もういいかい -8-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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2 だったかもしれな 7686 7.8 97.6% 414.6 3267 80 61 2025/09/02
3 HAKU 7249 7.5 96.1% 422.4 3190 128 61 2025/08/28
4 Jyo 5740 A 5.8 97.5% 534.6 3148 79 61 2025/09/01
5 mipo 5135 B+ 5.3 96.3% 595.6 3178 119 61 2025/08/30

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問題文

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(はっとわれにかえった。)

ハッと我に返った。

(ししょうはひだりてをひきながら、みえたか、ときいてくる。)

師匠は左手を引きながら、見えたか、と訊いてくる。

(こんなことができるのは、さいきんしったことだった。)

こんなことができるのは、最近知ったことだった。

(ぼくよりもししょうのほうがはるかにれいかんがつよく、)

僕よりも師匠の方が遥かに霊感が強く、

(ししょうにみえてぼくにはみえないということがたたあったのだが、)

師匠に見えて僕には見えないということが多々あったのだが、

(そんなときにししょうのからだのどこかにふれていると、)

そんな時に師匠の身体のどこかに触れていると、

(どういうこうかなのかほぼおなじれべるでみえてしまうことがあったのだ。)

どういう効果なのかほぼ同じレベルで見えてしまうことがあったのだ。

(こうれいじゅつなどで、さんかしゃどうしがてをつなぐのとおなじことなのだろうか。)

交霊術などで、参加者同士が手を繋ぐのと同じことなのだろうか。

(しゅういにざわざわしたくうきがもどってくる。)

周囲にざわざわした空気が戻ってくる。

(ぼくらをきいのめでみつめるひとびとにししょうはむきなおった。)

僕らを奇異の目で見つめる人々に師匠は向き直った。

(「このしたに、まつばらちえさんがうまっています」)

「この下に、松原千枝さんが埋まっています」

(けんのんなことばにおどろきのこえがあがれば、「やっぱり」というようなこえもあがった。)

剣呑な言葉に驚きの声が上がれば、「やっぱり」というような声も上がった。

(そしてはんぶんいじょうはうたがわしげなこえ。)

そして半分以上は疑わしげな声。

(あねとかくれんぼをしてあそんでいるさいちゅうに、べんそうにかくれたちえさんと、)

姉とかくれんぼをして遊んでいる最中に、便槽に隠れたちえさんと、

(ぐうぜんそれをみつけてしまったちちおや。)

偶然それを見つけてしまった父親。

(そしてどういうしんりがはたらいたのか、しょうどうてきにむすめをいしでうってころしてしまう。)

そしてどういう心理が働いたのか、衝動的に娘を石で打って殺してしまう。

(それからはおそらくだが、べんそうをこんくりかなにかでそのままうめたて、)

それからは恐らくだが、便槽をコンクリかなにかでそのまま埋め立て、

(ちえさんはいなくなってしまったことになった。)

ちえさんはいなくなってしまったことになった。

(とつとつとかたったししょうに、うなずくひともいればうさんくさそうなかおをかくさないひともいる。)

訥々と語った師匠に、頷く人もいれば胡散臭そうな顔を隠さない人もいる。

(しかしとうじのまつばらちえをしるおばあちゃんはなみだをうかべて)

しかし当時の松原ちえを知るおばあちゃんは涙を浮かべて

など

(ことばをはっせないじょうたいになっていた。)

言葉を発せない状態になっていた。

(「じゃあ、しゅうかいじょできこえたきもちのわるいこえは、そのちえさんが?」)

「じゃあ、集会所で聞こえた気持ちの悪い声は、そのちえさんが?」

(だれかがいったことばにししょうはかぶりをふった。)

誰かが言った言葉に師匠はかぶりを振った。

(「わたしたちがきいたのは、もういいかい、ということばでした。)

「私たちが聞いたのは、もういいかい、という言葉でした。

(ちえさんはかくれるがわでした。だから、ちえさんなら「まあだだよ」)

ちえさんは隠れる側でした。だから、ちえさんなら「まあだだよ」

(もしくは「もういいよ」とかえすはずです」)

もしくは「もういいよ」と返すはずです」

(そうだ。もういいかい、はさがすがわのことば。さがしているのはだれだ?)

そうだ。もういいかい、は探す側の言葉。探しているのは誰だ?

