食べる -4-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文

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(「そのじんじゃのくでんに、てんぐをまつるようになったゆらいがあるんだけど、)

「その神社の口伝に、天狗を祀るようになった由来があるんだけど、

(すこしみょうなんだ。こういっている。「そのきずつきたるすがた、いかなるけものにもにず、)

少し妙なんだ。こう言っている。「その傷つきたる姿、いかなる獣にも似図、

(はだはあおぐろく、そうしん、なきごえはきじのごとし」」)

肌は青黒く、痩身、鳴き声は雉の如し」」

(にたりとわらっておじさんはわたしのはんのうをたしかめる。)

ニタリと笑っておじさんはわたしの反応を確かめる。

(「おじょうちゃんのしっているてんぐとちがうだろう?かおはあかくないし、)

「お嬢ちゃんの知っている天狗と違うだろう?顔は赤くないし、

(いっぽんばのげたのこともやまぶしすがたのことも、そしてなによりたかいはなのことを)

一本歯のゲタのことも山伏姿のことも、そしてなにより高い鼻のことを

(いっていない。それなのに「てんぐ」だとしてまつられているんだ」)

言っていない。それなのに「天狗」だとして祀られているんだ」

(たしかにふしぎなきがした。)

確かに不思議な気がした。

(「そのなぞをとくにはすこしてんぐというそんざいのなりたちをせつめいしないといけないね。)

「その謎を解くには少し天狗という存在の成り立ちを説明しないといけないね。

(てんぐがいまのすがたになったのはかまくらじだいいこうといわれている。やまぶしのすがたをみても)

天狗が今の姿になったのは鎌倉時代以降と言われている。山伏の姿を見ても

(わかるとおり、かれらはしゅげんどうのぎょうじゃにだいひょうされるやまのたみのしょうちょうだ。)

分かるとおり、彼らは修験道の行者に代表される山の民の象徴だ。

(そしてみっきょうがさかんになったじゅういっせいきいこう、ぶっきょうのてきたいしゃとしてのせいしつが)

そして密教がさかんになった十一世紀以降、仏教の敵対者としての性質が

(ふかされていく。こっかと、それをしゅごするぶつどうにまつろわぬここうのそんざい。)

付加されていく。国家と、それを守護する仏道にまつろわぬ孤高の存在。

(そしておのれのげんりきをこじし、まんしんのごんげとしてみっきょうにいどみ、うちまかされるそんざい。)

そして己の験力を誇示し、慢心の権化として密教に挑み、打ち負かされる存在。

(そうしたぶっきょうせつわのあんちひーろーがかれらだ。)

そうした仏教説話のアンチヒーローが彼らだ。

(それはみっきょうじしんがおのれのげんりきをこじし、ちんごぶっきょうとしてかっこたるちいを)

それは密教自身が己の験力を誇示し、鎮護仏教として確固たる地位を

(しめるための、ようかいといういわばやられやくをわりふられた、)

占めるための、妖怪といういわばやられ役を割り振られた、

(あまたあるにほんこらいのかみがみのひとつだよ」)

あまたある日本古来の神々のひとつだよ」

(おじさんのはいごにほんだなのなかみがでんきゅうのあかりにうっすらとうかぶようにみえた。)

おじさんの背後に本棚の中身が電球の明かりに薄っすらと浮かぶように見えた。

(みんわやおばけにかんするほんがぎっしりとつまっているようだった。)

民話やお化けに関する本がぎっしりと詰まっているようだった。

など

(つぼをむねのまえでかかえたままおじさんはつづける。)

ツボを胸の前で抱えたままおじさんは続ける。

(「おじょうちゃんはなんさい?・・・・・そう、かわいいねえ。)

「お嬢ちゃんは何歳?・・・・・そう、かわいいねえ。

(「てんぐ」というじをかけるかな。てんはてんごくのてん。くはけものへんに)

「天狗」という字を書けるかな。天は天国の天。狗はケモノヘンに

(くとうてんのくとかくんだ。こっくりさんというあそびをしたことがあるかな。)

句読点の句と書くんだ。狐狗狸さんという遊びをしたことがあるかな。

(かんじでかくと、きつねとたぬきでこのくをはさんでいる。このくはいぬといういみだね。)

漢字で書くと、狐と狸でこの狗を挟んでいる。この狗はイヌという意味だね。

(のやまやさとでひとをまどわせるけものたち。ところでさっきのてんぐをまつった)

野山や里で人を惑わせるケモノたち。ところでさっきの天狗を祀った

(じんじゃなんだけど、じつはとってもふるいじんじゃでね、)

神社なんだけど、実はとっても古い神社でね、

(かまくらばくふのせいりつよりにひゃくねんいじょうまえにたてられている。)

鎌倉幕府の成立より二百年以上前に建てられている。

(へいあんじだいだ。つまりてんぐがいまのすがたになるまえだね。じゃあまんしんしてはなが)

平安時代だ。つまり天狗が今の姿になる前だね。じゃあ慢心して鼻が

(たかくなるまえのてんぐのすがたはどうだっただろう。ただのやまぶし?)

高くなる前の天狗の姿はどうだっただろう。ただの山伏?

