怖い話《三つの選択》2

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(「さいごのとい。)

「最後の問い。

(さんにんのにんげんとそれをのぞいたぜんせかいのにんげん。そして、きみ。)

三人の人間とそれを除いた全世界の人間。そして、君。

(ころすとしたら、なにをえらぶ」)

殺すとしたら、何を選ぶ」

(ぼくはなにもかんがえることなく、だまっていまきたみちをゆびさした。)

僕は何も考えることなく、黙って今来た道を指差した。

(するとまた、あたまのうえからこえがした。)

するとまた、頭の上から声がした。

(「おめでとう。きみはむじゅんなくみちをえらぶことができた。)

「おめでとう。君は矛盾なく道を選ぶ事が出来た。

(じんせいとはせんたくのれんぞくであり、とくめいのこうふくのうらにはとくめいのふこうがあり、)

人生とは選択の連続であり、匿名の幸福の裏には匿名の不幸があり、

(とくめいのなまのためにとくめいのしがある。)

匿名の生の為に匿名の死がある。

(ひとつのいのちはちきゅうよりもおもくない。)

一つの命は地球よりも重くない。

(きみはそれをしょうめいした。)

君はそれを証明した。

(しかしそれはけっしていのちのおもさをひていすることはではない。)

しかしそれは決して命の重さを否定する事はではない。

(さいごに、ひとつひとつのいのちがそれだけおもいのかをかんじてもらう。)

最後に、一つ一つの命がそれだけ重いのかを感じてもらう。

(でぐちはひらいた。おめでとう。おめでとう。」)

出口は開いた。おめでとう。おめでとう。」

(ぼくはぼうっとそのこえをきいて、あんしんしたような、きょだつしたようなかんじをうけた。)

僕はぼうっとその声を聞いて、安心したような、虚脱したような感じを受けた。

(とにかくぜんしんからいっきにちからがぬけ、ふらふらになりながらさいごのどあをあけた。)

とにかく全身から一気に力が抜け、フラフラになりながら最後のドアを開けた。

(ひかりのふりそそぐまぶしいへや、めがくらみながらすすむと、)

光の振り注ぐ眩しい部屋、目がくらみながら進むと、

(あしのこつんとなにかがあたった。)

足のこつんと何かが当たった。

(みっつのいえいがあった。)

三つの遺影があった。

(ちちと、ははと、おとうとのいえいが。)

父と、母と、弟の遺影が。

(これで、おしまい」)

これで、おしまい」

など

(かれのはなしがおわったとき、ぼくらはつばものみこめないくらいきんちょうしていた。)

彼の話が終わった時、僕らは唾も呑み込めない位緊張していた。

(こいつのこのはなしはなになんだろう。)

こいつのこの話は何なんだろう。

(とくもいわれぬはくりょくはなになんだろう。)

特も言われぬ迫力は何なんだろう。

(そこにいるだれもが、ぬらりとしたきみのわるいかんかくにとらわれた。)

そこにいる誰もが、ぬらりとした君の悪い感覚に囚われた。

(ぼくは、びーるをぐっとのみほすと、いきおいをつけてこういった。)

僕は、ビールをグッと飲み干すと、勢いをつけてこう言った。

(「・・・んなきみのわるいはなしはやめろよ!たのしくうそのはなしをしよーぜ!)

「・・・んな気味の悪い話はやめろよ!楽しく嘘の話をしよーぜ!

(ほら、おまえもやっぱりなにかうそついてみろよ!」)

ほら、お前もやっぱり何か嘘ついてみろよ!」

(そういうとかれは、こうかくをつりあげただけのぶきみなえみをみせた。)

そういうと彼は、口角を釣り上げただけの不気味な笑みを見せた。

(そのひょうじょうに、からだのそこからみぶるいするようなきょうふをおぼえた。)

その表情に、体の底から身震いするような恐怖を覚えた。

(そして、くちをあいた)

そして、口を開いた

(「もう、ついたよ」)

「もう、ついたよ」

(「え?」)

「え?」

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