洒落怖《なんでいきてんの》
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問題文
(こうこうせいのときのはなしだ。)
高校生の時の話だ。
(ていきこうさがおわったかいほうかんで、ともだちといえでげーむをしていた。)
定期考査が終わった解放感で、友達と家でゲームをしていた。
(ふだんはぶかつやらべんきょうやらでいそがしいけど、てすときかんちゅうはぶかつもやすみになる。)
普段は部活やら勉強やらで忙しいけど、テスト期間中は部活も休みになる。
(だから、てすとがおわったひはいつもこうやってはねをのばしていた。)
だから、テストが終わった日はいつもこうやって羽根を伸ばしていた。
(とはいえおれはつかれていた。)
とはいえ俺は疲れていた。
(てすとぜんじつまでまいにちよるおそくまでいちやづけしていたせいで、ほとんどねていない。)
テスト前日まで毎日夜遅くまで一夜漬けしていたせいで、ほとんど寝ていない。
(ひさびさにげーむをしたいきもちはあったが、ねぶりきがかってとうとうげんかいがこた。)
久々にゲームをしたい気持ちはあったが、眠気が勝ってとうとう限界が来た。
(「ごめん、すこしだけねるわ」)
「ごめん、少しだけ寝るわ」
(そういって、ゆかにころがしていたつうがくかばんをまくらかわりにしてよこになった。)
そう言って、床に転がしていた通学鞄を枕代わりにして横になった。
(そこでゆめをみた。)
そこで夢を見た。
(めがさめると、おれはでんしゃのなかにいた。)
目が覚めると、俺は電車の中にいた。
(しゅういのざせきにはぎっしりとじょうきゃくがすわっているけど、ぜんいんがうつむいている。)
周囲の座席にはぎっしりと乗客が座っているけど、全員が俯いている。
(だれもかおをあげようとしないし、ひょうじょうもみえない。)
誰も顔を上げようとしないし、表情も見えない。
(ぶきみなほどしずかで、しゃりょうぜんたいにどんよりとしたくうきがただよっていた。)
不気味なほど静かで、車両全体にどんよりとした空気が漂っていた。
(ふしぎと、おれはすぐに「これはゆめだ」ときづいた。)
不思議と、俺はすぐに「これは夢だ」と気付いた。
(さいきんめいせきむのみかたってどうがをみたからかな、なんだかちょっかんてきにわかったんだ。)
最近明晰夢の見方って動画を見たからかな、何だか直感的に分かったんだ。
(「めいせきむか・・・なら、すこしたのしむか」)
「明晰夢か・・・なら、少し楽しむか」
(そうおもいながら、とくになにもせず、ただでんしゃにゆられていた。)
そう思いながら、特に何もせず、ただ電車に揺られていた。
(だけどすぐにきみょうなことがおきた。)
だけどすぐに奇妙な事が起きた。
(しゃりょうのいちばんまえのざせきにすわっていたひとがむごんでたちあがり、)
車両の一番前の座席に座っていた人が無言で立ち上がり、
(つぎのしゃりょうへむかってあるきだしたんだ。)
次の車両へ向かって歩き出したんだ。
(そのうしろのひとも、そのまたうしろのひとも、ほぼとうかんかくでたちあがっていどうしてく。)
その後ろの人も、そのまた後ろの人も、ほぼ等間隔で立ち上がって移動してく。
(さいしょはなんとなくながめていたけど、だんだんとそのうごきがじぶんのほうに)
最初は何となく眺めていたけど、段々とその動きが自分の方に
(ちかづいてきたのをかんじておちつかなくなった。)
近付いてきたのを感じて落ち着かなくなった。
(「これ、おれもたたなきゃいけないのか・・・?」)
「これ、俺も立たなきゃいけないのか・・・?」
(でも、ゆめだとわかっているいじょう、したがうりゆうもない。)
でも、夢だとわかっている以上、従う理由も無い。
(だからおれは、じぶんのじゅんばんがこてもうごかないことにした。)
だから俺は、自分の順番が来ても動かない事にした。
(やがて、めのまえのひとがたちあがっていどうしていき、とうとうおれのばんがきた。)
やがて、目の前の人が立ち上がって移動していき、とうとう俺の番が来た。
(だけどおれはうごかなかった。)
だけど俺は動かなかった。
(したをむいてやりすごそうとした。)
下を向いてやり過ごそうとした。
(そのとき、いようなけはいをかんじた。)
その時、異様な気配を感じた。
(となりにすわっているひとが、じっとこちらをみているけはいがする。)
隣に座っている人が、じっとこちらを見ている気配がする。
(でもこわくてかおをあげられない。)
でも怖くて顔を上げられない。
(つぎのひとがかってにたちあがるだろうとおもっていたけど、)
次の人が勝手に立ち上がるだろうと思っていたけど、
(なにぶんたってもつぎのひとはうごかない。)
何分経っても次の人は動かない。
(きになって、ゆっくりかおをあげた。)
気になって、ゆっくり顔を上げた。
(そこでめがあった。)
そこで目が合った。
(となりのひとは、まるでいかりをおしころしたようなかおでおれをにらんでいた。)
隣の人は、まるで怒りを押し殺したような顔で俺を睨んでいた。
(だけどなによりもおそろしかったのは、そのめ。)
だけど何よりも恐ろしかったのは、その目。
(ぜんたいがまっくろで、ひかりもかんじょうもまったくない。)
全体が真っ黒で、光も感情も全くない。
(まるでそこなしのやみにひきこまれるようなかんかくだった。)
まるで底なしの闇に引き込まれる様な感覚だった。
(いきがとまりそうになったおれは、はんしゃてきにしゅういをみわたした。)
