怖い話《三つの選択》

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プレイ回数225難易度(4.7) 4011打 長文

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問題文

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(きょうはえいぷりるふーるだ。)

今日はエイプリルフールだ。

(とくにすることもなかったぼくらは、いつものようにぼくのへやにあつまると)

特にすることもなかった僕らは、いつものように僕の部屋に集まると

(てきとうにびーるをのみはじめた。)

適当にビールを飲み始めた。

(きょうはえいぷりるふーるだったので、たいくつなぼくらはひとつのげーむをおもいついた。)

今日はエイプリルフールだったので、退屈な僕らは一つのゲームを思いついた。

(うそをつきながらしゃべる。そしてそれをみなできいてさけのさかなにする。)

嘘をつきながら喋る。そしてそれを皆で聞いて酒の肴にする。

(くだらないげーむだ。だけど、そのくだらなさでよかった。)

くだらないゲームだ。だけど、そのくだらなさで良かった。

(とっぷばったーはぼくで、このなつなんぱしたおんながにんしんしてじつはいま、)

トップバッターは僕で、この夏ナンパした女が妊娠して実は今、

(いちじのちちなんだ、というはなしをした。)

一児の父なんだ、という話をした。

(はじめてしったのだが、うそをついてみろ、といわれたばあい、)

初めて知ったのだが、嘘をついてみろ、と言われた場合、

(ひとは100%のうそをつくことはできない。)

人は100%の嘘をつく事は出来ない。

(ぼくのばあい、なつになんぱはしていないけどとうじのかのじょはにんしんしたし、)

僕の場合、夏にナンパはしていないけど当時の彼女は妊娠したし、

(いちじのちちではないけれど、せなかにみずこはせおっている。)

一児の父ではないけれど、背中に水子は背負っている。

(どいつがどんなうそをついているかは、なかなかみぬけない。)

どいつがどんな嘘をついているかは、なかなか見抜けない。

(みぬけないからこそ、たのしい。)

見抜けないからこそ、楽しい。

(そうやってじゅんぐりにうそはすすみ、さいごのやつにばとんがまわった。)

そうやって順繰りに嘘は進み、最後の奴にバトンが回った。

(そいつは、ちびり、とびーるをなめるともうしわけなさそうにこういった。)

そいつは、ちびり、とビールを舐めると申し訳なさそうにこう言った。

(「おれはみんなみたいにきようにうそはつけないから、ひとつ、つくりばなしをするよ」)

「俺はみんなみたいに器用に嘘はつけないから、一つ、作り話をするよ」

(「なんだよそれ。しゅしとちがうじゃねえか」)

「なんだよそれ。趣旨と違うじゃねえか」

(「まあいいからきけよ。たいくつはさせないからさ」)

「まあいいから聞けよ。退屈はさせないからさ」

(そういってしせいをただしたかれは、では、とつぶやいてはなしをはじめた。)

そう言って姿勢を正した彼は、では、と呟いて話を始めた。

など

(ぼくはあさおきてきづくと、なにもないしろいへやにいた。)

僕は朝起きて気付くと、何もない白い部屋にいた。

(どうしてそこにいるのか、どうやってそこまできたのかはまったくおぼえていない。)

どうしてそこにいるのか、どうやってそこまで来たのかは全く覚えていない。

(ただ、めをさましてみたらぼくはそこにいた。)

ただ、目を覚ましてみたら僕はそこにいた。

(しばらくぼうぜんとしながらじょうきょうをはあくできないままでいたんだけど、)

暫く呆然としながら状況を把握できないままでいたんだけど、

(きゅうにてんじょうのあたりからこえがひびいた。)

急に天井の辺りから声が響いた。

(ふるいすぴーかーだったんだろうね、のいずがかかったへんなこえだった。)

古いスピーカーだったんだろうね、ノイズがかかった変な声だった。

(こえはこういった。)

