夏目漱石「こころ」3-89

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夏目漱石「こころ」3-89
下)先生と遺書
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。

オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
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5:意嚮(いこう)
35:脱って(とって)
36:癒った(なおった)
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問題文

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(はなしはかんたんでかつめいりょうにかたづいてしまいました。)

話しは簡単でかつ明瞭に片付いてしまいました。

(さいしょからしまいまでにおそらくじゅうごふんとはかからなかったでしょう。)

最初から仕舞までに恐らく十五分とは掛らなかったでしょう。

(おくさんはなんのじょうけんももちださなかったのです。)

奥さんは何の条件も持ち出さなかったのです。

(しんるいにそうだんするひつようもない、あとからことわればそれでたくさんだといいました。)

親類に相談する必要もない、後から断ればそれで沢山だと云いました。

(ほんにんのいこうさえたしかめるにおよばないとめいげんしました。)

本人の意嚮さえたしかめるに及ばないと明言しました。

(そんなてんになると、がくもんをしたわたくしのほうが、)

そんな点になると、学問をした私の方が、

(かえってけいしきにこうでいするくらいにおもわれたのです。)

却って形式に拘泥する位に思われたのです。

(しんるいはとにかく、)

親類はとにかく、

(とうにんにはあらかじめはなしてしょうだくをえるのがじゅんじょらしいとわたくしがちゅういしたとき、)

当人にはあらかじめ話して承諾を得るのが順序らしいと私が注意した時、

(おくさんは「だいじょうぶです。)

奥さんは『大丈夫です。

(ほんにんがふしょうちのところへ、わたしがあのこをやるはずがありませんから」)

本人が不承知のところへ、私があの子を遣る筈がありませんから』

(といいました。)

と云いました。

(じぶんのへやにかえったわたくしは、ことのあまりにわけもなくしんこうしたのをかんがえて、)

自分の室に帰った私は、事のあまりに訳もなく進行したのを考えて、

(かえってへんなきもちになりました。)

却って変な気持ちになりました。

(はたしてだいじょうぶなのだろうかというぎねんさえ、)

果して大丈夫なのだろうかという疑念さえ、

(どこからかあたまのそこにはいこんできたくらいです。)

どこからか頭の底に這い込んで来た位です。

(けれどもだいたいのうえにおいて、わたくしのみらいのうんめいは、)

けれども大体の上に於て、私の未来の運命は、

(これでさだめられたのだというかんねんがわたくしのすべてをあらたにしました。)

これで定められたのだという観念が私の凡てを新たにしました。

(わたくしはひるごろまたちゃのまへでかけていって、おくさんに、)

私は午頃又茶の間へ出掛けて行って、奥さんに、

(けさのはなしをおじょうさんにいつつうじてくれるつもりかとたずねました。)

今朝の話を御嬢さんに何時通じてくれる積りかと尋ねました。

など

(おくさんは、じぶんさえしょうちしていれば、)

奥さんは、自分さえ承知していれば、

(いつはなしてもかまわなかろうというようなことをいうのです。)

いつ話しても構わなかろうというような事を云うのです。

(こうなるとなんだかわたくしよりもあいてのほうがおとこみたようなので、)

こうなると何だか私よりも相手の方が男みたようなので、

(わたくしはそれぎりひきこもうとしました。)

私はそれぎり引き込もうとしました。

(するとおくさんがわたくしをひきとめて、)

すると奥さんが私を引き留めて、

(もしはやいほうがきぼうならば、きょうでもいい、)

もし早い方が希望ならば、今日でも可い、

(けいこからかえってきたら、すぐはなそうというのです。)

稽古から帰って来たら、すぐ話そうと云うのです。

(わたくしはそうしてもらうほうがつごうがいいとこたえてまたじぶんのへやにかえりました。)

私はそうして貰う方が都合が好いと答えて又自分の室に帰りました。

(しかしだまってじぶんのつくえのまえにすわって、)

然し黙って自分の机の前に坐って、

(ふたりのこそこそばなしをとおくからきいているわたくしをそうぞうしてみると、)

二人のこそこそ話を遠くから聞いている私を想像して見ると、

(なんだかおちついていられないようなきもするのです。)

何だか落ち付いていられないような気もするのです。

(わたくしはとうとうぼうしをかぶっておもてへでました。)

私はとうとう帽子を被って表へ出ました。

(そうしてまたさかのしたでおじょうさんにいきあいました。)

そうして又坂の下で御嬢さんに行き合いました。

(なんにもしらないおじょうさんはわたくしをみておどろいたらしかったのです。)

何にも知らない御嬢さんは私を見て驚ろいたらしかったのです。

(わたくしがぼうしをとって「いまおかえり」とたずねると、)

私が帽子を脱って『今御帰り』と尋ねると、

(むこうではもうびょうきはなおったのかとふしぎそうにきくのです。)

向うではもう病気は癒ったのかと不思議そうに聞くのです。

(わたくしは「ええなおりました、なおりました」とこたえて、)

私は『ええ癒りました、癒りました』と答えて、

(ずんずんすいどうばしのほうへまがってしまいました。)

ずんずん水道橋の方へ曲ってしまいました。

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