怖い話《折り詰め》

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実話

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問題文

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(きんじょのちゅうかやでらーめんをくったんだが、かねをはらおうとしたら、)

近所の中華屋でラーメンを食ったんだが、金を払おうとしたら、

(てんしゅがいらないというんだ。)

店主がいらないと言うんだ。

(「きょうでおみせおわり。あなたがさいごのおきゃくさん。ひいきにしてくれてありがとう。)

「今日でお店終わり。貴方が最後のお客さん。ひいきにしてくれてありがとう。

(これ、おみやげ」と、おりづめをふたつくれた。)

これ、お土産」と、折り詰めを二つくれた。

(おれはなんといっていいかわかんなかったけど、)

俺は何と言っていいか分かんなかったけど、

(「とてもざんねんです。おみやげ、ありがたくちょうだいします。おつかれさまでした」)

「とても残念です。お土産、ありがたく頂戴します。お疲れ様でした」

(とあいさつしてみせをでたんだ。おりづめのなかをみたら、ぎょうざやらはるまきやら)

と挨拶して店を出たんだ。折り詰めの中を見たら、餃子やら春巻きやら

(からあげやらが、みっしりとつまってる。ちょっとひとりじゃたべきれない。)

唐揚げやらが、みっしりと詰まってる。ちょっと一人じゃ食べきれない。

(おもしろいたいけんだな。とくしちゃったな。と、たのしくなってさ。)

面白い体験だな。得しちゃったな。と、楽しくなってさ。

(かえりみちにゆうじんにでんわして、けいいをはなしてから、)

帰り道に友人に電話して、経緯を話してから、

(「いま、おれんとこにきたら、ちゅうかおーどぶるがたらふくくえるぜ」)

「今、俺んとこに来たら、中華オードブルがたらふく食えるぜ」

(とさそったんだよ。すると、ゆうじんはへんなことをいうんだ。)

と誘ったんだよ。すると、友人は変な事を言うんだ。

(「そのおりづめのなかみ、くったのか?」「くってないよ」)

「その折り詰めの中身、食ったのか?」「食ってないよ」

(「いいか、ぜったいくうな。それから、ぜったいあぱーとにもどるな。)

「いいか、絶対食うな。それから、絶対アパートに戻るな。

(そうだな、えきまえのこんびににいけ。くるまでむかえにいってやるから」)

そうだな、駅前のコンビニに行け。車で迎えに行ってやるから」

(「どういうことかぜんぜんわかんないんだけど」)

「どういう事か全然分かんないんだけど」

(「せつめいはあとだ。ひとのいるところがあんぜんだ。こんびにについたられんらくくれ」)

「説明は後だ。人のいるところが安全だ。コンビニに着いたら連絡くれ」

(とにかくおれはこんびににむかったよ。で、ゆうじんにでんわした。)

とにかく俺はコンビニに向かったよ。で、友人に電話した。

(「ついたよ」「こっちももうすぐつく。だれかにあとをつけられたりしてないか」)

「着いたよ」「こっちももうすぐ着く。誰かに後を付けられたりしてないか」

(「えーと、おまえだいじょうぶ?」「それはこっちのせりふだな」)

「えーと、お前大丈夫?」「それはこっちの台詞だな」

など

(それから、ゆうじんとれんらくがとれなくなった。けいたいはつながらない。)

それから、友人と連絡が取れなくなった。携帯は繋がらない。

(こいちじかんこんびにでまってたけど、ゆうじんはあらわれない。)

小一時間コンビ二で待ってたけど、友人は現れない。

(ゆうじんがいった「あぱーとにもどるな」というのが、なぜかあたまにのこってたら、)

友人が言った「アパートに戻るな」というのが、何故か頭に残ってたら、

(ねっとかふぇであさまですごし、しはつでじっかにかえった。)

ネットカフェで朝まで過ごし、始発で実家に帰った。

(いまもじっかでごろごろしてる。ほかのゆうじんにたずねても、)

今も実家でゴロゴロしてる。他の友人に尋ねても、

(そいつとはれんらくがとれないそうだ。)

そいつとは連絡が取れないそうだ。

(そろそろがっこうもはじまるし、ゆうじんのしょうそくもきになる。)

そろそろ学校も始まるし、友人の消息も気になる。

(おりづめはこんびにのごみばこにすてた。)