声はこう言った。

(「これからすすむみちはじんせいのみちでありにんげんのごうをあゆむみち。)

「これから進む道は人生の道であり人間の業を歩む道。

(せんたくとくとうとけつだんのみをあたえる。)

選択と苦闘と決断のみを与える。

(あるくみちはおおくしてひとつ、けっしてむじゅんをあゆむことなく」)

歩く道は多くして一つ、決して矛盾を歩むことなく」

(って。で、そこではじめてきづいたんだけどぼくのせなかのがわにはどあがあったんだ。)

って。で、そこで初めて気づいたんだけど僕の背中の側にはドアがあったんだ。

(よこにあかいべったりしたもじで「すすめ」ってかいてあった。)

横に赤いべったりした文字で「進め」って書いてあった。

(「みっつあたえます。)

「三つ与えます。

(ひとつ。みぎてのてれびをこわすこと。)

ひとつ。右手のテレビを壊す事。

(ふたつ。ひだりてのひとをころすこと。)

ふたつ。左手の人を殺す事。

(みっつ。あなたがしぬこと。)

みっつ。貴方が死ぬ事。

(ひとつめをえらべば、でぐちにちかづきます。)

ひとつめを選べば、出口に近づきます。

(あなたとひだりてのひとはかいほうされ、そのかわりかれらはしにます。)

貴方と左手の人は開放され、その代わり彼らは死にます。

(ふたつめをえらべば、でぐちにちかづきます。)

ふたつめを選べば、出口に近づきます。

(そのかわりひだりてのひとのみちはおわりです。)

その代わり左手の人の道は終わりです。

(みっつめをえらべば、ひだりてのひとはかいほうされ、おめでとう、)

みっつめを選べば、左手の人は開放され、おめでとう、

(あなたのみちはおわりです」)

貴方の道は終わりです」

(めちゃくちゃだよ。どれをえらんでもあまりにすくいがないじゃないか。)

めちゃくちゃだよ。どれを選んでもあまりに救いがないじゃないか。

(ばからしいはなしだよ。でもそのじょうきょうをばからしいなんておもうことはできなかった。)

馬鹿らしい話だよ。でもその状況を馬鹿らしいなんて思う事は出来なかった。

(それどころかぼくはきょうふでがたがたとふるえた。)

それどころか僕は恐怖でガタガタと震えた。

(それくらいあそこのふんいきはいようで、うむをいわせないものがあった。)

それくらいあそこの雰囲気は異様で、有無を言わせないものがあった。

(そしてぼくはかんがえた。どこかのみしらぬたすうのいのちか、)

そして僕は考えた。どこかの見知らぬ多数の命か、

(すぐそばのみしらぬひとつのいのちか、いちばんちかくのよくしるいのちか。)

すぐそばの見知らぬ一つの命か、一番近くの良く知る命か。

(すすまなければかくじつにしぬ。)

進まなければ確実に死ぬ。

(それは「みっつめ」のせんたくになるんだろうか。いやだ。)

それは「みっつめ」の選択になるんだろうか。嫌だ。

(なにもわからないまましにたくない。)

何も分からないまま死にたくない。

(ひとつのいのちかおおくのいのちか?そんなものは、くらべるまでもない。)

一つの命か多くの命か?そんなものは、比べるまでもない。

(ねぶくろのわきには、おおぶりのなたがあった。)

寝袋の脇には、大ぶりの鉈があった。

(ぼくはしずかになたをてにとると、ゆっくりふりあげ)

僕は静かに鉈を手に取ると、ゆっくり振り上げ

(うごかないいもむしのようなねぶくろにむかってなたをふりおろした。)

動かない芋虫のような寝袋に向かって鉈を振り下ろした。

(ぐちゃ。にぶいおとが、かんかくが、つたわる。)

ぐちゃ。鈍い音が、感覚が、伝わる。

(つぎのどあがひらいたけはいはない。もいちどなたをふるう。)

