刀 -3-

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師匠シリーズ
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1 berry 7274 7.4 97.7% 371.7 2769 65 64 2025/06/10
2 Jyo 5471 B++ 5.5 97.9% 495.3 2769 59 64 2025/06/12

関連タイピング

問題文

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(かたなはひとをきるためのものだが、ひとをきったかたなというものにはなかなか)

刀は人を斬るためのものだが、人を斬った刀というものにはなかなか

(おめにかかれない。せいかくには、きったというじじつをかくにんできないのだ。)

お目にかかれない。正確には、斬ったという事実を確認できないのだ。

(なにしろかんていしょにはそんなものはでてこない。)

なにしろ鑑定書にはそんなものは出てこない。

(みよしながみちをもってきたおとこはこれをこんいにしているはなしかから)

三善長道を持ってきた男はこれを懇意にしている噺家から

(ゆずりうけたのだそうだ。はなしかのちすじはそのかろうにつうじており、)

譲り受けたのだそうだ。噺家の血筋はその家老に通じており、

(かほうのかたなとともにいえじゅうのひみつとしてそのいつわがつたわっているのだという。)

家宝の刀とともに家中の秘密としてその逸話が伝わっているのだという。

(それをきいたとうけんしゅみのものたちはきょうみしんしんのていで)

それを聞いた刀剣趣味の者たちは興味津々の体で

(くちぐちにめのまえのみよしながみちをほめたたえた。)

口々に目の前の三善長道を褒め称えた。

(「そういわれてみると、なるほどほかにはないすごみがある」)

「そう言われてみると、なるほど他にはない凄みがある」

(だの、「はさきからうっすらようきのようなものがただよってきる」だのと)

だの、「刃先からうっすら妖気のようなものが漂ってきる」だのと

(くちにしてはさわらせてもらっていた。)

口にしては触らせてもらっていた。

(とうけんけんきゅうかのせんせいまでもが)

刀剣研究家の先生までもが

(「わかきけっきがこころざしなかばでたたれたおんねんがこもっているようだ」と)

「若き血気が志半ばで断たれた怨念が篭っているようだ」と

(かんがいぶかげにいいだして、くらもちしはないしんきぶんがよくなかった。)

感慨深げに言い出して、倉持氏は内心気分が良くなかった。

(めいはほんものでもそのいつわのしんがんはわかるまいに、)

銘は本物でもその逸話の真贋は分かるまいに、

(とおもったがくちにだすことはちゅうちょした。)

と思ったが口に出すことは躊躇した。

(このばにみずをかけるのはいかにもわるものにされてしまいそうで。)

この場に水を掛けるのはいかにも悪者にされてしまいそうで。

(かいがおひらきになり、いえにかえってからもきぶんがおちつかないので)

会がお開きになり、家に帰ってからも気分が落ち着かないので

(しょぞうしているにほんとうをすべてだしてきてならべてみる。)

所蔵している日本刀をすべて出してきて並べてみる。

(と、これらのなかにもひとをきったことのあるかたながまざっているのではないかという)

と、これらの中にも人を切ったことのある刀が混ざっているのではないかという

など

(おもいがわいてきて、いてもたってもいられなくなったのだそうだ。)

思いが湧いてきて、居ても立っても居られなくなったのだそうだ。

(「それでわたしか」)

「それで私か」

(「そういうこと」)

「そういうこと」

(くらもちしは「おばけせんもん」のししょうのうわさをききつけ、)

倉持氏は「オバケ専門」の師匠の噂を聞きつけ、

(かんていをいらいしてきたのだという。)

鑑定を依頼してきたのだという。

(かんてい!)

鑑定!