折り詰めはコンビニのゴミ箱に捨てた。

(9がつもなかごろをすぎて、さすがにじっかにいづらくなったので、)

9月も中頃を過ぎて、流石に実家に居づらくなったので、

(あぱーとにもどってみた。ばんめしにこんびにべんとうをくっていると)

アパートに戻ってみた。晩飯にコンビニ弁当を食っていると

(おとなりのひとがきたんだ。ちょっといいかな、ってかんじで。)

お隣の人が来たんだ。ちょっといいかな、って感じで。

(「もう、だいじょうぶなのか?」ってきかれたんで、すごくびっくりした。)

「もう、大丈夫なのか?」って聞かれたんで、すごくびっくりした。

(え?なんでしってんの?でも、おとなりのひとがつづけたはなしにもっとびっくりした。)

え?なんで知ってんの?でも、お隣の人が続けた話にもっとびっくりした。

(「よなかにがらのわるいおとこが、あんたのへやのどあやらかべやらをがんがん)

「夜中にガラの悪い男が、あんたの部屋のドアやら壁やらをガンガン

(けってたんだよ。しゃっきんかなんかでやくざととらぶったのかとおもった。)

蹴ってたんだよ。借金かなんかでヤクザとトラブったのかと思った。

(しばらくあんたのかおもみなかったし。でも、あんたももどってきたんだしね。)

暫くアンタの顔も見なかったし。でも、あんたも戻ってきたんだしね。

(せんさくはしないよ」かえろうとするおとなりのひとをひきとめてきいた。)

詮索はしないよ」帰ろうとするお隣の人を引き留めて聞いた。

(「それはいつごろのことですか」)

「それはいつ頃のことですか」

(「8がつのおわりごろと、せんしゅうくらいかな。せんしゅうのはしつこくけってたから、)

「8月の終わり頃と、先週くらいかな。先週のはしつこく蹴ってたから、

(「けいさつよぶぞ」っていってやったら、すぐひきあげたみたいだな。)

「警察呼ぶぞ」って言ってやったら、すぐ引き上げたみたいだな。

(・・・もしかして、しらなかった?」)

・・・もしかして、知らなかった?」

(おれがはんわらいなかんじでうなずいたら、おとなりのひとはむごんででていった。)

俺が半笑いな感じで頷いたら、お隣の人は無言で出て行った。

(おれもそく、へやをでた。それから、かぷせるほてるとかをてんてんとしてる。)

俺も即、部屋を出た。それから、カプセルホテルとかを転々としてる。

(じっかにまたもどるのいいんだろうけど、よくわからないわざわいをもたらしそうで、)

実家にまた戻るのいいんだろうけど、よくわからない災いをもたらしそうで、

(しょうじきこわい。とにかく、しょうそくふめいのゆうじんにはなしをきくのがかいけつのちかみちと、)

正直怖い。とにかく、消息不明の友人に話を聞くのが解決の近道と、

(がっこうのちじんとれんらくをとりあっているが、いまだおんしんふつう。どうしよう。)

学校の知人と連絡を取り合っているが、未だ音信不通。どうしよう。

(かずかげつがたち、しょうそくふめいのちじんが、じさつしていたことがはんめいしました。)

数か月が経ち、消息不明の知人が、自殺していた事が判明しました。

(おれはがっこうをやめました。あぱーともひきはらいました。)

俺は学校を辞めました。アパートも引き払いました。

(たぶん、これでおわりになるでしょう。ほんとうのさいごとして。)

多分、これで終わりになるでしょう。本当の最後として。

(おれがしょうそくふめいのゆうじんとなんとかれんらくをとろうとしていたとき、)

俺が消息不明の友人と何とか連絡を取ろうとしていた時、

(たよりにしていたやつがいた。そいつはゆうじんとふるくからのつきあいで、)

頼りにしていた奴がいた。そいつは友人と古くからの付き合いで、

(そいつならばゆうじんのいばしょのけんとうもつくんじゃないか、おれはそうおもってた。)

そいつならば友人の居場所の見当もつくんじゃないか、俺はそう思ってた。

(あぱーとからにどめのとうぼうで、かぷせるほてるにたいざいちゅう、)

アパートから二度目の逃亡で、カプセルホテルに滞在中、

(そいつからけいたいにでんわがあった。)

