未 本編 -13-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文

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(そのあと、ししょうのへやにおじゃまし、てーぶるにむかいあっていると)

その後、師匠の部屋にお邪魔し、テーブルに向かい合っていると

(「しつれいします」とおかみがひろこさんをともなってはいってきた。)

「失礼します」と女将が広子さんを伴って入ってきた。

(そしてめのまえに、いろあざやかなおぜんがならべられる。)

そして目の前に、色鮮やかなお膳が並べられる。

(しょうかいしてくれたおばあさんのくちぞえがきいたのかわからないが、)

紹介してくれたお婆さんの口添えが効いたのか分からないが、

(きたいいじょうのしょくじにありつけた。)

期待以上の食事にありつけた。

(さんさいのてんぷらなどやまのものがおおかったが、ふだんおいしいものを)

山菜の天麩羅など山の物が多かったが、普段美味しいものを

(たべつけないぼくらびんぼうがくせいにはどれもすぎたりょうりばかりで、)

食べつけない僕ら貧乏学生にはどれも過ぎた料理ばかりで、

(ふたりともなんどもごはんをおかわりしてきゅうじしてくれたひろこさんをあきれさせた。)

二人とも何度もご飯をおかわりして給仕してくれた広子さんを呆れさせた。

(ししょうはさいごにちゃわんにのこったごはんにおちゃをそそぎ、はくさいのつけものをのせてから)

師匠は最後に茶碗に残ったご飯にお茶を注ぎ、白菜の漬物を乗せてから

(かきこんだ。そしてようやくひとごこちがついた、というひょうじょうではしをおく。)

書き込んだ。そしてようやく人心地がついた、という表情で箸を置く。

(さすがにばんしゃくはなかった。ししょうがそれがすこしものたりなそうだった。)

さすがに晩酌はなかった。師匠がそれが少し物足りなそうだった。

(しかしこれからがしごとのほんばんなのだ。)

しかしこれからが仕事の本番なのだ。

(そこへころあいをみはからったおかみがへやにもどってきた。)

そこへ頃合いを見計らった女将が部屋に戻ってきた。

(「いかがでしたか」)

「いかがでしたか」

(そうきかれて、ふたりともすなおにりょうりをほめた。おんせんちとしては)

そう訊かれて、二人とも素直に料理を褒めた。温泉地としては

(あまりゆうめいではないこのちで、りょかんをさんだいにわたってつづけられているのも)

あまり有名ではないこの地で、旅館を三代に渡って続けられているのも

(こうしたふかかちがあるからかもしれない。)

こうした付加価値があるからかもしれない。

(「すこし、いいですか」)

「少し、いいですか」

(ししょうはあらたまったくちょうでおかみにといかけた。)

師匠は改まった口調で女将に問い掛けた。

(「はい」)

「はい」

など

(おかみはひろこさんにおぜんをかたづけさせながら、きもののすそをきれいにととのえながら)

女将は広子さんにお膳を片付けさせながら、着物の裾を綺麗に整えながら

(てーぶるのわきにせいざをした。)

テーブルの脇に正座をした。

(そんなふうにされるとこちらもおちつかず、ぼくはおもわずざぶとんのうえに)

そんな風にされるとこちらも落ち着かず、僕は思わず座布団の上に

(せいざですわりなおす。ししょうはきにしないようすで、あぐらをかいたまま)

正座で座りなおす。師匠は気にしない様子で、あぐらをかいたまま

(おかみにはなしかけた。)

女将に話しかけた。

(「わかみやじんじゃは、このさきのちょすいちをつくったたかはしたかはしながおきがかんじょうしたじんじゃですか」)

「若宮神社は、この先の貯水地を作った高橋高橋永熾が勧請した神社ですか」

(「ええ。そうきいております」)

「ええ。そう聞いております」

(たかはしけはそのあと、むすこのだいでべつのせんごくぶしょうにせめほろぼされたのだそうだ。)

高橋家はその後、息子の代で別の戦国武将に攻め滅ぼされたのだそうだ。

(それいらい、このちはとくがわばくふがひらかれるまで、)

