夏目漱石「こころ」3-96

夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。
オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
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4:俯伏(うつぶし)
6:慄とした(ぞっとした)
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問題文
(よんじゅうきゅう)
四十九
(「わたくしはとつぜんけいのあたまをかかえるようにりょうてですこしもちあげました。)
「私は突然Kの頭を抱えるように両手で少し持ち上げました。
(わたくしはけいのしにがおがひとめみたかったのです。)
私はKの死顔が一目見たかったのです。
(しかしうつぶしになっているかれのかおを、こうしてしたからのぞきこんだとき、)
然し俯伏になっている彼の顔を、こうして下から覗き込んだ時、
(わたくしはすぐそのてをはなしてしまいました。)
私はすぐその手を放してしまいました。
(ぞっとしたばかりではないのです。)
慄としたばかりではないのです。
(かれのあたまがひじょうにおもたくかんぜられたのです。)
彼の頭が非常に重たく感ぜられたのです。
(わたくしはうえからいまさわったつめたいみみと、)
私は上から今触った冷たい耳と、
(へいぜいにかわらないごぶがりのこいかみのけをしばらくながめていました。)
平生に変らない五分刈の濃い髪の毛を少時眺めていました。
(わたくしはすこしもなくきにはなれませんでした。)
私は少しも泣く気にはなれませんでした。
(わたくしはただおそろしかったのです。)
私はただ恐ろしかったのです。
(そうしてそのおそろしさは、)
そうしてその恐ろしさは、
(めのまえのこうけいがかんのうをしげきしておこるたんちょうなおそろしさばかりではありません。)
眼の前の光景が官能を刺戟して起る単調な恐ろしさばかりではありません。
(わたくしはこつぜんとつめたくなったこのともだちによってあんじされたうんめいのおそろしさを)
私は忽然と冷たくなったこの友達によって暗示された運命の恐ろしさを
(ふかくかんじたのです。)
深く感じたのです。
(わたくしはなんのふんべつもなくまたわたくしのへやにかえりました。)
私は何の分別もなくまた私の室に帰りました。
(そうしてはちじょうのなかをぐるぐるまわりはじめました。)
そうして八畳の中をぐるぐる廻り始めました。
(わたくしのあたまはむいみでもとうぶんそうしてうごいていろとわたくしにめいれいするのです。)
私の頭は無意味でも当分そうして動いていろと私に命令するのです。
(わたくしはどうかしなければならないとおもいました。)
私はどうかしなければならないと思いました。
(どうじにもうどうすることもできないのだとおもいました。)
同時にもうどうする事も出来ないのだと思いました。
(ざしきのなかをぐるぐるまわらなければいられなくなったのです。)
座敷の中をぐるぐる廻らなければいられなくなったのです。
(おりのなかへいれられたくまのようなたいどで。)
檻の中へ入れられた熊の様な態度で。
(わたくしはときどきおくへいっておくさんをおこそうというきになります。)
私は時々奥へ行って奥さんを起そうという気になります。
(けれどもおんなにこのおそろしいありさまをみせてはわるいというこころもちがすぐわたくしをさえぎります。)
けれども女にこの恐ろしい有様を見せては悪いという心持がすぐ私を遮ります。
(おくさんはとにかく、)
奥さんはとにかく、
(おじょうさんをおどろかすことは、とてもできないというつよいいしがわたくしをおさえつけます。)
御嬢さんを驚ろかす事は、とても出来ないという強い意志が私を抑えつけます。
(わたくしはまたぐるぐるまわりはじめるのです。)
私はまたぐるぐる廻り始めるのです。
(わたくしはそのあいだにじぶんのへやのらんぷをつけました。)
私はその間に自分の室の洋燈を点けました。
(それからとけいをおりおりみました。)
それから時計を折々見ました。
(そのときのとけいほどらちのあかないおそいものはありませんでした。)
その時の時計程埒の明かない遅いものはありませんでした。
(わたくしのおきたじかんは、せいかくにわからないのですけれども、)
私の起きた時間は、正確に分らないのですけれども、
(もうよあけにまもなかったことだけはあきらかです。)
もう夜明に間もなかった事だけは明らかです。
(ぐるぐるまわりながら、そのよあけをまちこがれたわたくしは、)
ぐるぐる廻りながら、その夜明を待ち焦れた私は、
(えいきゅうにくらいよるがつづくのではなかろうかというおもいになやまされました。)
永久に暗い夜が続くのではなかろうかという思いに悩まされました。