数え歌

(ひとつひととしてまっとうにひといとおしみ、ひとにしつい)

一つ　人として真っ当に　人愛おしみ、人に失意

(ひとみにひをやどすあのひとうせしともしびゆめにひとしい)

瞳に灯を宿すあの人　失せしともしび　夢に等しい

(ふたつふたたびしんずるとてうだつあがらぬうたにぶらさがり)

二つ　再び信ずるとて　うだつあがらぬ詩にぶら下がり

(うらぎられたこともうらまぬふたんをわけあうふたりなら)

裏切られた事も恨まぬ　負担を分け合う二人なら

(みっつみみずばれのみかづきみをかくすとばりみつからぬように)

三つ　ミミズ腫れの三日月　身を隠すとばり　見つからぬように

(よっつよるべないよるにこそぼくのなまえをよんでくれ)

四つ　寄る辺ない夜にこそ　僕の名前を呼んでくれ

(ひとつふたつただかなしかったことたしざんしたりひきざんしたり)

一つ　二つ　ただ悲しかった事　足し算したり　引き算したり

(みっつよっつうれしかったことたしひきぜろでねむりたいよる)

三つ　四つ　嬉しかった事　足し引きゼロで眠りたい夜

(いつついつかのきずもいたむりくつではいえぬかんしょうと)

五つ　いつかの傷も痛む　理屈では癒えぬ感傷と

(こうかいですらいつくしむさりゆけばいたみすらいとおしい)

後悔ですら慈しむ　去り行けば痛みすら愛おしい

(むっつうつろうひともまちもむつしのうみべ、かこがうつる)

六つ　移ろう人も街も　むつ市の海辺、過去が映る

(むつうでいられぬひとのよにここだけはあらしもくつろぐ)

無痛でいられぬ人の世に　ここだけは嵐もくつろぐ

(ななつなつかしいあのひとのなはなつのたもとにながれてないた)

七つ　懐かしいあの人の名は　夏のたもとに流れて泣いた

(やっつやつぎばや、いそぐしきにかおもわすれたははのよびごえ)

八つ　矢継ぎ早、急ぐ四季に　顔も忘れた母の呼び声

(ひとつふたつわすれてしまいたいことたしざんしたりひきざんしたり)

一つ　二つ　忘れてしまいたい事　足し算したり　引き算したり

(みっつよっつけすにけせないことたしひきぜろでねむりたい)

三つ　四つ　消すに消せない事　足し引きゼロで眠りたい

(いつつむっつどうしようもなかったことくやでみたりひらきなおってみたり)

五つ　六つ　どうしようもなかった事　悔やんでみたり　開き直ってみたり

(ななつやっつあふれだしたおもいでぜんぶもってはいけないあすには)

七つ　八つ　溢れ出した思い出　全部持ってはいけない　明日には

(ここのつここまでと、ここからこもれびがこつこつ、のっくするへやから)

九つ　ここまでと、ここから　木漏れ日がコツコツ、ノックする部屋から

(とうのむかしにけしさったつもりとおざかるきのうとうとうさよなら)

とうの昔に消し去ったつもり　遠ざかる昨日　とうとうさよなら

(ひとつふたつはなれたくなかったひとたしざんしたりひきざんしたり)

一つ　二つ　離れたくなかった人　足し算したり　引き算したり

(みっつよっつあいしてくれたひとたしひきぜろでねむりたい)

三つ　四つ　愛してくれた人　足し引きゼロで眠りたい

(いつつむっつしんじきれなかったひとくやんでみたりひらきなおってみたり)

五つ　六つ　信じきれなかった人　悔やんでみたり　開き直ってみたり

(ななつやっつとめどないおもいでぜんぶもってはいけないあすには)

七つ　八つ　とめどない思い出　全部持っては行けない　明日には