息が止まりそうになった俺は、反射的に周囲を見渡した。
(すると、ぜんいんがおれをみていた。)
すると、全員が俺を見ていた。
(さっきまでうつむいていたはずのじょうきゃくたちぜにんがかおをあげ、)
さっきまでうつむいていたはずの乗客たち是認が顔を上げ、
(まっくろなめで、おなじぎょうそうでおれをみつめている。)
真っ黒な目で、同じ形相で俺を見つめている。
(なにかをせめるように。)
何かを責めるように。
(「なんなんだよ・・・これ・・・」)
「なんなんだよ・・・これ・・・」
(うごけないままじかんがすぎる。)
動けないまま時間が過ぎる。
(でもそのしせんにたえられなくなり、おもわずせきをたってしまった。)
でもその視線に耐えられなくなり、思わず席を立ってしまった。
(するとぜんいんがまたうつむいた。)
すると全員がまたうつむいた。
(あまりのいようさにふるえながら、まえのひとたちとおなじようにしゃりょうのでぐちにむかった。)
あまりの異様さに震えながら、前の人たちと同じように車両の出口に向かった。
(でもでぐちにたったおれはきょうがくした。)
でも出口に立った俺は驚愕した。
(そこにはつぎのしゃりょうなんてなかった。)
そこには次の車両なんてなかった。
(ただ、そとにふきつけるつめたいかぜと、)
ただ、外に吹き付ける冷たい風と、
(もうすぴーどではしるれつくるまのおとだけがみみにいってくる。)
猛スピードで走る列車の音だけが耳に入ってくる。
(さきにすすむには、ここからとびおりるしかない。)
先に進むには、ここから飛び降りるしかない。
(とびおりたらしぬ、そうかくしんした。)
飛び降りたら死ぬ、そう確信した。
(あしがすくんでうごけない。)
足がすくんで動けない。
(でもはいごから、またあのしせんをかんじる。)
でも背後から、またあの視線を感じる。
(ふりかえらなくてもわかる、ぜんいんがおれをみているんだ。)
振り返らなくても分かる、全員が俺を見ているんだ。
(「すすめ・・・ってことかよ・・・?」)
「進め・・・ってことかよ・・・?」
(ふりむくと、ぜんいんがゆっくりたちあがり、おれにむかってあるいてくる。)
振り向くと、全員がゆっくり立ち上がり、俺に向かって歩いて来る。
(めいせきむだとわかっていても、きょうふでからだがすくんだ。)
明晰夢だと判っていても、恐怖で体がすくんだ。
(うごけないままかれらがちかづいてくるのをみていると、)
動けないまま彼らが近づいて来るのを見ていると、
(ふとひじょうていしぼたんのことをおもいだした。)
ふと非常停止ボタンの事を思い出した。
(「これをとめれば・・・!」)
「これを止めれば・・・!」
(ひしにひじょうぼたんをさがすと、さっきまでなかったばしょにぼたんがあらわれた。)
菱に非常ボタンを探すと、さっきまでなかった場所にボタンが現れた。
(まよわずおすと、けたたましいけいてきがなりひびき、でんしゃがじょじょにげんそくしていく。)
迷わず押すと、けたたましい警笛が鳴り響き、電車が徐々に減速していく。
(でんしゃがていしゃし、みしりらふほーむにとうちゃくした。)
電車が停車し、見知ら附ホームに到着した。
(おれはなにもかんがえずにほーむにおりた。)
俺は何も考えずにホームに降りた。
(でんしゃはゆっくりはしりだし、ふとふりかえった。)
電車はゆっくり走り出し、ふと振り返った。
(するとじょうきゃくたちぜんいんがまどごしにおれをにらんでいたのだ。)
すると乗客たち全員が窓越しに俺を睨んでいたのだ。
(「うわぁっ」とこえをあげながらめをさました。)
「うわぁっ」と声を上げながら目を覚ました。
(げんじつにもどったおれはあせだくだった。)
現実に戻った俺は汗だくだった。
(しんぞうがばくばくしていて、ゆめだとわかっていてもふるえがとまらない。)
心臓がバクバクしていて、夢だと分かっていても震えが止まらない。
(ふとともだちをみると、げーむおーばーのがめんをぼんやりながめていた。)
ふと友達を見ると、ゲームオーバーの画面をぼんやり眺めていた。
(「おい、だいじょうぶか?」)
「おい、大丈夫か?」
(こえをかけると、ともだちはゆっくりおれのほうをむいた。)
声を掛けると、友達はゆっくり俺の方を向いた。
(そのかおをみたしゅんかん、いきがとまった。)
その顔を見た瞬間、息が止まった。
(ゆめのなかでみたあのじょうきゃくたちとおなじかおだった。)
夢の中で見たあの乗客たちと同じ顔だった。
(めはまっくろで、いかりをこたえたひょうじょう。)
目は真っ黒で、怒りを堪えた表情。
(そしてひくいこえでこういった。)
そして低い声でこう言った。
(「なんで、いきてんの?」)
「なんで、生きてんの?」
(きょうふでさけびそうになりながらともだちのほうをつかむと、)
恐怖で叫びそうになりながら友達の方を掴むと、
(つぎのしゅんかんにはもとのかおにもどっていた。)
次の瞬間には元の顔に戻っていた。
(「え、なに?ねぼけてんのか?」)
「え、なに?寝ぼけてんのか?」
(そういって、なにごともなかったようにげーむをさいかいしたともだちをみて、)
そう言って、何事もなかったようにゲームを再開した友達を見て、
(おれはなにもいえなかった。)
俺は何も言えなかった。
(あれはほんとうにゆめだったんだろうか。)
あれは本当に夢だったんだろうか。
(いまでも、あのかおとこえがあたまからはなれない。)
今でも、あの顔と声が頭から離れない。