洒落怖《紙》

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プレイ回数104難易度(4.5) 2952打 長文

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問題文

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(ゆうじん、といってもいまはもとゆうじんのかなえには、すうねんまえにこいひとがいました。)

友人、といっても今は元友人のカナエには、数年前に恋人がいました。

(そのこいびとはととのったかおにだいきぎょうつとめ、こどもがふたりいるきこんしゃでした。)

その恋人は整った顔に大企業勤め、子供が二人いる既婚者でした。

(つまりはふりんかんけいでしたが、)

つまりは不倫関係でしたが、

(かなえはいつもうれしそうにかれのはなしをわたしにしていました。)

カナエはいつも嬉しそうに彼の話を私にしていました。

(そして、りゃくだつをくわだてていることも。)

そして、略奪を企てている事も。

(かれとかれのかぞくのすむこうきゅうまんしょんさえもうばうけいかく、)

彼と彼の家族の住む高級マンションさえも奪う計画、

(じぶんのそんざいはかれのおくさんにかくしとおせばいしゃりょうもたいしてはらわずにすむから)

自分の存在は彼の奥さんに隠し通せば慰謝料も大して払わずに済むから

(かれのざいさんにそうおおきなえいきょうはない、など。)

彼の財産にそう大きな影響はない、など。

(すこしはわたしにもかくせばいいのに、かのじょはわたしにすべてをかたっていたとおもいます。)

少しは私にも隠せばいいのに、彼女は私に全てを語っていたと思います。

(ねっとでしらべてつきとめたおくさんのしゃしんやぷろふぃーる、)

ネットで調べて突き止めた奥さんの写真やプロフィール、

(しごとのこうせきなどをみせてきては、)

仕事の功績などを見せてきては、

(そのそうめいなびじんとしかいえないようなおくさんをばかにしていました。)

その聡明な美人としか言えないような奥さんを馬鹿にしていました。

(かなえのがんぼう、というよりむきだしのよくぼうをまのあたりにするひびに、)

カナエの願望、というより剥き出しの欲望を目の当たりにする日々に、

(わたしはすっかりまいっていました。)

私はすっかり参っていました。

(ですが、かなえはとうじ、わたしがすんでいたいえのすぐそばのみせで)

ですが、カナエは当時、私が住んでいた家のすぐ傍の店で

(じえいぎょうをいとなんでいたため、そしてかなえのいんしつでひきょうなめんをしっていたため、)

自営業を営んでいた為、そしてカナエの陰湿で卑怯な面を知っていた為、

(おそろしく、かなえをさけることはできませんでした。)

恐ろしく、カナエを避ける事は出来ませんでした。

(そんなあるひ、わたしはこどもとおとずれたでぱーとのふーどこーとで、)

そんなある日、私は子供と訪れたデパートのフードコートで、

(かなえのかれとおくさん、こどもたちとそうぐうしました。)

カナエの彼と奥さん、子供達と遭遇しました。

(かれのしゃしんも、おくさんのしゃしんも、)

彼の写真も、奥さんの写真も、

など

(かなえにみせられていたのですぐにわかりました。)

カナエに見せられていたのですぐに分かりました。

(だれがみてもなかむつまじいかぞく。)

誰が見ても仲睦まじい家族。

(みんなえがおでたのしそうにしょくじをしていました。)

みんな笑顔で楽しそうに食事をしていました。

(あんなにやさしそうなおとうさんが、ふりんしているのか、こわいなぁ。)

あんなに優しそうなお父さんが、不倫しているのか、怖いなぁ。

(そんなことをかんがえながらこどもにごはんをたべさせていたら、)

そんな事を考えながら子供にご飯を食べさせていたら、

(てーぶるのはしにおいていたこどものちいさなぬいぐるみをおとしてしまいました。)

テーブルの端に置いていた子供の小さなぬいぐるみを落としてしまいました。

(すぐにひろおうとしたのですが、わたしよりさきにすっとてがのびてきました。)

すぐに拾おうとしたのですが、私より先にスッと手が伸びてきました。

(「ありがとうございます!すみません」)

