刀 -11-(完)

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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
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1 | berry | 7810 | 神 | 7.9 | 98.4% | 368.2 | 2921 | 45 | 69 | 2025/06/12 |
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問題文
(きがつくとさやのおとがとまっていた。)
気がつくと鞘の音が止まっていた。
(「なにをいう。なにを・・・・・なにを・・・・・わかったような・・・・・」)
「なにをいう。なにを・・・・・なにを・・・・・わかったような・・・・・」
(ぼそぼそとくちのなかでくりかえすくらもちしのめにくらいいろがともっている。)
ぼそぼそと口の中で繰り返す倉持氏の目にくらい色が灯っている。
(そのめはししょうをにらみつけていた。)
その目は師匠を睨み付けていた。
(せいじょうといじょうのさかいでわだかまるようなめのいろだった。)
正常と異常の境でわだかまるような目の色だった。
(そらきがはりつめる。すわったまま、じゅうしんがすこしずつうごいていく。)
空気が張り詰める。座ったまま、重心が少しずつ動いていく。
(そろそろとさやをこしにおしつけていく。)
そろそろと鞘を腰に押し付けていく。
(いあいをやっている!このろうじんは。)
居合いをやっている!この老人は。
(むすうのはりでさされるようなさっきをかんじながら、)
無数の針で刺されるような殺気を感じながら、
(じぶんのあせがひいていくのがわかる。)
自分の汗が引いていくのがわかる。
(ししょうとのきょりは、まあいだ。)
師匠との距離は、間合いだ。
(いきがみじかく、あらくなる。)
息が短く、荒くなる。
(ひだりてのおやゆびがこいぐちにかかる。)
左手の親指が鯉口にかかる。
(みぎてのゆびがつかのしたにかくれる。)
右手の指が柄の下に隠れる。
(すべてのうごきがとまる。)
すべての動きが止まる。
(ぬく。)
抜く。
(そうおもったしゅんかん、ぼくはきせんをせいしててもとにあったがらすせいのはいざらを)
そう思った瞬間、僕は機先を制して手元にあったガラス製の灰皿を
(ゆびにひっかけるようにして、なげつけていた。)
指に引っ掛けるようにして、投げつけていた。
(「あっ」というこえがして、どうじにつかのさきにかたいものがあたるしょうげきおんがした。)
「あっ」という声がして、同時に柄の先に硬いものが当たる衝撃音がした。
(ろうじんはひだりてをおさえ、わきざしはさやにおさまったままたたみのうえにおちる。)
老人は左手を押さえ、脇差は鞘に収まったまま畳の上に落ちる。
(しゅういのざわざわしたかげたちがいっしゅんでひいていくけはいがあった。)
周囲のざわざわした影たちが一瞬で引いていく気配があった。
(「きさまっ」)
「貴様ッ」
(ものすごいぎょうそうでうなるろうじんをしりめに、ぼくはめのまえのししょうのかたをだいた。)
物凄い形相で唸る老人を尻目に、僕は目の前の師匠の肩を抱いた。
(「にげますよ」)
「逃げますよ」
(うむをいわせずだきかかえるようにはしりだそうとする。)
有無を言わせず抱き抱えるように走り出そうとする。
(ししょうはそれにていこうしようとはしなかったが、ただひとこと、)
師匠はそれに抵抗しようとはしなかったが、ただ一言、
(ろうじんにむかってみじかくいいはなった。)
老人に向かって短く言い放った。
(「ごうだ。つきあえ。いっしょう」)
「業だ。付き合え。一生」
(そしてたたみをけってへやをでた。)
そして畳を蹴って部屋を出た。
(でるとき、ぬるん、といういやなかんしょくがあった。じぶんをつつむくうきがせいじょうにもどる。)
出るとき、ぬるん、という嫌な感触があった。自分を包む空気が正常に戻る。
(はいごからわめきこえがおいかけてくる。しょうきがうたがわれる。きけんだった。)
背後からわめき声が追いかけて来る。正気が疑われる。危険だった。
(ろうかをはしりぬけ、げんかんのくつをもち、はくよゆうもなく)
