吾輩は猫である1

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プレイ回数2008難易度(4.2) 985打 長文 かな
作者 夏目漱石 「吾輩は猫である」

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問題文

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(わがはいはねこである。なまえはまだない。)

吾輩は猫である。名前はまだない。

(どこでうまれたかとんとけんとうがつかぬ)

どこで生まれたかとんと見当がつかぬ

(なんでもうすぐらいじめじめしたところでにゃーにゃーないていたことだけはきおくしている)

何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていたことだけは記憶している

(わがはいはここではじめてにんげんというものをみた。)

吾輩はここで初めて人間というものを見た。

(しかもあとできくとそれはしょせいというにんげんじゅうでいちばんどうあくなしゅぞくであったそうだ。)

しかも後で聞くとそれは書生という人間中で一番獰悪な種族であったそうだ。

(このしょせいというのはときどきわれわれをつかまえてにてくうというはなしである。)

この書生というのは時々我々を捕まえて煮て食うという話である。

(しかしそのとうじはなんというかんがえもなかったからべつだんおそろしいともおもわなかった。)

しかしその当時は何という考もなかったから別段恐ろしいとも思わなかった。

(ただかれのてのひらにのせられてすーともちあげられたとき)

ただ彼の掌に載せられてスーと持ち上げられた時

(なんだかふわふわしたかんじがあったばかりである。)

なんだかふわふわした感じがあったばかりである。

(てのひらのうえですこしおちついてしょせいのかおをみたのが)

掌の上で少し落ち着いて書生の顔を見たのが

(いわゆるにんげんというもののみはじめだろう。)

いわゆる人間というものの見始めだろう。

(このときみょうなものだとおもったかんじがいまでものこっている。)

このとき妙なものだと思った感じが今でも残っている。

(だいいちもうをもってそうしょくされべきはずのかおがつるつるしてまるでやかんだ。)

第一毛をもって装飾されべきはずの顔がつるつるしてまるで薬缶だ。

(そのごねこにもだいぶあったがこんなかたわにはいちどもでくわしたことがない。)

その後猫にもだいぶあったがこんな片輪には一度も出くわした事がない。

(のみならずかおのまんなかがあまりにとっきしている。)

のみならず顔の真ん中があまりに突起している。

(そうしてそのあなのなかからときどきぷうぷうとけむりをふく。)

そうしてその穴の中から時々ぷうぷうと煙を吹く。

(どうもむせぽくてじつによわった。)

どうも咽せぽくて実に弱った。

(これがにんげんののむたばこというものであることはようやくこのころしった。)

これが人間の飲むタバコというものであることはようやくこのころ知った。