(ぼくはおもわずふきだしそうになった。)

僕は思わず吹き出しそうになった。

(う~ん、これにはぶれいうちされたちょうにんのれいがついてますねぇ、)

う〜ん、これには無礼打ちされた町人の霊がついてますねぇ、

(などとやるのだろうか。)

などとやるのだろうか。

(はためにもうさんくさいことおびただしい。)

傍目にも胡散臭いことおびただしい。

(「かたなのことはあんまりわかんないから、ちょっとな」)

「刀のことはあんまり分かんないから、ちょっとな」

(ししょうはこんわくしたようすでためいきをつく。)

師匠は困惑した様子でため息をつく。

(「ぼくさってそうさ。かたなし、ってやつ」)

「ボクさってそうさ。カタナシ、ってやつ」

(おがわさんはじょうだんのつもりなのかはんだんつきかねるかるくちをいってほかのひらをあげる。)

小川さんは冗談のつもりなのか判断つきかねる軽口を言って他のひらを上げる。

(「ただ、じっさいになにかいえでへんなけはいがしたりおとがしたり、)

「ただ、実際になにか家で変な気配がしたり音がしたり、

(しんれいげんしょうかとおもうようなことがおこってるらしいんだ」)

心霊現象かと思うようなことが起こってるらしいんだ」

(「・・・・・おもいこみだろう」)

「・・・・・思い込みだろう」

(「さあね。ともかくそういうこともあって)

「さあね。ともかくそういうこともあって

(いちどせんもんかにみにきてほしいんだそうだ」)

一度専門家に見に来て欲しいんだそうだ」

(せんもんかねえ、とかたをすくめながらも)

専門家ねえ、と肩をすくめながらも

(ししょうはきょうみがわいてきたようなめつきをした。)

師匠は興味が湧いてきたような目つきをした。

(「もううけたの?」)

「もう受けたの?」

(「ごじつれんらくってことにしてある」)

「後日連絡ってことにしてある」

(ししょうはかんがえこむようなそぶりをしながらおもいついたようにくびをかしげた。)

師匠は考え込むようなそぶりをしながら思いついたように首を傾げた。

(「・・・・・みよしながみちって、なんかきいたことがあるな」)

「・・・・・三善長道って、なんか聞いたことがあるな」

(ぼくはおもわずくちをはさむ。)

僕は思わず口を挟む。

(「こんどういさみのあいとうですよ。しんせんぐみの。いけだやじけんのこうにたいして)

「近藤勇の愛刀ですよ。新撰組の。池田屋事件の功に対して

(きょうとしゅごしょくのまつだいらかたもりからはいりょうしたものです。こんどういさみといえば)

京都守護職の松平容保から拝領した物です。近藤勇と言えば

(こてつのほうがゆうめいですけど、そっちはにせものだったっていわれてますね」)

虎徹の方が有名ですけど、そっちは偽物だったって言われてますね」

(ししょうは、なんだおまえ、というかおをした。)

師匠は、なんだおまえ、という顔をした。

(「くわしいな」)

「詳しいな」

(おがわさんはきゅうにしんけんなかおつきになった。)

小川さんは急に真剣な顔つきになった。

(「じっかにいっぱいあるんで、かたなやらわきざしやら。もんぜんのこぞうていどですけど」)

「実家にいっぱいあるんで、刀やら脇差やら。門前の小僧程度ですけど」

(そういうぼくのほうに、ししょうはらんぼうにてをおいた。)

そう言う僕の方に、師匠は乱暴に手を置いた。

(「よし、うけよう。そのいらい」)

「よし、受けよう。その依頼」

(ええっ。とうめいてしまった。)

ええっ。と呻いてしまった。

(もしかして、なんかしっぱいしたらぼくのせいにされるのではないかという)

もしかして、なんか失敗したら僕のせいにされるのではないかという

(ふあんがよぎった。)

不安がよぎった。

(「ひきうけてくれるなら、はやいほうがよいっていってたぞ。いえまできてくれって」)

「引き受けてくれるなら、早い方が良いって言ってたぞ。家まで来てくれって」

(「じゃあもうきょうとかでも?」)

「じゃあもう今日とかでも?」

(「に、さんにちはほとんどいえにいるらしい」)

「二、三日はほとんど家に居るらしい」

(ししょうはさほどかんがえもせずにせんげんした。)

師匠はさほど考えもせずに宣言した。

(「きょう、いまからいくってでんわして」)

「今日、今から行くって電話して」

(「りょうかい」)

「了解」

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