デジタル写経　宮沢賢治編　農民芸術概論綱要1

(のうみんげいじゅつがいろんこうよう)

農民芸術概論網要

(～じょろん～)

～序論～

(われらはいっしょにこれからなにをろんずるか)

……われらはいっしょにこれから何を論ずるか……

(おれたちはみなのうみんであるずいぶんいそがしくしごともつらい)

おれたちはみな農民である　ずいぶん忙しく仕事もつらい

(もっとあかるくいきいきとせいかつするみちをみつけたい)

もっと明るく生き生きと生活する道を見付けたい。

(われらのふるいししたちのなかにはそういうひともおうおうあった)

われらの古い師父たちの中にはさういふ人も応々あった

(きんだいかがくのじっしょうときゅうどうしゃたちのじっけんとわれらのちょっかんのいっちにおいてろんじたい)

近代科学の実証と求道者たちの実験とわれらの直感の一致に於て論じたい

(せかいぜんたいこうふくにならないうちはこじんのこうふくはありえない)

世界全体幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない

(じがのいしきはこじんからしゅうだんしゃかいうちゅうとしだいにしんかする)

自我の意識は個人から集団社会宇宙と次第に進化する

(このほうこうはふるいせいじゃのふみみまたきょうへたみちではないか)

この方向は古い聖者の踏みまた教へた道ではないか

(あらたなるじだいはせかいがいちになりせいぶつとなるほうこうにある)

新たなる時代は世界が一になり生物となる方向にある

(ただしくつよくいきるとはぎんがけいをみずからのなかにいしきしてこれにおうじていくことである)

正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じて行くことである

(われらはせかいのまことのこうふくをけんさくをさくねよう)

われらは世界のまことの幸福を検索を策ねよう

(きゅうどうすでにみちである)

求道すでに道である