もういいかい -1-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文

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(ししょうからきいたはなしだ。)

師匠から聞いた話だ。

(だいがくにかいせいのはるだった。)

大学二回生の春だった。

(きゅうじつのひるまにぼくとかなこさんはとあるしゅうかいしょにきていた。)

休日の昼間に僕と加奈子さんはとある集会所に来ていた。

(ひらやのさほどおおきくないたてものだ。)

平屋のさほど大きくない建物だ。

(ばいとさきのちょうさじむしょのしょちょうからはなしをききにいくようにしじされただけで、)

バイト先の調査事務所の所長から話を聞きに行くように指示されただけで、

(なんのじゅんびもなしにわたされたちずをたよりにやってきたのだった。)

なんの準備もなしに渡された地図を頼りにやって来たのだった。

(むかえてくれたのはごじゅうねんぱいのじょせい。)

迎えてくれたのは五十年配の女性。

(げんかんからはいってすぐのふすまをあけるとじゅうじょうほどのにほんまがあり、そこへとおされた。)

玄関から入ってすぐの襖を開けると十畳ほどの日本間があり、そこへ通された。

(ちくのよりあいにりようされるしゅうかいしょで、かまたさんというそのじょせいは)

地区の寄り合いに利用される集会所で、鎌田さんというその女性は

(そこのかぎをかんりしているらしい。)

そこの鍵を管理しているらしい。

(そのかまたさんのごしゅじんがちくちょうをしていて、またかのじょじしん、)

その鎌田さんのご主人が地区長をしていて、また彼女自身、

(ちくのふじんかいのかいちょうとのことだった。)

地区の婦人会の会長とのことだった。

(そのとちのめいしゅてきないえがらということだろう。)

その土地の名主的な家柄ということだろう。

(かまたさんがほっそりしたかおにこんわくげなひょうじょうをうかべてきりだしたのは、)

鎌田さんがほっそりした顔に困惑げな表情を浮かべて切り出したのは、

(そのしゅうかいしょにまつわるおばけのはなしだった。)

その集会所にまつわるお化けの話だった。

(「きもちのわるいこえ、ですか」)

「気持ちの悪い声、ですか」

(「ええ」)

「ええ」

(かなこさんのことばにうなずきながら、)

加奈子さんの言葉に頷きながら、

(かのじょはきみわるそうにしせんをへやのなかにさまよわせる。)

彼女は気味悪そうに視線を部屋の中に彷徨わせる。

(おもわずそのしせんをおいかけるが、なにもかわったものはみつからなかった。)

思わずその視線を追いかけるが、なにも変わったものは見つからなかった。

など

(はなしをきくに、かなりいぜんからこのしゅうかいじょのなかでだれのものともしれないこえが)

話を聞くに、かなり以前からこの集会所の中で誰のものとも知れない声が

(どこからともなくきこえてくることがあったそうだ。)

どこからともなく聞こえてくることがあったそうだ。

(ひるのさなかであればこそ、よるのしゅうかいしょともなればひとごこちのしないぶきみさで、)

昼のさなかであればこそ、夜の集会所ともなれば人ごこちのしない不気味さで、

(ましてたったひとりいのこってかたづけものをしているときに、)

ましてたった一人居残って片付け物をしている時に、

(だれもいないはずのへやのなかからこえがするともなれば)

誰もいないはずの部屋の中から声がするともなれば

(そのおそろしさいかばかりか、ということらしい。)

その恐ろしさいかばかりか、ということらしい。

(むかしからひそかにささやかれていたうわさばなしだったのが、このところの)

昔から密かにささやかれていた噂話だったのが、このところの

(おかるとぶーむのせいかちくのこどもたちのあいだでそのうわさがひとりあるきしはじめ、)

オカルトブームのせいか地区の子どもたちの間でその噂が一人歩きしはじめ、

(「おばけのこえにはなしかけられたらへんじをしないところされる」だの、)

