アンマー

(しょかのはれたひるさがり)

初夏の晴れた昼下がり

(わたしはうまれたとききました)

私は生まれたと聞きました

(ははおやのよろこびようはたいへんだったとききました)

母親の喜び様は大変だったと聞きました

(ただまっすぐしんじるみちをあゆんでほしいとねがいこめて)

「ただ真っ直ぐ信じる道を歩んでほしい」と願いこめて

(なやみぬいたすえにこのなをわたしにつけたとききました)

悩み抜いたすえに　この名を私に付けたと聞きました

(わがやはあのころからやはりゆうふくなほうではなく)

我が家はあの頃からやはり裕福な方ではなく

(ともだちのおもちゃやじてんしゃをうらやましがってばかり)

友達のオモチャや自転車を羨ましがってばかり

(すこしこまったようなかおで)

少し困ったような顔で

(ごめんねとくりかえすははのとなりで)

「ごめんね」と繰り返す母のとなりで

(いつまでもいつまでもないたのをおぼえてます)

いつまでもいつまでも泣いたのを覚えてます

(あんまーよあなたはわたしのすべてをゆるし)

アンマーよ　アナタは私の全てを許し

(すべてをしんじすべてをつつみこんで)

全てを信じ全てを包み込んで

(おしみもせずになにもかもを)

惜しみもせずに　何もかもを

(わたしのうえにそそぎつづけてきたのに)

私の上に注ぎ続けてきたのに

(あんまーよわたしはそれでもきづかずに)

アンマーよ　私はそれでも気付かずに

(おもいのままにすごしてきたのでした)

思いのままに過ごしてきたのでした

(つよさのいみをはきちがえて)

「強さ」の意味をはき違えて

(けんかやわるさばかりをくりかえし)

ケンカや悪さばかりをくり返し

(かってきままにあそびまわる)

勝手気ままに遊びまわる

(ほんとうにろくでもないわたしが)

本当にロクでもない私が

(まよなかのしずけさのなか)

真夜中の静けさの中

(しのびあしでうちにかえったときも)

忍び足で家に帰ったときも

(せまいしょくたくのうえには)

狭い食卓の上には

(ちゃわんがならべられていました)

茶碗が並べられていました

(じぶんのよわさにめをそむけ)

自分の弱さに目を背け

(いいわけやごたくをならべ)

言い訳やゴタクを並べ

(なにもせずにただまいにちをだらだらとすごしつづけ)

何もせずにただ毎日をだらだらと過ごし続け

(あびるほどにのんだわたしがあけがたねむりにおちるころ)

浴びる程に飲んだ私が明け方眠りに落ちる頃

(まだうすぐらいあさのまちへはははでていくのでした)

まだ薄暗い朝の街へ母は出て行くのでした

(あんまーよわたしはあなたにいってはいけない)

アンマーよ　私はアナタに言ってはいけない

(けっしてくちにしてはいけないことばを)

決して口にしてはいけない言葉を

(かげんもせずになげつけては)

加減もせずに投げつけては

(あなたのこころをふみにじったのに)

アナタの心を踏みにじったのに

(あんまーよあなたはそれでもかわることなく)

アンマーよ　アナタはそれでも変わることなく

(わたしをあいしてくれました)

私を愛してくれました

(こもれびのようなぬくもりで)

木漏れ日のようなぬくもりで

(ふかいうみのようなやさしさで)

深い海の様な優しさで

(ぜんぶぜんぶわたしのすべてをつつみこんだ)

全部　全部　私の全てを包み込んだ

(あなたのせなかにおわれながら)

アナタの背中に負われながら

(ながめたやえせだけのゆうひは)

眺めた八重瀬岳の夕陽は

(きょうもかわらずあかねいろにまちをそめる)

今日も変わらず　茜色に街を染める

(どがすぎるほどのがんこさも)

度が過ぎるほどの頑固さも

(わがままもひきょうなうそもすべて)

わがままも卑怯な嘘もすべて

(すべてをつつみこむようなあいがそこにはありました)

すべてを包み込むような愛がそこにはありました

(あなたのもとにうまれおちたことは)

アナタのもとに生まれ落ちたことは

(こんなにもしあわせだった)

こんなにも幸せだった

(いまごろようやくきづきました)

今頃ようやく気付きました

(こんなばかなわたしだから)

こんな馬鹿な私だから

(はるさきのおだやかなあさにあたらしいいのちがうまれました)

春先の穏やかな朝に新しい命が生まれました

(あなたのようによくわらうほうせきみたいなおんなのこ)

アナタの様に良く笑う宝石みたいな女の子

(やさしさのなかにりりしさをひめたひとになるようにとねがい)

「優しさの中に凛々しさを秘めた人」になるようにと願い

(あなたのいちばんすきな)

アナタの一番好きな

(はなのなまえをつけました)

花の名前を付けました