もういいかい -9-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 8182 8.2 99.1% 335.6 2769 23 58 2025/08/28
2 だったかもしれな 7567 7.7 97.7% 369.2 2861 67 58 2025/09/02
3 HAKU 7086 7.4 95.8% 378.3 2801 120 58 2025/08/28
4 Jyo 5518 A 5.7 96.6% 484.7 2770 95 58 2025/09/01
5 mipo 5135 B+ 5.3 95.5% 517.8 2789 130 58 2025/08/30

関連タイピング

問題文

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(「いきりょうからしりょうへそのままひきつがれるきいなんてきいたことがない。)

「生霊から死霊へそのまま引き継がれる奇異なんて聞いたことがない。

(それいがいにもめんどくさいぜんていがおおすぎる。おっかむのかみそりというのは)

それ以外にもめんどくさい前提が多すぎる。オッカムの剃刀というのは

(てつがくだかろんりがくだかのことばでな、)

哲学だか論理学だかの言葉でな、

(あるげんしょうをおなじていどにうまくせつめいするかせつがあるなら、)

ある現象を同じ程度にうまく説明する仮説があるなら、

(よりたんじゅんなほうがよりよいかせつである、っていうきんげんだ。)

より単純な方がより良い仮説である、っていう金言だ。

(わたしなら、こうかせつするね。「もういいかい」といってさがしにきているのは)

私なら、こう仮説するね。「もういいかい」と言って探しにきているのは

(まつばらやよいではない」)

松原やよいではない」

(それはただのはんろんでかせつではないでしょう。)

それはただの反論で仮説ではないでしょう。

(そうかえそうとおもったが、ぞくりとするおかんにくちをつぐんだ。)

そう返そうと思ったが、ぞくりとする悪寒に口をつぐんだ。

(ではいったいなにがまつばらちえをさがしてしゅうかいじょをさまよっているというのか。)

では一体なにが松原ちえを探して集会所を彷徨っているというのか。

(ぼくらをむししてざわざわとおもいおもいのかいわをしているひとびとのなかで、)

僕らを無視してざわざわと思い思いの会話をしている人々の中で、

(ししょうはゆっくりとかんがえをまとめるようとするようにつぶやく。)

師匠はゆっくりと考えをまとめるようとするように呟く。

(「こどもなんだ。かくれんぼをしていたこども。さがしにくるはずのおに。)

「子どもなんだ。かくれんぼをしていた子ども。探しにくるはずの鬼。

(なかなかみつけてくれない。わたしはここにいるのに。ここに。)

なかなか見つけてくれない。わたしはここにいるのに。ここに。

(このじめんのしたに。そうか。あそびあいてだ。)

この地面の下に。そうか。遊び相手だ。

(あそびあいてがいないこどもはどうする?こどくのなかでかくうのあそびあいてをつくる。)

遊び相手がいない子どもはどうする?孤独の中で架空の遊び相手を作る。

(いまじなりー・こんぱにおんだ。」)

イマジナリー・コンパニオンだ。」

(ししょうのひとりごとをきいてぼくもおもいあたった。いまじなりー・こんぱにおんは)

師匠の独り言を聞いて僕も思い当たった。イマジナリー・コンパニオンは

(ようじきにとくゆうのくうそうじょうのともだちのことだ。)

幼児期に特有の空想上の友だちのことだ。

(しかし。)

しかし。

など

(ほんらいそれはほんにんにしかみえないし、ちかくできないもののはずだ。)

本来それは本人にしか見えないし、知覚できないもののはずだ。

(「いや、しょくばいがあれば、こんせんするようにたしゃがちかくすることもありうる」)

「いや、触媒があれば、混戦するように他者が知覚することもありうる」

(けいけんがあるのか、ししょうはそうだんげんする。)

経験があるのか、師匠はそう断言する。

(「しょくばいって・・・・・」)

「触媒って・・・・・」

(といかけるぼくに、ししょうはじめんをゆびさす。「ほんにんだ」)

問い掛ける僕に、師匠は地面を指さす。「本人だ」

(まつばらちえのれいこんだか、ざんりゅうしねんだかをとおしてぼくらにもかのじょのかくうのあそびあいての)

