洒落怖《売家》
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問題文
(とうきょうのあるじゅうたくがいにすんでいたときのはなしです。)
東京のある住宅街に住んでいた時の話です。
(わたしはつまととうじさんさいのむすことうまれたばかりのむすめのよにんで)
私は妻と当時三歳の息子と生まれたばかりの娘の四人で
(ちんたいのあぱーとにすんでいました。)
賃貸のアパートに住んでいました。
(あぱーとのまえはせまいろじになっており、)
アパートの前は狭い路地になっており、
(そのろじをはさむかたちでいっけんやがたっていました。)
その路地を挟む形で一軒家が立っていました。
(あるひ、むすことふたりで、そのいえのまえのろじをあるいていると、)
ある日、息子と二人で、その家の前の路地を歩いていると、
(ふいにむすこがいっけんやのにかいにあかいひとがいるといいだしました。)
不意に息子が一軒家の二階に赤い人がいると言い出しました。
(わたしたちがすんでいるあぱーとがしょうめんにあるせいか、)
私達が住んでいるアパートが正面にあるせいか、
(そのいえはじょうじかーてんがしまっているのですが、そのひかーてんがひらいており、)
その家は常時カーテンが閉まっているのですが、その日カーテンが開いており、
(ろじからみえるまどべにあかいひとがたってこちらをみているというのです。)
路地から見える窓辺に赤い人が立って此方を見ていると言うのです。
(むすこにうながされてわたしもいっけんやのにかいをみあげたのですが、)
息子に促されて私も一軒家の二階を見上げたのですが、
(ひとのようなものはみえません。)
人のようなものは見えません。
(きみがわるかったのですが、たしかめようもなく、)
気味が悪かったのですが、確かめようもなく、
(そのひはてきとうにむすこをあしらっていえにはいるしかありませんでした。)
その日は適当に息子をあしらって家に入るしかありませんでした。
(むすこがあかいひとがみえるといったすうじつごのよるです。)
息子が赤い人が見えると言った数日後の夜です。
(わたしはものおととこえにめをさましました。)
私は物音と声に目を覚ましました。
(あのいっけんやから、どせいとなにかをひらてでうつようなおとがきこえてきます。)
あの一軒家から、怒声と何かを平手で打つような音が聞こえてきます。
(あのいっけんやのおくさんとおもわれるじょせいがこどもをはげしくしかっているおとのようでした。)
あの一軒家の奥さんと思われる女性が子供を激しく叱っている音の様でした。
(じかんはごぜんにじをまわっており、まともなようすではありません。)
時間は午前二時を回っており、まともな様子ではありません。
(しばらくするとだれかがつうほうしたのかぱとかーがきて、そのひはおさまったようでした。)
暫くすると誰かが通報したのかパトカーが来て、その日は収まったようでした。
(そのあともたびたび、そのようなしかりかたをしているようすで、)
その後も度々、そのような叱り方をしている様子で、
(けいさつがくることもなんかいかありました。)
警察が来る事も何回かありました。
(そんなじょうたいがすうかげつたったあと、いっけんやのかぞくはどこかにひっこしていき、)
そんな状態が数か月経った後、一軒家の家族はどこかに引っ越していき、
(そのいえはうりにだされました。)
その家は売りに出されました。
(まわりのそうばやそのいっけんやのちくねんすうとしきちのひろさをかんがえると)
周りの相場やその一軒家の築年数と敷地の広さを考えると
(うりねはおどろくほどやすいものでした。)
売値は驚くほど安いものでした。
(むすこがあかいひとをみたというけんや、まえのじゅうにんのことをかんがえると)
息子が赤い人を見たという件や、前の住人の事を考えると
(すこしきがひけるぶぶんもありましたが、ちょうどいえをかおうとおもっていたわたしは)
少し気が引ける部分もありましたが、ちょうど家を買おうと思っていた私は
(ないけんをさせてもらうことにしました。)
内見をさせて貰う事にしました。
(ふどうさんやにきてもらい、つまとこどもふたりでそのいえにはいろうとしたところ、)
不動産屋に来てもらい、妻と子供二人でその家に入ろうとしたところ、
(むすこがひがついたようにはいりたくないとなきだしました。)
息子が火がついたように入りたくないと泣き出しました。
(そのままふどうさんやにかえってもらうのももうしわけないとおもい、)
そのまま不動産屋に帰ってもらうのも申し訳ないと思い、
(こどもふたりはつまにまかせ、わたしひとりでないけんをすることにしました。)
子供二人は妻に任せ、私一人で内見をする事にしました。
(こだわってたてたのか、へやのひろさやまどりはすばらしく、)
こだわって建てたのか、部屋の広さや間取りは素晴らしく、
(いっかいのへやをひととおりみてまわったころには、こうにゅうにかなりまえむきになっていました。)
一階の部屋を一通り見て回った頃には、購入にかなり前向きになっていました。
(しかし、にかいにあがったとたん、とてもすめたものではないとかんじました。)
しかし、二階に上がった途端、とても住めたものではないと感じました。
(かいだんをあがるとろうかをはさんでさゆうにすうへやならんでいるのですが、)
階段を上がると廊下を挟んで左右に数部屋並んでいるのですが、
(そのひとへやからきょうれつにいやなけはいをかんじたのです。)
その一部屋から強烈に嫌な気配を感じたのです。
(そこはいちてきにろじからみえるむすこがあかいひとがみえるといったへやでした。)
そこは位置的に路地から見える息子が赤い人が見えると言った部屋でした。
(そのへやのとびらのむこうから、こちらにがいをあたえたくてたまらないような)
その部屋の扉の向こうから、此方に害を与えたくてたまらない様な
(むきだしのあくいをかんじ、そのへやだけはなかをみることができませんでした。)
剥き出しの悪意を感じ、その部屋だけは中を見る事が出来ませんでした。
(けっきょく、そのあとすぐにべつのとちにいえをかい、にねんほどたちました。)
結局、その後すぐに別の土地に家を買い、二年程経ちました。
(さいきん、すんでいたあぱーとのちかくによるようじがあり、)
最近、住んでいたアパートの近くに寄る用事があり、
(なつかしさもあったのでいっかよにんでいってみたのですが、)
懐かしさもあったので一家四人で行ってみたのですが、
(あのいっけんやはまだうれていないようすでうりねはさらにさがっていました。)
あの一軒家はまだ売れていない様子で売値は更に下がっていました。
(さんさいになったしたのむすめがいっけんやをみて)
三歳になった下の娘が一軒家を見て
(「あのいえのひと、みんなあかいね」といったのをきいて、)
「あの家の人、みんな赤いね」と言ったのを聞いて、
(あのいえはこれからもうれることはないのだろうとおもいました。)
あの家はこれからも売れる事はないのだろうと思いました。