そいつから携帯に電話があった。

(「おまえにうそをついていたことを、まずあやまる。じつはおれは、おまえからゆうじんのことを)

「お前に嘘をついていた事を、まず謝る。実は俺は、お前から友人の事を

(とわれたときには、ゆうじんがじさつしたことをしっていた。)

問われた時には、友人が自殺した事を知っていた。

(しゃこでくびをつっていたそうだ。)

車庫で首を吊っていたそうだ。

(つやのばん、おれはおやごさんからよばれて、べっしつではなした。)

通夜の晩、俺は親御さんから呼ばれて、別室で話した。

(おやごさんは、「じさつするりゆうがどうしてもわからない」とおっしゃる。)

親御さんは、「自殺する理由がどうしても分からない」とおっしゃる。

(おれも「まったくおもいあたることがない」とこたえた。)

俺も「全く思い当たる事がない」と答えた。

(するとおやごさんは、けいたいでんわをおれにみせた。ゆうじんのけいたいでんわだ。)

すると親御さんは、携帯電話を俺に見せた。友人の携帯電話だ。

(にぎりしめたままいきたえていたそうだ。)

握りしめたまま息絶えていたそうだ。

(いしょらしきものもなかった。)

遺書らしきものもなかった。

(もしかすると、このけいたいになにかめっせーじがあるのではないか。)

もしかすると、この携帯に何かメッセージがあるのではないか。

(そうおやごさんはかんがえて、おれにかくにんしてくれとおっしゃった。)

そう親御さんは考えて、俺に確認してくれとおっしゃった。

(おれはちょっときみょうなかんじがしたが、おやごさんにきのうとそうさをせつめいしつつ、)

俺はちょっと奇妙な感じがしたが、親御さんに昨日と操作を説明しつつ、

(なかをみた。ろくおんもなし、めももなし。つぎにはっしんりれきをみた。)

中を見た。録音もなし、メモもなし。次に発信履歴を見た。

(そこにはまるまるまるというなまえがずらっとならんでいた。ぜんぶふざいだった。)

そこには〇〇〇という名前がずらっと並んでいた。全部不在だった。

(ゆうじんはたぶん、じさつするちょくぜんまで、まるまるまるにでんわをかけつづけていたんだろう。)

友人は多分、自殺する直前まで、○○〇に電話を掛け続けていたんだろう。

(りれきのぺーじがそのなまえでうめつくすまで。)

履歴のページがその名前で埋め尽くすまで。

(さらに、ちゃくしんりれきをみた。おまえのなまえがあった。)

更に、着信履歴を見た。お前の名前があった。

(おれはしょうじきに、おやごさんにせつめいした。)

俺は正直に、親御さんに説明した。

(おまえからゆうじんにでんわがあり、しばらくかいわしたあと、ゆうじんはまるまるまるにでんわをなんども)

お前から友人に電話があり、暫く会話した後、友人は〇〇〇に電話を何度も

(かけたがつながらなかった。そして、ゆうじんはまちがいをおかした。)

掛けたが繋がらなかった。そして、友人は間違いを犯した。

(そのあと、おまえがゆうじんになんどかでんわをかけた、とね。)

その後、お前が友人に何度か電話を掛けた、とね。

(おやごさんに、おまえのことと、まるまるまるについてきかれた。)

親御さんに、お前の事と、○○〇について聞かれた。

(おれはしっていることをぜんぶおしえた。)

俺は知っている事を全部教えた。

(まるまるまるはなんのことかはわからなかったから、わからない、とこたえた・・」)

○○〇は何の事かはわからなかったから、わからない、と答えた・・」

(こんびにでまちぼうけをくったあのばんに、すでにゆうじんはじさつしていたんだ。)

コンビニで待ちぼうけをくったあの晩に、既に友人は自殺していたんだ。

(まるまるまるといえば、あのちゅうかやのみせのなまえ。)

○○〇といえば、あの中華屋の店の名前。

(そいつのはなしはまだつづいたが、もうどうでもよくなった。)

そいつの話はまだ続いたが、もうどうでもよくなった。

(ただ、このまちにいるのはよくない。わざわいがやってくる。)

ただ、この街にいるのは良くない。災いがやってくる。

(だから、にげることにしたんだ。)

だから、逃げることにしたんだ。

(さようなら)

さようなら

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