夏目漱石「こころ」3-71

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投稿者投稿者たけしいいね1お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」3-71
下)先生と遺書
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。

オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3:滲み透る(しみとおる)
13:貫ぬいていました(つらぬいていました)
29:午食(ひるめし)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今回もほどほどの長さになっております。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 8835 8.9 99.0% 184.6 1646 15 32 2024/08/21
2 ヤス 7507 7.9 95.2% 210.6 1664 83 32 2024/10/31
3 BEASTななせ 6914 S++ 7.3 94.6% 232.7 1706 97 32 2024/10/23
4 デコポン 6426 S 6.6 97.2% 249.9 1652 46 32 2024/09/28
5 すもさん 6311 S 6.4 97.3% 266.8 1731 47 32 2024/10/06

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問題文

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(しかしそのさきをどうしようというふんべつはまるでおこりません。)

然しその先をどうしようという分別はまるで起りません。

(おそらくおこるだけのよゆうがなかったのでしょう。)

恐らく起るだけの余裕がなかったのでしょう。

(わたくしはわきのしたからでるきみのわるいあせがしゃつにしみとおるのを)

私は腋の下から出る気味のわるい汗が襯衣に滲み透るのを

(じっとがまんしてうごかずにいました。)

凝と我慢して動かずにいました。

(けいはそのあいだいつものとおりおもいくちをきっては、)

Kはその間何時もの通り重い口を切っては、

(ぽつりぽつりとじぶんのこころをうちあけていきます。)

ぽつりぽつりと自分の心を打ち明けて行きます。

(わたくしはくるしくってたまりませんでした。)

私は苦しくって堪りませんでした。

(おそらくそのくるしさは、おおきなこうこくのように、)

恐らくその苦しさは、大きな広告のように、

(わたくしのかおのうえにはっきりしたじではりつけられてあったろうとわたくしはおもうのです。)

私の顔の上に判然りした字で貼り付けられてあったろうと私は思うのです。

(いくらけいでもそこにきのつかないはずはないのですが、)

いくらKでも其所に気の付かない筈はないのですが、

(かれはかれで、じぶんのことにしゅうちゅうしているから、)

彼は彼で、自分の事に集中しているから、

(わたくしのひょうじょうなどにちゅういするひまがなかったのでしょう。)

私の表情などに注意する暇がなかったのでしょう。

(かれのじはくはさいしょからさいごまでおなじちょうしでつらぬいていました。)

彼の自白は最初から最後まで同じ調子で貫ぬいていました。

(おもくてのろいかわりに、)

重くて鈍い代りに、

(とてもよういなことではうごかせないというかんじをわたくしにあたえたのです。)

とても容易な事では動かせないという感じを私に与えたのです。

(わたくしのこころははんぶんそのじはくをきいていながら、)

私の心は半分その自白を聞いていながら、

(はんぶんどうしようどうしようというねんにたえずかきみだされていましたから、)

半分どうしようどうしようという念に絶えず掻き乱されていましたから、

(こまかいてんになるとほとんどみみへはいらないとどうようでしたが、)

細かい点になると殆んど耳へ入らないと同様でしたが、

(それでもかれのくちにだすことばのちょうしだけはつよくむねにひびきました。)

それでも彼の口に出す言葉の調子だけは強く胸に響きました。

(そのためにわたくしはまえいったくつうばかりでなく、)

そのために私は前いった苦痛ばかりでなく、

など

(ときにはいっしゅのおそろしさをかんずるようになったのです。)

ときには一種の恐ろしさを感ずるようになったのです。

(つまりあいてはじぶんよりつよいのだというきょうふのねんがきざしはじめたのです。)

つまり相手は自分より強いのだという恐怖の念が萌し始めたのです。

(けいのはなしがひととおりすんだとき、わたくしはなんともいうことができませんでした。)

Kの話が一通り済んだ時、私は何とも云う事が出来ませんでした。

(こっちもかれのまえにおなじいみのじはくをしたものだろうか、)

此方も彼の前に同じ意味の自白をしたものだろうか、

(それともうちあけずにいるほうがとくさくだろうか、)

それとも打ち明けずにいる方が得策だろうか、

(わたくしはそんなりがいをかんがえてだまっていたのではありません。)

私はそんな利害を考えて黙っていたのではありません。

(ただなにごともいえなかったのです。)

ただ何事も云えなかったのです。

(またいうきにもならなかったのです。)

又云う気にもならなかったのです。

(ひるめしのとき、けいとわたくしはむかいあわせにせきをしめました。)

午食の時、Kと私は向い合せに席を占めました。

(げじょにきゅうじをしてもらって、わたくしはいつにないまずいめしをすませました。)

下女に給仕をして貰って、私はいつにない不味い飯を済ませました。

(ふたりはしょくじちゅうもほとんどくちをききませんでした。)

二人は食事中も殆んど口を利きませんでした。

(おくさんとおじょうさんはいつかえるのだかわかりませんでした。)

奥さんと御嬢さんは何時帰るのだか分りませんでした。

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