家なき子 14
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問題文
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(あるあさ、ぼくがじょりくーるのかんびょうをしていると、そこへおじいさんがやってきて)
ある朝、僕がジョリ・クールの看病をしていると、そこへお爺さんがやってきて
(「いま、これまでのやどちんをはらってきた。そうしたら、たったごじゅっすうしか)
「今、これまでの宿賃を払ってきた。そうしたら、たった五十スウしか
(のこらないんだ。おいしゃさんのおかねも、ずいぶんかかったからね。)
残らないんだ。お医者さんのお金も、ずいぶんかかったからね。
(これでは、こんやでもけんぶつにんをあつめて、かねをもうけなくてはたいへんだ」といいました。)
これでは、今夜でも見物人を集めて、金を儲けなくては大変だ」と言いました。
(ぜるびのもどるすも、じょりくーるもいないのに、なにができるだろう。)
ゼルビノもドルスも、ジョリ・クールもいないのに、何ができるだろう。
(ぼくはそうおもいましたが、だまっていました。)
僕はそう思いましたが、黙っていました。
(すると、びたりすじいさんはそとにでていって、いちばのなかでぼくたちのげいを)
すると、ビタリス爺さんは外に出て行って、市場の中で僕たちの芸を
(みせることにしました。そのために、ごじゅっすうをのこらずはらってろうそくをかいました)
見せることにしました。そのために、五十スウを残らず払って蝋燭を買いました
(しばらくすると、ぼうしをかぶったおとこがたいこをたたきながらやってきて)
しばらくすると、帽子を被った男が太鼓をたたきながらやってきて
(おおごえでひとびとにしらせました。)
大声で人々に知らせました。
(「せかいにまたとないだいげいじゅつか、たまたまこのむらにとおりかかり)
「世界にまたとない大芸術家、たまたまこの村に通りかかり
(こんや、みなさまのためにすばらしいげいをおめにかけます。このうえなくりこうないぬのげいとう)
今夜、皆様のために素晴らしい芸をお目にかけます。この上なく利口な犬の芸当
(それからてんさいしょうねんのうた、どうぞおみのがしのないように。こんやのはちじ)
それから天才少年の歌、どうぞお見逃しのないように。今夜の八時
(ばしょは、むらのいちばでございまーす」)
場所は、村の市場でございまーす」
(おとこはそういって、たいこをどんどんうちならしました。)
男はそう言って、太鼓をドンドン打ち鳴らしました。
(たいこのおとをきくと、かぴはうれしそうにほえ、)
太鼓の音を聞くと、カピは嬉しそうに吠え、
(じょりくーるはべっどからむっくりおきあがりました。)
ジョリ・クールはベッドからむっくり起き上がりました。
(「おや、ふたりともしばいにでたがっているのだな」)
「おや、二人とも芝居に出たがっているのだな」
(ぼくがそうおもっていると、じょりくーるは、じぶんのきるしょうぐんのふくのほうに)
僕がそう思っていると、ジョリ・クールは、自分の着る将軍の服のほうに
(よろよろとちかよりました。そしてぼくにむかって、ふくをとってくださいと)
よろよろと近寄りました。そして僕に向かって、服を取ってくださいと
など
(みぶりでたのみました。ぼくがくびをふってもいうことをききません。)
身振りで頼みました。僕が首を振っても言うことをききません。
(そこへびたりすじいさんがかえってくると、じょりくーるは、こんどはおじいさんに)
そこへビタリス爺さんが帰ってくると、ジョリ・クールは、今度はお爺さんに
(むかってせがみました。「いや、いかん、いかん。おまえはびょうきじゃないか」)
向かってせがみました。「いや、いかん、いかん。お前は病気じゃないか」
(おじいさんがそういっても、じょりくーるはどうしてもいきたがって)
お爺さんがそう言っても、ジョリ・クールはどうしても行きたがって
(ないたりさけんだりしました。)
鳴いたり叫んだりしました。
(でも、いくらせがんでもじょりくーるをつれていくわけにはいきません。)
でも、いくらせがんでもジョリ・クールを連れて行くわけにはいきません。
(そんなことをしたら、ますますびょうきがわるくなってしんでしまうことは)
そんなことをしたら、ますます病気が悪くなって死んでしまうことは
