然と立ちすくみました。

(ふしぎなことにさっきまでやかましくたたかれていたどあは、)

不思議なことにさっきまでやかましく叩かれていたドアは、

(なにごともなかったかのようにひっそりとしずまりかえっていました。)

何事もなかったかのようにひっそりと静まり返っていました。

(kさんはかんがえました。もしかしてあのれいきゅうしゃは)

kさんは考えました。もしかしてあの霊柩車は

(りょうしんをのせにきたのでしょうか?おばあちゃんをつれにきたのではなく?)

両親を乗せに来たのでしょうか?おばあちゃんを連れに来たのではなく?

(そういえば、おばあちゃんはどうなったのだろう?)

そういえば、おばあちゃんはどうなったのだろう?

(そのときうしろからかたをたたかれ、kさんがふりかえると、)

その時後ろから肩を叩かれ、kさんが振り返ると、

(うごけないはずのおばあちゃんがたっていて、)

動けないはずのおばあちゃんが立っていて、

(kさんにむかってわらいながらこういいました。)

kさんに向かって笑いながらこう言いました。

(「おまえものるんだよ」)

「お前も乗るんだよ」

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