廊下を走り抜け、玄関の靴を持ち、履く余裕もなく
(たいようのしたにとびでてからいしだたみのみちをいちもくさんにかけた。)
太陽の下に飛び出てから石畳の道を一目散に駆けた。
(じてんしゃにとびのり、ししょうのおもさがくわわるのをかくにんしてから)
自転車に飛び乗り、師匠の重さが加わるのを確認してから
(ぺだるをおもいきりふんだ。)
ペダルを思い切り踏んだ。
(「あ」とせなかからししょうのこえ。)
「あ」と背中から師匠の声。
(ぎくりとして、それでもじてんしゃをこぎだしながら「なんです」ときいた。)
ギクリとして、それでも自転車をこぎ出しながら「なんです」と訊いた。
(「かね、もらうのわすれた」)
「金、もらうの忘れた」
(それどころじゃないでしょう。)
それどころじゃないでしょう。
(そういいかえして、ぼくはぜんそくりょくでそのりっぱないえのもんからはなれはじめたのだった。)
そう言い返して、僕は全速力でその立派な家の門から離れ始めたのだった。
(ごじつ。)
後日。
(おがわちょうさじむしょのふろあでぼくとししょうはじょうきげんのしょちょうとむかいあってた。)
小川調査事務所のフロアで僕と師匠は上機嫌の所長と向かい合ってた。
(「くらもちさんからおかねがはいったよ」)
「倉持さんからお金が入ったよ」
(ほうこくをきいてあきらめていたそうだが、きのうほんにんがやってきて)
報告を聞いて諦めていたそうだが、昨日本人がやってきて
(きていのりょうきんのじゅうばいをこえるおかねをおいていったのだという。)
規定の料金の十倍を超えるお金を置いて行ったのだという。
(ぼくとししょうはかおをみあわせた。)
僕と師匠は顔を見合わせた。
(「とりみだしてわるかったって。あのときのことはたごんむようにねがうってさ。)
「取り乱して悪かったって。あの時のことは他言無用に願うってさ。
(そりゃまあこちらにはしゅひぎむってものがあるからね。)
そりゃまあこちらには守秘義務ってものがあるからね。
(もちろん、とこたえといたよ」)
もちろん、と答えといたよ」
(くちどめりょうもふくまれているわけか。たしかにへたをするとさつじんみすいだからな。)
口止め料も含まれているわけか。確かにへたをすると殺人未遂だからな。
(おもいだしていまさらぞっとする。)
思い出していまさらゾッとする。
(「ああ、それからこれ。きみたちにと。」)
「ああ、それからこれ。きみたちにと。」
(ですくのしたからおおきなはこをとりだしてくる。どうせいのりっぱなかたなばこだった。)
デスクの下から大きな箱を取り出して来る。銅製の立派な刀箱だった。
(あけるとなかにはもくさんろくじゅっせんちじゃくのとうけんがひとふりはいっている。わきざしだ。)
開けると中には目算六十センチ弱の刀剣が一振り入っている。脇差だ。
(「え?これをどうするんですって?」)
「え?これをどうするんですって?」
(どうきがはやくなってきた。)
動悸が早くなってきた。
(「だから、くれるって」)
「だから、くれるって」
(すごい。こんなこうかなものを。)
凄い。こんな高価なものを。
(ついていたとうろくしょうとほぞんかんていしょをよみながらこうふんをおさえられなかった。)
ついていた登録証と保存鑑定書を読みながら興奮を抑えられなかった。
(ししょうはわらって「もらっとけ」といった。)
師匠は笑って「もらっとけ」と言った。
(ぼくにゆずってくれるらしい。かちがわかっているのだろうか。)
僕に譲ってくれるらしい。価値が分かっているのだろうか。
(「あとさいごにつたえてくれって。・・・・・「わかりました」ってさ。)
「あと最後に伝えてくれって。・・・・・「わかりました」ってさ。
(なんのことだ」)
なんのことだ」
(ししょうはそれをきいて、うれしそうなかおをした。)
師匠はそれを聞いて、嬉しそうな顔をした。
(ひょっとしてわきざしをかかえるぼくよりも。)
ひょっとして脇差を抱える僕よりも。
(そのぼくはわきざしのえのところにめだつきずがあるのにきがついた。)
その僕は脇差の柄のところに目立つ傷があるのに気が付いた。
(あのときのはいざらか。)
あの時の灰皿か。
(しっかりしてるな。)
しっかりしてるな。
(くらもちしのいかめしいかおをおもいだして、なんだかおかしくなった。)
倉持氏のいかめしい顔を思い出して、なんだかおかしくなった。