怖い話《ペットに餌をあげないでください》
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問題文
(おれがしょうがっこうていがくねんのとき、ほうかごのあそびばはもっぱらしょうがっこうのこうていだった。)
俺が小学校低学年の時、放課後の遊び場は専ら小学校の校庭だった。
(じゅぎょうがおわると、そのままこうていでさっかーやどっじぼーる、)
授業が終わると、そのまま校庭でサッカーやドッジボール、
(けいどろやきっくべーすにきょうじていた。)
ケイドロやキックベースに興じていた。
(あそぶめんばーはひによってかわり、ちゅうがくねんやゆうじんのおとうとなど、)
遊ぶメンバーは日によって変わり、中学年や友人の弟など、
(あそんでいるあいてがだれだかしらないこともしばしばだった。)
遊んでいる相手が誰だか知らない事もしばしばだった。
(そのなかでも、いつもさんかするじょうれんはいた。そいつもそのひとりだった。)
その中でも、いつも参加する常連はいた。そいつもその一人だった。
(いえががっこうのちかくらしく、がっこうがおわってもかえらずに)
家が学校の近くらしく、学校が終わっても帰らずに
(こうていのぶらんこにのっておれたちをみていた。)
校庭のブランコに乗って俺達を見ていた。
(せんがほそく、てあしがふしばっている、いんきそうなやつだったが、)
線が細く、手足が節ばっている、陰気そうなやつだったが、
(とうじのおれたちはあそべるならだれでもよかったのか、)
当時の俺達は遊べるなら誰でも良かったのか、
(そいつにこえをかけるのがとことわだった。)
そいつに声を掛けるのが常だった。
(あそびにさそうと、からせきをするようにわらうようすがいんしょうてきだった。)
遊びに誘うと、空咳をするように笑う様子が印象的だった。
(ほうかごのこうていで、とちゅうでかえらずにさいごまであそぶそいつは、)
放課後の校庭で、途中で帰らずに最後まで遊ぶそいつは、
(まいにちははおやのむかえをまっていた。)
毎日母親の迎えを待っていた。
(ぱーとおわりなのか、なにかのせいふくでむかえにくるそいつのははおやはおれたちに、)
パート終わりなのか、何かの制服で迎えに来るそいつの母親は俺達に、
(ひとりひとりになまえをききながらかんしゃのいをしめすとともに、)
一人一人に名前を聞きながら感謝の意を示すとともに、
(ときおりみょうなことをいうときがあった。)
時折妙な事を言う時があった。
(「えさはあげないでね。」)
「エサはあげないでね。」
(なんでもそいつがいうには、そいつのいえでかっているぺっとを)
なんでもそいつが言うには、そいつの家で飼っているペットを
(おやがきびしくしつけているようだった、)
親が厳しく躾けているようだった、
(しょくじのかんりなど、それはもうごしゅうしんらしい。)
食事の管理など、それはもうご執心らしい。
(ぺっとときいてきょうみがわいたおれたちがみにいっていいかときいても、)
ペットと聞いて興味が湧いた俺達が見に行っていいかと聞いても、
(そいつはだまってくびをふるだけだった。)
そいつは黙って首を振るだけだった。
(なんどいってもことわられたおれたちはしだいにぺっとにたいするきょうみをなくし、)
何度言っても断られた俺達は次第にペットに対する興味を無くし、
(そのうちだれもわだいをだすことはなくなった。)
そのうち誰も話題を出す事はなくなった。
(あるひ、あそびなかまのひとりがたいりょうのだがしをもってきた。)
ある日、遊び仲間の一人が大量の駄菓子を持ってきた。
(めったにないさしいれのそんざいにかんきしたおれたちは、きまえのいいゆうじんのそんざいに)
滅多にない差し入れの存在に歓喜した俺達は、気前のいい友人の存在に
(かんしゃするとともに、そのばでいるぜんいんでだがしをわけあった。)
感謝すると共に、その場でいる全員で駄菓子を分け合った。
(さっきのそいつもそのばにいて、だがしのあじにひどくかんどうしているようすだった。)
さっきのそいつもその場にいて、駄菓子の味にひどく感動している様子だった。
(だがしもたべたことないのかよとみんなでわらいものにしたが、)
駄菓子も食べた事ないのかよとみんなで笑いものにしたが、
(それでもなおしあわせそうなそいつをみて、みんなでわけてよかったなとおもった。)
それでもなお幸せそうなそいつを見て、みんなで分けて良かったなと思った。
(たべおわったあと、そのひはながれでかいさんとなった。)
食べ終わった後、その日は流れで解散となった。
(そのひのよる、そいつのははおやがうちにきた。)
その日の夜、そいつの母親が家に来た。
(ひどくおこったようすだった。)
ひどく怒った様子だった。
(げんかんでおれのりょうしんがとりあったが、どうもはなしのようりょうをえないようで、)
玄関で俺の両親が取り合ったが、どうも話の要領を得ないようで、
(いいあらそうこえがりびんぐにいるおれにもきこえてきた。)
言い争う声がリビングにいる俺にも聞こえてきた。
(りょうしんはおれをひきあわすことをためらっていたが、)
両親は俺を引き合わす事を躊躇っていたが、
(おれもなにがあったのかときになってげんかんにむかった。)
俺も何があったのかと気になって玄関に向かった。
(そいつのははおやは、おれをみたとたん、)
そいつの母親は、俺を見た途端、
(みけんのすじをさらにふかくきざませておれになにかをつきつけた。)
眉間の筋を更に深く刻ませて俺に何かを突き付けた。
(ひるまのだがしのほうそうしだった。)
昼間の駄菓子の包装紙だった。
(それをおれにつきつけて、どきをはらんだひすてりっくなこえをはっする。)
それを俺に突き付けて、怒気を孕んだヒステリックな声を発する。
(なきごえのようでもあった。)
鳴き声のようでもあった。
(「えさをあげるなといったのに」)
「エサをあげるなといったのに」
(そのひからそいつをほうかごのこうていでみることはなくなった。)
その日からそいつを放課後の校庭で見る事はなくなった。
(がくねんもくらすもちがったから、がっこうにきているのかどうかもわからない。)
学年もクラスも違ったから、学校に来ているのかどうかも分からない。
(あのひのよる、ゆうじんたちのいえにもきたらしい。)
あの日の夜、友人達の家にも来たらしい。
(しゅうしひすてりーじょうたいだったようで、)
終始ヒステリー状態だったようで、
(なかにはじじょうがわからずけいさつをよんだおやもいたそうだ。)
中には事情が分からず警察を呼んだ親もいたそうだ。
(そしてあのひいらい、ほうかごにかしをもってくるやつもいなくなった。)
そしてあの日以来、放課後に菓子を持ってくる奴もいなくなった。