「お化けの声に話しかけられたら返事をしないと殺される」だの、

(ぎゃくに「へんじをしてしまうとゆかしたにひきずりこまれる」だのといった)

逆に「返事をしてしまうと床下に引きずり込まれる」だのといった

(おそろしげなかいだんになってしまい、こどもどうしでものかげにかくれておどかしあいを)

恐ろしげな怪談になってしまい、子ども同士で物陰に隠れて脅かしあいを

(するのがはやり、きのよわいこがきぜつしてきゅうきゅうしゃをよぶようなさわぎも)

するのが流行り、気の弱い子が気絶して救急車を呼ぶような騒ぎも

(おこってしまったとのことだった。)

起こってしまったとのことだった。

(「おてらやしんしょくにおはらいをしてもらわなかったんですか」)

「お寺や神職にお祓いをしてもらわなかったんですか」

(かなこさんがそうとうと、かまたさんはこたえにくそうに)

加奈子さんがそう問うと、鎌田さんは答えにくそうに

(「あ、ええ」とあいまいなへんじをした。)

「あ、ええ」と曖昧な返事をした。

(そのようすからぼくは「おはらいをしてもらっても、かいいがおわらなかった」)

その様子から僕は「お祓いをしてもらっても、怪異が終わらなかった」

(といううらをよみとった。たぶんかなこさんもそうおもっただろう。)

という裏を読み取った。たぶん加奈子さんもそう思っただろう。

(そうでもなければ、こんなはなしがちいさなこうしんじょにもちこまれるわけはない。)

そうでもなければ、こんな話が小さな興信所に持ち込まれるわけはない。

(たとえ「おばけ」がらみのいらいをいくつもかいけつし、)

たとえ「お化け」がらみの依頼をいくつも解決し、

(ぎょうかいないではたしょうなのしれたかんばんむすめがいるにしてもだ。)

業界内では多少名の知れた看板娘がいるにしてもだ。

(「そのうわさはいつごろからあるんです」)

「その噂はいつごろからあるんです」

(「さあ・・・・・にじゅうねん、いえ、にじゅうごねんくらいまえだったか、)

「さあ・・・・・二十年、いえ、二十五年くらい前だったか、

(このしゅうかいしょはいちどたてかえをしてまして、そのまえからあったかどうか」)

この集会所は一度建て替えをしてまして、その前からあったかどうか」

(そういってかまたさんはくびをひねった。)

そう言って鎌田さんは首を捻った。

(ということは、はっきりわからないくらいむかしからあるうわさということか。)

ということは、はっきり分からないくらい昔からある噂ということか。

(「あなたじしんはそのこえをきいたことがありますか」)

「あなた自身はその声を聞いたことがありますか」

(はっとひょうじょうをかたくしてかまたさんはあいまいにうなずく。)

ハッと表情を硬くして鎌田さんは曖昧に頷く。

(「こえだけなんですか。すがたをみたというひとは?」)

「声だけなんですか。姿を見たという人は?」

(「わたしは・・・・・みたことはございませんけれど」)

「私は・・・・・見たことはございませんけれど」

(いいよどむ。)

言いよどむ。

(みた、といううわさはあるいている。そううけとった。)

見た、という噂は歩いている。そう受け取った。

(しかし「きもちのわるいこえがきこえる」といううわさがめいんであることは)

しかし「気持ちの悪い声が聞こえる」という噂がメインであることは

(まちがいなようなので、「なにかをみた」といううわさのほうはしんぴょうせいがさらにひくい。)

間違いなようなので、「なにかを見た」という噂の方は信憑性がさらに低い。

(「すこし、みさせてください」)

「少し、見させてください」

(かなこさんはたちあがり、しゅういをかるくみまわしただけでふすまにてをかけた。)

加奈子さんは立ち上がり、周囲を軽く見回しただけで襖に手を掛けた。

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