(わかりきっていたからです。)
わかりきっていたからです。
(やがて、ぼくたちはいちばにむかってあるきだしました。)
やがて、僕たちは市場に向かって歩き出しました。
(「やれるものは、かぴとおまえしかいないが、どうかしっかりやっておくれ。)
「やれるものは、カピとお前しかいないが、どうかしっかりやっておくれ。
(こんやうまくかせがないと、わしたちはこまってしまうからな」)
今夜うまく稼がないと、わしたちは困ってしまうからな」
(おじいさんははげますようにぼくにいいました。)
お爺さんは励ますように僕に言いました。
(はちじになりましたが、けんぶつにんははんぶんくらいしかあつまりません。)
八時になりましたが、見物人は半分くらいしか集まりません。
(でも、おじいさんは「しかたがない。はじめることにしよう」といいました。)
でも、お爺さんは「仕方がない。始めることにしよう」と言いました。
(いちばんはじめに、ぼくがはーぷをひきながらうたをうたいましたが、)
一番初めに、僕がハープを弾きながら歌をうたいましたが、
(てをたたくひとはあまりありませんでした。)
手を叩く人はあまりありませんでした。
(つぎに、かぴのげいとうをみせました。これは、けんぶつにんもおおよろこびで)
次に、カピの芸当を見せました。これは、見物人も大喜びで
(わらいごえとてをたたくおとで、いちばじゅうがいっぱいになりました。)
笑い声と手を叩く音で、市場中がいっぱいになりました。
(さいごにぼくがだんすをし、かぴがおわんをくわえてけんぶつにんのあいだをあるきまわりました。)
最後に僕がダンスをし、カピがお椀をくわえて見物人の間を歩き回りました。
(もどってきたかぴのおわんには、あまりおかねがはいっていませんでした。)
戻ってきたカピのお椀には、あまりお金が入っていませんでした。
(それをみると、おじいさんがいいました。「まだ、すこしばかりろうそくのひが)
それを見ると、お爺さんが言いました。「まだ、少しばかりろうそくの火が
(のこっております。それでこんどは、わたしがうたをうたいましょう。)
残っております。それで今度は、私が歌をうたいましょう。
(おきにめしましたら、どうぞ、かぴのおわんにおかねをいれてください」)
お気に召しましたら、どうぞ、カピのお椀にお金をいれてください」
(それから、おじいさんはうたいました。ぼくは、おじいさんがほんきでうたったのを)
それから、お爺さんは歌いました。僕は、お爺さんが本気で歌ったのを
(はじめてききましたが、あまりのすばらしさにおもわずなみだがでそうになりました。)
初めて聞きましたが、あまりの素晴らしさに思わず涙がでそうになりました。
(ぼくたちがかえりのしたくをはじめていると、こどもをつれたおかねもちらしいおんなのひとが)
僕たちが帰りの支度を始めていると、子どもを連れたお金持ちらしい女の人が
(おじいさんのまえにやってきました。)
お爺さんの前にやってきました。
(「あなたのうたに、すっかりかんしんいたしました。あなたはもしかすると・・・」)
「あなたの歌に、すっかり感心いたしました。あなたはもしかすると・・・」
(そういって、おじいさんのかおをじっとみつめました。)
そう言って、お爺さんの顔をじっと見つめました。
(「いや、わしはむかし、えらいかしゅのいえにやとわれていて、そのときちょっと)
「いや、わしは昔、偉い歌手の家に雇われていて、その時ちょっと
(うたのうたいかたをならっただけじゃ」おじいさんはあわてていいました。)
歌のうたいかたを習っただけじゃ」お爺さんは慌てて言いました。
(おんなのひとはかえるとき、かぴのおわんにきんかをいちまいいれていきました。)
女の人は帰る時、カピのお椀に金貨を一枚入れて行きました。
(「このかねがあれば、じょりくーるのびょうきをなおすことができる」)
「この金があれば、ジョリ・クールの病気を治すことができる」
(ぼくたちはいそいで、やどにかえりました。)
僕たちは急いで、宿に帰りました。
(するとじょりくーるはしょうぐんのふくをきてゆかのうえにたおれていました。)
するとジョリ・クールは将軍の服を着て床の上に倒れていました。
(さわってみると、じょりくーるのからだはこおりのようにつめたくなっていました。)
触ってみると、ジョリ・クールの体は氷のように冷たくなっていました。