松原ちえの霊魂だか、残留思念だかを通して僕らにも彼女の架空の遊び相手の

(こえがきこえるというのか。このよにはいない、かくうのかくれんぼのおにのこえが。)

声が聞こえるというのか。この世にはいない、架空のかくれんぼの鬼の声が。

(いったいそれはどんなすがたをしているのだろう。)

一体それはどんな姿をしているのだろう。

(そうぞうしかけた。)

想像しかけた。

(ししょうのひょうじょうがかわる。「しまった」とくちもとがうごく。)

師匠の表情が変わる。「しまった」と口元が動く。

(「もういいかい」)

「もういいかい」

(きこえた。たしかにきこえた。またあのこえが。)

聞こえた。確かに聞こえた。またあの声が。

(しゅういをみたが、はんのうしているのはぼくとししょうだけだった。)

周囲を見たが、反応しているのは僕と師匠だけだった。

(みんなおしゃべりにむちゅうだ。しかしいじょうなものはなにもみつからない。)

みんなお喋りに夢中だ。しかし以上なものは何も見つからない。

(よぞらやしゅうかいじょのかべ、だいどころのかべ、ぷろぱんのぼんべ、)

夜空や集会所の壁、台所の壁、プロパンのボンベ、

(そしてじめんをじゅんばんにみまわすがなにもみつからない。)

そして地面を順番に見回すがなにも見つからない。

(しかしぞくぞくとせすじのけがさかだつ。なんだ。いようなけはい。)

しかしゾクゾクと背筋の毛が逆立つ。なんだ。異様な気配。

(しかしぞくぞくとせすじのけがさかだつ。なんだ。いようなけはい。)

どこからともなく異様な気配を感じる。

(どこからともなくいようなけはいをかんじる。)

まあだだよ、と言ってしまいたくなるのを必死で堪える。

(まあだだよ、といってしまいたくなるのをひっしでこたえる。)

師匠は脂汗を浮かべて目を剥いたまま俯いている。息が荒い。

(「いま、わたしに、さわるなよ」)

「いま、わたしに、触るなよ」

(それだけをようやくしぼりだすようにつぶやく。)

それだけをようやく搾り出すように呟く。

(くちもとがこえにならないことばをつむいでいた。ぼくはそれをよみとる。)

口元が声にならない言葉を紡いでいた。僕はそれを読み取る。

(ちゃんねるが、あっちまった。と、そういっている。)

チャンネルが、あっちまった。と、そう言っている。

(ししょうにはみえている。)

師匠には見えている。

(むねがみゃくうつ。そうぞうしまいとする。なにをそうぞうしたくないのか。)

胸が脈打つ。想像しまいとする。なにを想像したくないのか。

(もちろん、いないはずのかくれんぼのおに。じゅっさいそこそこの、)

もちろん、いないはずのかくれんぼの鬼。十歳そこそこの、

(ちてきしょうがいをもつしょうじょが、ちちおやにいしでうちころされたしょうじょが、)

知的障害を持つ少女が、父親に石で打ち殺された少女が、

(そのままじめんのそこにうめられたしょうじょが、)

そのまま地面の底に埋められた少女が、

(ずっとだれかがみつけてくれるのをまちつづけるそのしょうじょが、)

ずっと誰かが見つけてくれるのを待ち続けるその少女が、

(くうそうでつくりあげたおに。よなよなしゅうかいしょをさまようなにか。)

空想で創りあげた鬼。夜な夜な集会所を彷徨うなにか。

(ああ、そうぞうしまいとして、そうぞうしてしまう。しこうがとまらない。)

ああ、想像しまいとして、想像してしまう。思考が止まらない。

(やがて、すうふんにも、すうじかんにもおもえるじかんがすぎさり、)

やがて、数分にも、数時間にも思える時間が過ぎ去り、

(こうちょくしたかたをししょうがたたいた。)

硬直した肩を師匠が叩いた。

(「もうきえた」)

「もう消えた」

(かくれんぼのおにをやりすごすには、)

かくれんぼの鬼をやりすごすには、

(じっといきをころしてたえるしかないということをいまさらおもいだす。)

じっと息を殺して耐えるしかないということを今さら思い出す。

(ししょうのかおいろはそうはくになっている。いったいどんなおそろしいものをみたのか。)

師匠の顔色は蒼白になっている。一体どんな恐ろしいものを見たのか。

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