それ以来、この地は徳川幕府が開かれるまで、

(なんどもしはいするぶしょうがかわっていった。)

何度も支配する武将が変わっていった。

(すらすらとしゃべるおかみからのそのことばのはしばしから、かなりのきょうようのほどがうかがえる。)

すらすらと喋る女将からのその言葉の端々から、かなりの教養のほどが窺える。

(かんしんしながらきいていると、ししょうはすこしかんがえるそぶりをみせたあと、)

感心しながら聞いていると、師匠は少し考えるそぶりを見せた後、

(わだいをかえた。)

話題を変えた。

(「このうらやまですが、もしかしてだいきぼなどしゃくずれがおきたことが)

「この裏山ですが、もしかして大規模な土砂崩れが起きたことが

(あるんじゃないですか」)

あるんじゃないですか」

(おかみははっとしたひょうじょうをみせる。)

女将はハッとした表情を見せる。

(ついさっき、やまからもどってきて「きたいはずれでした」なんていったいたくせに、)

ついさっき、山から戻ってきて「期待はずれでした」なんて言ったいたくせに、

(けっきょくきくのか。)

結局訊くのか。

(それにこのへやでしごとのはなしをするとしゅかくがぎゃくてんしてしまう、)

それにこの部屋で仕事の話をすると主客が逆転してしまう、

(なんていっていたのに、もうめんどくさくなったのか。)

なんて言っていたのに、もうめんどくさくなったのか。

(なかばあきれながらししょうとおかみのかいわにみみをかたむける。)

半ば呆れながら師匠と女将の会話に耳を傾ける。

(「ええ。わたしがちいさいころですから、もうさんじゅうねんいじょうまえになるでしょうか。)

「ええ。私が小さいころですから、もう三十年以上前になるでしょうか。

(このあたりにきろくてきなだいあめがふったことがございまして・・・・・」)

このあたりに記録的な大雨が降ったことがございまして・・・・・」

(ふりやまないどころか、ますますいきおいをつよくするあめに、)

降り止まないどころか、ますます勢いを強くする雨に、

(こどもながらなにかたいへんなことがおきているということはわかったのだそうだ。)

子どもながらなにか大変なことが起きているということはわかったのだそうだ。

(そのひ、おりからのおおあめのために「とかの」にきゃくはいなかったのだそうだが、)

その日、折からの大雨のために「とかの」に客はいなかったのだそうだが、

(りょかんじゅうをみんながばたばたとおちつかずにうごきまわり、ゆうがたごろにはちちおやと、)

旅館中をみんながバタバタと落ち着かずに動き回り、夕方ごろには父親と、

(まだけんざいだったそふとがけっそうをかえて「うらやまをみてくる」とあまぐをかぶって)

まだ健在だった祖父とが血相を変えて「裏山を見てくる」と雨具を被って

(でていった。)

出ていった。

(ちかくのほかのいえからもおとながなんにんかあめのなかにでてきて、)

近くの他の家からも大人が何人か雨の中に出てきて、

(やまのほうへむかったようだった。)

山の方へ向かったようだった。

(おそるおそるげんかんからそとをみていると、たきのようにごうごうというおとをたてて)

恐る恐る玄関から外を見ていると、滝のように轟々という音を立てて

(ふってくるあめのなかから「かわにはちかづくなよ」というだれかのこえが)

降ってくる雨の中から「川には近づくなよ」という誰かの声が

(まざってきこえた。)

混ざって聞こえた。

(しばらくすると、ふいにじひびきのようなおとがあまぞらにうなりをあげた。)

しばらくすると、ふいに地響きのような音が雨空に唸りを上げた。

(それはみみをふさいでもきこえてきた。おそろしいおとだった。)

それは耳を塞いでも聞こえてきた。恐ろしい音だった。

(すみこみのだんせいじゅうぎょういんが「くずれたんじゃないか」とさけんで、)

住み込みの男性従業員が「崩れたんじゃないか」と叫んで、

(あめのなかにとびだしていった。)

雨の中に飛び出していった。

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