(いいや、てんぐはしゅげんどうのせいりつよりもっともっとふるいものだ。)

いいや、天狗は修験道の成立よりもっともっと古いモノだ。

(にほんのしんわをつづったにほんしょきというものをきいたことがあるかな。)

日本の神話をつづった日本書紀というものを聞いたことがあるかな。

(へいあんじだいよりさらにむかしの、ならじだいにできたほんだよ。そのなかにね、)

平安時代よりさらに昔の、奈良時代にできた本だよ。その中にね、

(てんぐについてふれたくだりがある。・・・・・あるときはひがしのそらから)

天狗について触れたくだりがある。・・・・・あるときは東の空から

(おおきなおとをたててほしがおちてきた。ひとびとはおどろき、りゅうせいだりゅうせいだとさわいだ。)

大きな音を立てて星が落ちてきた。人々は驚き、流星だ流星だと騒いだ。

(しかしあるほうしはこういった。「りゅうせいにあらず。これてんぐなり」」)

しかしある法師はこう言った。「流星ニ非ズ。是レ天狗ナリ」」

(はいごからきこえるねこのなきごえがおおきくなった。)

背後から聞こえる猫の鳴き声が大きくなった。

(びくりとしてわたしはくびをすくめる。てんぐというこっけいなことばのひびきが、)

ビクリとしてわたしは首を竦める。テングという滑稽な言葉の響きが、

(ぐわぐわとなにかえたいのしれないものにかわっていくようなきがした。)

ぐわぐわとなにか得体の知れないものに変わっていくような気がした。

(「てんにちょうだいなおをひいてながれるひのたま。ただのながれぼしではなく、)

「天に長大な尾を引いて流れる火の球。ただの流れ星ではなく、

(にんげんにとってなにかじゅうだいないみをもつきざし。)

人間にとってなにか重大な意味を持つ兆し。

(てんをかけけるきつね。あまきつねだよ」)

天を翔ける狗(キツネ)。天狐(アマキツネ)だよ」

(おじさんはそういいながらつぼのひょうめんをなでる。)

おじさんはそう言いながらツボの表面を撫でる。

(「くというじはね、きつねともよむんだ。とってもふるいよみかただね。)

「狗という字はね、キツネとも読むんだ。とっても古い読み方だね。

(でもこのてんぐはにほんでうまれたものじゃない。ちゅうごくのふるいしょもつにも)

でもこの天狗は日本で生まれたものじゃない。中国の古い書物にも

(そのすがたがみえる。きげんまえにできた「せんがいきょう」というほんには、)

その姿が見える。紀元前にできた「山海経」という本には、

(てんぐのしょうたいはひのたまである、とでている。)

天狗の正体は火の球である、とでている。

(「しき」では、りゅうせいのようだが、ちじょうにおりてはく(きつね)ににていて、)

「史記」では、流星のようだが、地上に降りては狗(キツネ)に似ていて、

(ほのおをはっするとしている。・・・・・どうかな。)

炎を発するとしている。・・・・・どうかな。

(はながたかいあからがおのやまぶしとぜんぜんちがうだろう。にほんにはてんぐじんじゃというじんじゃが)

鼻が高い赤ら顔の山伏と全然違うだろう。日本には天狗神社という神社が

(たくさんあるけど、そこにまつられているてんぐはさるたひこというかみさまのぶんれいだよ。)

たくさんあるけど、そこに祀られている天狗は猿田彦という神様の分霊だよ。

(はなのたかいかみさまだ。そのはなのたかいところがかまくらきいこうのてんぐにつうじるから)

鼻の高い神様だ。その鼻の高いところが鎌倉期以降の天狗に通じるから

(どういつしされたんだね。ひどいはなしだ。まんしんではなののびたぶっきょうのかたきやくが)

同一視されたんだね。酷い話だ。慢心で鼻の伸びた仏教のカタキ役が

(しんとうのかみさまになっちゃった。もとはといえばきつねがばけていたんだよ」)

神道の神様になっちゃった。元はといえばキツネが化けていたんだよ」

(おおきなよくようでいう。じじじ・・・・・とでんきゅうがいやなおとをたてる。)

大きな抑揚で言う。ジジジ・・・・・と電球が嫌な音を立てる。

(おじさんがいっぽまえにでた。おもわずいっぽさがる。)

おじさんが一歩前に出た。思わず一歩下がる。

(「でも、ほんとうはきつねでもないんだ。きつねににているりゅうせいのような)

「でも、本当はキツネでもないんだ。キツネに似ている流星のような

(ひのたまなんだから。はれーすいせいをしってるかな。もうすこししたら)

火の球なんだから。ハレー彗星を知ってるかな。もう少ししたら

(ちきゅうにやってくるすいせいだ。べつめい、てんぐぼしともいうよ。)

地球にやってくる彗星だ。別名、天狗星とも言うよ。

(すいせいやりゅうせいぜんぱんをさすことばでもある。ここにむかしのなごりがあるね。)

彗星や流星全般をさす言葉でもある。ここに昔の名残があるね。

(それから「ござっそ」といふるいちゅうごくのほんがある。いつつのざつなまないたという)

それから「五雑俎」とい古い中国の本がある。五つの雑なまな板という

(じをあてるほんだ。そこではてんぐぼしがおちたあとにみつかるけものは)

字をあてる本だ。そこでは天狗星が落ちたあとに見つかるケモノは

(「てんぐ」としょうしている」)

「天狗」と称している」

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