先生 前編 -1-

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師匠シリーズ
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1 berry 8129 8.2 98.5% 387.5 3198 48 61 2025/04/14
2 subaru 7962 8.3 95.4% 386.2 3228 153 61 2025/04/14
3 roi 6964 S++ 7.1 97.0% 448.3 3220 98 61 2025/04/12

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問題文

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(ししょうからきいたはなしだ。)

師匠から聞いた話だ。

(ながいかみがまどべでゆれている。せみのこえだとかかえるのこえだとかたいようのひかりだとか)

長い髪が窓辺で揺れている。蝉の声だとかカエルの声だとか太陽の光だとか

(じめんからてりかえるねつだとか、そういうざわざわしたものをたくさんふくんだかぜが、)

地面から照り返る熱だとか、そういうざわざわしたものをたくさん含んだ風が、

(せんせいのほおをくすぐってふきぬけていく。)

先生の頬をくすぐって吹き抜けていく。

(せんせいのひとみはまっすぐまどのそとをみつめている。ぼくはなんだか)

先生の瞳はまっすぐ窓の外を見つめている。僕はなんだか

(おちつかなくてえんぴつをくわえる。こんなにあついのに、せんせいのよこがおはすずしげだ。)

落ち着かなくて鉛筆を咥える。こんなに暑いのに、先生の横顔は涼しげだ。

(ぼくはのどもとにしたたってきたあせをゆびでぬぐう。じわじわじわじわとせみがないている。)

僕は喉元に滴ってきた汗を指で拭う。じわじわじわじわと蝉が鳴いている。

(かわいたきのかおりのするひるさがりのきょうしつに、ぼくとせんせいだけがいる。)

乾いた木の香りのする昼下がりの教室に、僕と先生だけがいる。

(ちいさなこくばんにはちょーくのもじがまぶしくかがやいている。)

小さな黒板にはチョークの文字が眩しく輝いている。

(さんかっけいのなかにしかっけいがあり、そのなかにまたさんかっけいがある。)

三角形の中に四角形があり、その中にまた三角形がある。

(ながさがわかっているへんもあるし、わかっていないへんもある。)

長さが分かっている辺もあるし、分かっていない辺もある。

(せんせいのえがくせんはすっとのびて、くっとまがって、さっととまっている。)

先生の描く線はスッと伸びて、クッと曲がって、サッと止まっている。

(おもわずなぞりたくなるくらいのきれいなせんだ。)

思わずなぞりたくなるくらいの綺麗なせんだ。

(それからせんちめーとるの、mのじのおしりがきゅっとあがって、)

それからセンチメートルの、mの字のお尻がキュッと上がって、

(じつにかっこいいかたちをしている。)

実にカッコいい形をしている。

(さんかっけいのなかのしかっけいのなかのさんかっけいのめんせきをもとめなさいといわれているのに、)

三角形の中の四角形の中の三角形の面積を求めなさいと言われているのに、

(そんなことがとてもきになる。それだけのことなのにほんとうにかっこいいのだ。)

そんなことがとても気になる。それだけのことなのに本当にカッコいいのだ。

(mのおしりにちいさな2をくっつけるのがもったいないとおもってしまうくらい。)

mのお尻に小さな2をくっつけるのがもったいないと思ってしまうくらい。

(「できたの」)

「できたの」

(そのこえにはっとわれにかえる。)

その声にハッと我に返る。

など

(「らくしょう」)

「楽勝」

(ぼくはあわててえんぴつをうごかす。)

僕は慌てて鉛筆を動かす。

(「と、おもう」とつけくわえる。)

「と、思う」と付け加える。

(せんせいはいっしゅんこっちをみて、すこしわらって、それからまたまどのそとにむきなおった。)

先生は一瞬こっちを見て、少し笑って、それからまた窓の外に向き直った。

(せなかのはげかけたいすにこしかけたままで。)

背中の剥げかけた椅子に腰掛けたままで。

(ぼくはちいさなつくえにめをおとしているけれど、それがわかる。)

僕は小さな机に目を落としているけれど、それがわかる。

(また、せみのこえだとかかえるのこえだとかたいようのひかりだとか)

また、蝉の声だとかカエルの声だとか太陽の光だとか

(じめんからてりかえるねつだとかがかぜといっしょにふいてきて、)

地面から照り返る熱だとかが風と一緒に吹いてきて、

(せんせいのながいかみがさらさらとゆれたことも。)

先生の長い髪がさらさらと揺れたことも。

(しろいふくがきらきらかがやいたことも。)

白い服がキラキラ輝いたことも。

(ふたりしかいないきょうしつはじかんがとまったみたいで。)