次のドアが開いた気配はない。も一度鉈を振るう。

(ぐちゃ。かおのみえないとくめいせいがざいあくかんをまひさせる。)

ぐちゃ。顔の見えない匿名性が罪悪感を麻痺させる。

(もういちどなたをふりあげたところで、かちゃり、とおとがしてどあがひらいた。)

もう一度鉈を振り上げたところで、かちゃり、と音がしてドアが開いた。

(みぎてのてれびのがめんからは、いろのないひとみをしたがきがぎょろりとしためで)

右手のテレビの画面からは、色のない瞳をした餓鬼がぎょろりとした眼で

(こちらをのぞきかえしていた。)

こちらを覗き返していた。

(つぎのへやにはいると、みぎてにはきゃくせんのもけい、ひだりてにはおなじようにねぶくろがあった。)

次の部屋に入ると、右手には客船の模型、左手には同じように寝袋があった。

(ゆかにはやはりがみがおちてて、そこにはこうあった。)

床にはやはり紙が落ちてて、そこにはこうあった。

(「みっつあたえます。)

「三つ与えます。

(ひとつ。みぎてのきゃくせんをこわすこと。)

ひとつ。右手の客船を壊す事。

(ふたつ。ひだりてのねぶくろをもやすこと。)

ふたつ。左手の寝袋を燃やす事。

(みっつ。あなたがしぬこと。)

みっつ。貴方が死ぬ事。

(ひとつめをえらべば、でぐちにちかづきます。)

ひとつめを選べば、出口に近づきます。

(あなたとひだりてのひとはかいほうされ、そのかわりきゃくせんのじょうきゃくはしにます。)

貴方と左手の人は開放され、その代わり客船の乗客は死にます。

(ふたつめをえらべば、でぐちにちかづきます。)

ふたつめを選べば、出口に近づきます。

(そのかわりひだりてのひとのみちはおわりです。)

その代わり左手の人の道は終わりです。

(みっつめをえらべば、ひだりてのひとはかいほうされ、おめでとう、)

みっつめを選べば、左手の人は開放され、おめでとう、

(あなたのみちはおわりです」)

貴方の道は終わりです」

(しこうやかんじょうは、もはやかんぜんにまひしていた。)

思考や感情は、もはや完全に麻痺していた。

(ぼくはなかばきかいてきにねぶくろわきのけんじゅうをひろいげきてつをおこすと、)

僕は半ば機械的に寝袋脇の拳銃を拾い撃鉄を起こすと、

(すぐさまひとさしゆびにちからをこめた。)

すぐさま人差し指に力を込めた。

(ぱん、かわいたおとがした。ぱん、ぱん、ぱん、ぱん、ぱん。)

ぱん、乾いた音がした。ぱん、ぱん、ぱん、ぱん、ぱん。

(りぼるばーしきのけんじゅうは6はつでそらになった。)

リボルバー式の拳銃は6発で空になった。

(はじめてあつかったけんじゅうは、こんびにでかいものをするよりもてがるだったよ。)

初めて扱った拳銃は、コンビニで買い物をするよりも手軽だったよ。

(どあにむかうと、かぎはすでにひらいていた。)

ドアに向かうと、鍵は既に開いていた。

(なんぱつめでねぶくろがしんだのかはしりたくもなかった。)

何発目で寝袋が死んだのかは知りたくもなかった。

(さいごのへやはなにもないへやだった。)

最後の部屋は何もない部屋だった。

(おもわずぼくはえっ、とこえをもらしたけど、)

思わず僕はえっ、と声を洩らしたけど、

(ここはでぐちなのかもしれないとおもうとすこしあんどした。)

ここは出口なのかもしれないと思うと少し安堵した。

(やっとでられる。そうおもってね。)

やっと出られる。そう思ってね。

(するとふたたびあたまのうえからこえがきこえた。)

すると再び頭の上から声が聞こえた。

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