祖母のこと -4-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文

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(「わたしがおばあちゃんとよんでいたそのひとが、) 「私がお祖母ちゃんと呼んでいたその人が、 (ちちのそぼにあたるひとだったと、いまごろしったんです。) 父の祖母にあたる人だったと、今ごろ知ったんです。 (つまりただしくはわたしのそうそぼですね。) つまり正しくは私の曾祖母ですね。 (そういえば、せつこというなまえさえしらなかったのですよ。) そう言えば、せつ子という名前さえ知らなかったのですよ。 (いつもただおばあちゃんとだけ、そればかり・・・・・」) いつもただお祖母ちゃんとだけ、そればかり・・・・・」 (またしせんをおとし、ほおをこわばらせる。) また視線を落とし、頬を強張らせる。 (じむしょのなかにちんもくがしばしおとずれた。) 事務所の中に沈黙がしばし訪れた。 (とおくではいひんかいしゅうのすぴーかーのおとがきこえる。) 遠くで廃品回収のスピーカーの音が聞こえる。 (ししょうがくちをひらく。) 師匠が口を開く。 (「その、てんじょうにはってあったというかみですが、) 「その、天井に貼ってあったという紙ですが、 (なんというもじがかかれていたのですか」) なんという文字が書かれていたのですか」 (「はい。ええ。それは、はっきりとはしないのですが。わたしはなにしろ) 「はい。ええ。それは、はっきりとはしないのですが。私はなにしろ (まだそのころしょうがっこうにもあがっていないとしでしたので。ただ・・・・・」) まだそのころ小学校にも上がっていない歳でしたので。ただ・・・・・」 (くちごもったよりこさんをししょうがうながす。) 口ごもった頼子さんを師匠が促す。 (「ただ、なんです」) 「ただ、なんです」 (「ええ。それが、その、れいというもじだったと」) 「ええ。それが、その、霊という文字だったと」 (「れい?」) 「霊?」 (「はい。ゆうれいとか、れいこんとかの、れいです」) 「はい。幽霊とか、霊魂とかの、霊です」 (すこしはずかしそうにそういった。しかしそのかおにはえたいのしれないものに) 少し恥ずかしそうにそう言った。しかしその顔には得体の知れないものに (たいするいふのかんじょうもどうじにはりついている。) 対する畏怖の感情も同時に張り付いている。
など
(「れい?」) 「霊?」 (ししょうはまゆをひそめた。) 師匠は眉をひそめた。 (ぼくもまた、なんだかきみのわるいかんかくにおそわれる。) 僕もまた、なんだか君の悪い感覚に襲われる。 (れいとは。そのばにふさわしいようで、またずれているようで。) 霊とは。その場に相応しいようで、またずれているようで。 (いったいなんなのだろうか、そのてんじょうにはられたもじは。) いったいなんなのだろうか、その天井に貼られた文字は。 (「そのもじですが、もしかしてそのひだけではなく、) 「その文字ですが、もしかしてその日だけではなく、 (いつもはられていたのではないですか」) いつも貼られていたのではないですか」 (ししょうがふしぎなことをきく。) 師匠が不思議なことを訊く。 (いつも?いつもてんじょうにそんなれいなどというもじがはられていたというのか。) いつも?いつも天井にそんな霊などという文字が貼られていたというのか。 (「いえ。どうでしょうか。そういわれてみると」) 「いえ。どうでしょうか。そう言われてみると」 (よりこさんはおどろいたかおをしながらきおくをたどるようにしせんをさまよわせる。) 頼子さんは驚いた顔をしながら記憶を辿るように視線を彷徨わせる。 (そしてはっとめをみひらき、「あった、かもしれません」といった。) そしてハッと目を見開き、「あった、かも知れません」と言った。 (「どうしたのかしら、わたし。そうだわ。そぼにたずねたことがあった。) 「どうしたのかしら、私。そうだわ。祖母に尋ねたことがあった。 (このかみはなに?このかみは。このかみはね。このかみは」) この紙はなに?この紙は。この紙はね。この紙は」 (よりこさんはひとりごとのようにそのことばをくりかえす。) 頼子さんは独り言のようにその言葉を繰り返す。 (「かわぞえさん。もうひとつかくにんしたいことがあります。) 「川添さん。もう一つ確認したいことがあります。 (そのつやのあったへやは、たしかにおばあちゃんのへやでしたか」) その通夜のあった部屋は、確かにお祖母ちゃんの部屋でしたか」 (「ええ。それはまちがいないとおもいます」) 「ええ。それは間違いないと思います」 (「おばあちゃんはちいさないえにひとりですんでいたとおっしゃっていましたが、) 「お祖母ちゃんは小さな家に一人で住んでいたとおっしゃっていましたが、 (そのいえはひらやでしたか。それともにかいだてでしたか」) その家は平屋でしたか。それとも二階建てでしたか」 (「ええと、それは」) 「ええと、それは」 (よりこさんはじしんのなさそうなかおになる。はっきりおもいだせないようだ。) 頼子さんは自身のなさそうな顔になる。はっきり思い出せないようだ。 (「あなたがいつもえんがわからたずねていったというへやですが、) 「あなたがいつも縁側から訪ねていったという部屋ですが、 (そこでつやがおこなわれたのですよね。) そこで通夜が行われたのですよね。 (そのへやのほかに、どんなへやがありましたか」) その部屋の他に、どんな部屋がありましたか」 (「あの、ええと」) 「あの、ええと」 (ふあんげなひょうじょうのまま、よりこさんはひっしにきおくをたどろうとしている。) 不安げな表情のまま、頼子さんは必死に記憶を辿ろうとしている。 (「ほかのへやは・・・・・おぼえがありません。いつもそぼはそのへやにいました。) 「他の部屋は・・・・・覚えがありません。いつも祖母はその部屋にいました。 (わたしもそこにしかいったことが・・・・・」) 私もそこにしか行ったことが・・・・・」 (そうしてまたくちごもる。) そうしてまた口ごもる。 (そのようすをじっとみつめながら、ししょうはふっ、とちいさくいきをついた。) その様子をじっと見つめながら、師匠はふっ、と小さく息をついた。 (「かわぞえさん。あなたのごいらいである、そのきみょうなつやのあと) 「川添さん。あなたのご依頼である、その奇妙な通夜のあと (すがたがみえなくなったというおばあちゃんがいったいどうしてしまったのか、) 姿が見えなくなったというお祖母ちゃんがいったいどうしてしまったのか、 (というてんについてはおこたえできるざいりょうがありません。) という点についてはお答えできる材料がありません。 (ですが、おばあちゃんのかわりにかんおけにはいっていたししゃがだれなのか、) ですが、お祖母ちゃんの代わりに棺おけに入っていた死者が誰なのか、 (ということについてはおこたえできるとおもいます」) ということについてはお答えできると思います」 (「え」) 「え」 (ぼくとよりこさんはおなじようにおどろいたこえをあげる。) 僕と頼子さんは同じように驚いた声を上げる。 (そしてししょうのかおをみる。) そして師匠の顔を見る。
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