(「やよいさんが・・・・・」)

「やよいさんが・・・・・」

(おばあさんがようやくそれだけをいった。)

おばあさんがようやくそれだけを言った。

(はんかちでなみだをとめようとめもとをあかくしている。)

ハンカチで涙を止めようと目元を赤くしている。

(まつばらやよいが、あるひかくれんぼのさいちゅうにきゅうにいなくなったいもうとをさがして)

松原やよいが、ある日かくれんぼの最中に急にいなくなった妹を探して

(いまもさまよっているというのか。そのたましいだかしねんだかで。)

今も彷徨っているというのか。その魂だか思念だかで。

(うさんくさげだったひとびとも、きみのわるいかいだんからにんじょうばなしになりそうなせいか、)

胡散臭げだった人々も、君の悪い怪談から人情話になりそうなせいか、

(なっとくしたようなふんいきになってきた。)

納得したような雰囲気になってきた。

(たしかにげんにそんなきもちのわるいこえのうわさがひろがっているいじょう、)

確かに現にそんな気持ちの悪い声の噂が広がっている以上、

(これはおとしどころとしてはとっつきやすいのだろう。)

これは落とし処としては取っ付き易いのだろう。

(しかしぼくが、さいしょにししょうがいっていた「ことばははっしていたが、)

しかし僕が、最初に師匠が言っていた「言葉は発していたが、

(にんげんてきなものをかんじなかった」ということばがひっかかっていた。)

人間的なものを感じなかった」という言葉が引っ掛かっていた。

(そこまでいうのであれば、たんじゅんなれいなどではないはずだ。)

そこまで言うのであれば、単純な例などではないはずだ。

(がぜんいどばたかいぎになってしまったばしょで、それぞれのざつだんのなみをこえて)

俄然井戸端会議になってしまった場所で、それぞれの雑談の波を超えて

(ししょうはまだなみだをふいているおばあさんにはなしかけた。)

師匠はまだ涙を拭いているおばあさんに話しかけた。

(「すみません。あとひとつだけ。となりまちへひっこしたあと、)

「すみません。あと一つだけ。隣町へ引っ越した後、

(やよいさんはどうされました」)

やよいさんはどうされました」

(「・・・・・けっこんされてどこかへいかれていたはずですが、)

「・・・・・結婚されてどこかへ行かれていたはずですが、

(にじゅうねんまえくらいまえにだんなさまとしにわかれてとなりまちへもどってらっしゃいました。)

二十年前くらい前に旦那様と死に別れて隣町へ戻ってらっしゃいました。

(そのあとはわたしともまたおうらいがございましてしたしくしておりましたが、)

その後は私ともまた往来がございまして親しくしておりましたが、

(たしかあれはご、ろくねんまえだったかとおもいますが、)

確かあれは五、六年前だったかと思いますが、

(むねをわるくしてにゅういんさきのびょういんでなくなりました」)

胸を悪くして入院先の病院で亡くなりました」

(「ご、ろくねんまえ」)

「五、六年前」

(ししょうはそうつぶやくと、ちがう、というようにくびをふった。)

師匠はそう呟くと、違う、というように首を振った。

(「おっかむのかみそりだ」とぼくにみみうちする。)

「オッカムの剃刀だ」と僕に耳打ちする。

(「いいか。こえがきこえるといううわさは、やよいさんのぞんめいちゅうからあった。)

「いいか。声が聞こえるという噂は、やよいさんの存命中からあった。

(ではいきりょうか?いきりょうになってまでむかしいなくなったいもうとをさがしていた)

では生霊か?生霊になってまで昔いなくなった妹を探していた

(というのであればびだんだが、ほんにんはとなりまちにすんでいるんだ。)

というのであれば美談だが、本人は隣町に住んでいるんだ。

(なまみでくればいいんだから、わざわざいきりょうになるひつようもない。)

生身で来ればいいんだから、わざわざ生霊になる必要もない。

(ではむかしいもうとがいなくなったことをふだんはわすれているか)

では昔妹がいなくなったことを普段は忘れているか

(ほとんどにんしきしていないとして、よるねむっているときにだけそれをおもいだし、)

ほとんど認識していないとして、夜眠っている時にだけそれを思い出し、

(たましいがにくたいからはなれてとなりまちからさがしにきているのか。)

魂が肉体から離れて隣町から探しに来ているのか。

(そしてご、ろくねんまえにやよいさんがしんだあとも、こんどはいきりょうとなって)

そして五、六年前にやよいさんが死んだ後も、今度は生霊となって

(いぜんとかわらないあらわれかたでいもうとをさがしつづける?」)

以前と変わらない現れ方で妹を探し続ける?」

(ししょうのささやきをきいているとなんだかややこしくなってきた。)

師匠の囁きを聞いているとなんだかややこしくなってきた。

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