二人しかいない教室は時間が止まったみたいで。

(ぼくはそのなかにいるかぎり、なつがいつかとおりすぎるものだ、)

僕はその中にいる限り、夏がいつか通り過ぎるものだ、

(なんてことを、なかなかおもいだせずにいるのだった。)

なんてことを、なかなか思い出せずにいるのだった。

(しょうがっこうろくねんせいのなつだった。なつやすみにはいるなり、ぼくはしんせきのいえに)

小学校六年生の夏だった。夏休みに入るなり、僕は親戚の家に

(あずけられることになった。そのははかたのいなかは、でんしゃをいくつものりついで)

預けられることになった。その母方の田舎は、電車をいくつも乗り継いで

(やっとたどりつくえんぽうにあった。)

やっとたどり着く遠方にあった。

(ちいさいころにいちどかにど、つれてこられたことはあったけれど、)

小さい頃に一度か二度、連れてこられたことはあったけれど、

(ひとりでいかされるのははじめてだったし、「なつやすみがおわるまで)

一人で行かされるのは初めてだったし、「夏休みが終わるまで

(かえってこなくてよい」といわれたのもとうぜんはじめてのことだった。)

帰ってこなくて良い」と言われたのも当然初めてのことだった。

(やっかいばらいされたのはわかっていたし、ひとりできっぷをかうことや)

厄介払いされたのは分かっていたし、一人で切符を買うことや

(みちのききかたについて、それほどこまらないだけのけいけんをつんでいたぼくは、)

道の訊き方について、それほど困らないだけの経験を積んでいた僕は、

(むしろ「かえってこなくてよい」のまえに「なつやすみがおわるまで」が)

むしろ「帰ってこなくて良い」の前に「夏休みが終わるまで」が

(くっついていたことのほうにあんどしていた。)

くっついていたことの方に安堵していた。

(たんぼにかこまれたあぜみちを、すにーかーをつちぼこりまみれにしながら)

田んぼに囲まれた畦道を、スニーカーを土埃まみれにしながら

(てくてくあるいていくと、おおきないぶきのきがいっぽんかきねから)

てくてく歩いていくと、大きなイブキの木が一本垣根から

(つきでてはをおいしげらせているいえがみえてきた。)

突き出て葉を生い茂らせている家が見えてきた。

(このちほうどくとくのあかちゃいろのやねがわらがひのひかりをはんしゃして、ぼくはめをほそめる。)

この地方独特の赤茶色の屋根瓦が陽の光を反射して、僕は目を細める。

(そのいえには、おじさんとおばさんがじいちゃんとばあちゃんと、)

その家には、おじさんとおばさんがじいちゃんとばあちゃんと、

(それからしげちゃんとよっちゃんがいた。)

それからシゲちゃんとヨッちゃんがいた。

(おじさんもおばさんもしんせきのこどもであるぼくにずいぶんやさしくしてくれて、)

おじさんもおばさんも親戚の子どもである僕にずいぶん優しくしてくれて、

(「うちのこになるか」なんてじょうだんもいったりして、)

「うちの子になるか」なんて冗談も言ったりして、

(ふたりとものうさぎょうでまっくろにひやけしたかおをならべてわらった。)

二人とも農作業で真っ黒に日焼けした顔を並べて笑った。

(じいちゃんは、あたまはしらがだったけどあしこしはぴんとしていて、せがたかくて)

じいちゃんは、頭は白髪だったけど足腰はピントしていて、背が高くて

(がははといってぼくのあたまをぐしゃぐしゃになでたりして、それがいたかったり)

ガハハと言って僕の頭をぐしゃぐしゃに撫でたりして、それが痛かったり

(はずかしかったりするのでぼくはそのてからにげまわるようになった。)

恥ずかしかったりするので僕はその手から逃げ回るようになった。

(ばあちゃんはちいさなからだにちょんとなつみかんがのってるような)

ばあちゃんは小さな体にチョンと夏みかんが乗ってるような

(かわいらしいかおをしていて、なにかをもちあげたり、)

可愛らしい顔をしていて、なにかを持ち上げたり、

(ふきんをしぼったりするときに「えっへ」といってきあいをいれるので、)

布巾を絞ったりする時に「エッヘ」と言って気合いを入れるので、

(それがとてもおもしろく、こっそりまねをしていたらほんにんにみつかって、)

それがとても面白く、こっそり真似をしていたら本人に見つかって、

(おこられるかとおもったけれどばあちゃんは「えっへ」といって)

怒られるかと思ったけれどばあちゃんは「エッヘ」と言って

(ほんものをみせてくれたので、ぼくはあっというまにすきになってしまった。)

本物を見せてくれたので、僕はあっというまに好きになってしまった。

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