「ありがとうございます!すみません」

(そういいながらあたまをあげると、そこにいたのはかれのおくさん。)

そう言いながら頭を上げると、そこにいたのは彼の奥さん。

(にっこりとしてぬいぐるみをわたしにわたしてくれた、そのかおがきれいでやさしきで、)

にっこりとしてぬいぐるみを私に渡してくれた、その顔が綺麗で優し気で、

(わたしは、むねがちくりといたみました。)

私は、胸がチクリと痛みました。

(あらためてへいせいをよそおいながら「ありがとうございました」とぬいぐるみをうけとると)

改めて平静を装いながら「ありがとうございました」とぬいぐるみを受け取ると

(おくさんはまたにっこりとやさしくほほえみ、ゆっくりとしたくちょうでわたしにいいました。)

奥さんはまたにっこりと優しく微笑み、ゆっくりとした口調で私に言いました。

(「かなえさんに「きをつけて」とおつたえくださいね」)

「カナエさんに「気をつけて」とお伝えくださいね」

(・・・いっきにちのけがひいてあたまがまっしろになり、なにもことばがでませんでした。)

・・・一気に血の気が引いて頭が真っ白になり、何も言葉が出ませんでした。

(そのちょくご、わたしはてのひらにぬいぐるみのかんしょくではないものをかんじました。)

その直後、私は手のひらにぬいぐるみの感触ではないものを感じました。

(えっ!?とおもったときにはだんしょうしながらたのしそうにさっていくかぞくのうしろすがた。)

えっ!?と思った時には談笑しながら楽しそうに去っていく家族の後ろ姿。

(しんぞうがばくばくとなり、てがふるえました。)

心臓がバクバクとなり、手が震えました。

(てをひろげ、ぬいぐるみをもうかたほうのてでどかすと、)

手を広げ、ぬいぐるみをもう片方の手でどかすと、

(てのひらにのこっていたのはちいさく、ぎちっとたたまれたすうまいのかみ。)

手のひらに残っていたのは小さく、ぎちっと畳まれた数枚の紙。

(こわい、とおもいつつもきになるので、すぐにそれをひろげました。)

怖い、と思いつつも気になるので、すぐにそれを広げました。

(そこにちいさなかつじでかかれていたのはかなえのじゅうしょ、でんわばんごう、がくれき、)

そこに小さな活字で書かれていたのはカナエの住所、電話番号、学歴、

(しょくれき、かぞくこうせい、かぞくのしょくぎょうやねんれい、けいたいばんごうにじゅうしょ。)

職歴、家族構成、家族の職業や年齢、携帯番号に住所。

(かなえのゆうじんちじん、そしてこきゃくのりすともかかれていて、)

カナエの友人知人、そして顧客のリストも書かれていて、

(それにはそれぞれのけいたいばんごうとじゅうしょも。)

それにはそれぞれの携帯番号と住所も。

(わたしのなまえもありました。けいたいばんごうも、じゅうしょも。)

私の名前もありました。携帯番号も、住所も。

(あれほどしんぞうがばくんばくんとなったのははじめてのことでした。)

あれほど心臓がばくんばくんと鳴ったのは初めての事でした。

(かなえには、このことはつたえていません。)

カナエには、この事は伝えていません。

(かげでわたしをわるくいっていたことも、わたしのおっとにもてをだそうとしていたことも、)

陰で私を悪く言っていた事も、私の夫にも手を出そうとしていた事も、

(しっていたからです。)

知っていたからです。

(かなえとかれのかんけいは、かなえがおくさんのことをあまりにひどくわるくいうので)

カナエと彼の関係は、カナエが奥さんの事をあまりに酷く悪く言うので

(かれがいかって、それでおわったようです。)

彼が怒って、それで終わったようです。

(ひっこしたわたしはあたらしいじゅうしょはかなえにはしらせず、ちゃくしんきょひもしています。)

引っ越した私は新しい住所はカナエには知らせず、着信拒否もしています。

(かみは、まだもっています。)

紙は、まだ持っています。

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