保育園 -12-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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1 osanao 4455 C+ 4.7 95.0% 592.1 2784 146 60 2026/03/26

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問題文

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(「そのひはあめがふるかもしれないっていうよほうだったから、) 「その日は雨が降るかも知れないっていう予報だったから、 (みんなかさをもってきていました。) みんな傘を持って来ていました。 (げたばこのところのかさたてにいっぱいおいてありましたから」) 下駄箱のところの傘立てにいっぱい置いてありましたから」 (なるほど。かさのさきでじめんをがりがりとやったわけか。) なるほど。傘の先で地面をガリガリとやったわけか。 (「かさたてはげんかんのところと?」) 「傘立ては玄関のところと?」 (「いちかいのへやのそとのげたばこにもあります。いちかいのこはそこからではいりするので」) 「一階の部屋の外の下駄箱にもあります。一階の子はそこから出入りするので」 (「かさか・・・・・」) 「傘か・・・・・」 (ししょうはそうつぶやいてたちあがり、あけはなしているがらすどのそばにたって) 師匠はそう呟いて立ち上がり、開け放しているガラス戸のそばに立って (そとをみつめる。) 外を見つめる。 (そしてくるりとふりかえると、「かーてんはすべてしめていたんですよね」) そしてくるりと振り返ると、「カーテンはすべて閉めていたんですよね」 (ときいた。そとはおおあめだったのだ。) と訊いた。外は大雨だったのだ。 (いっかいのへやだけではなく、にかいのへやも、そしてじむしつやちょうりしつも、) 一階の部屋だけではなく、二階の部屋も、そして事務室や調理室も、 (すべてかーてんがしまっていたと、せんせいたちはしょうげんした。) すべてカーテンが閉まっていたと、先生たちは証言した。 (「こどもたちのかさはからふるです。だれかがそのかさをてにしてじめんにまほうじんを) 「子どもたちの傘はカラフルです。誰かがその傘を手にして地面に魔法陣を (えがこうとしたら、かーてんのすきまからみえてしまったりはしないですか。) 描こうとしたら、カーテンの隙間から見えてしまったりはしないですか。 (いや、もしまほうじんがえがかれたのがあめがふっているあいだだったとしたら、) いや、もし魔法陣が描かれたのが雨が降っている間だったとしたら、 (そのだれかはじめんにえがくどうぐとしてのかさだけではなく、じぶんがさすための) その誰かは地面に描く道具としての傘だけではなく、自分がさすための (かさもいっしょにてにしたのではないでしょうか。) 傘も一緒に手にしたのではないでしょうか。 (だとすればめだちますね。ほんのすこしでもかーてんのすきまがあれば・・・・・」) だとすれば目立ちますね。ほんの少しでもカーテンの隙間があれば・・・・・」 (せんせいたちのあいだにどうようがはしった。) 先生たちの間に動揺が走った。
など
(ししょうはそれをみのがさない。) 師匠はそれを見逃さない。 (「なにかありましたね」) 「なにかありましたね」 (うながされてえつこせんせいがくちをひらく。) 促されて悦子先生が口を開く。 (「わたしがたんにんをしているあきらくんが・・・・・」) 「私が担任をしているアキラくんが・・・・・」 (あおいものをみた。そういっているらしい。) 青いものを見た。そう言っているらしい。 (ひるねのじかんに、ふとめがさめたとき、がらすどのかーてんのすきまから) 昼寝の時間に、ふと目が覚めたとき、ガラス戸のカーテンの隙間から (あおいいろのなにかをみたのだと。あめのなかに。) 青い色のなにかを見たのだと。雨の中に。 (きにせずまたねてしまったが、ぜったいにみたんだといいはっている。) 気にせずまた寝てしまったが、絶対に見たんだと言い張っている。 (ほかのこはだれもそんなことをいっていない。) 他の子は誰もそんなことを言っていない。 (ごさいじのあきらくんだけのしょうげんだ。) 五歳児のアキラくんだけの証言だ。 (「あおいもの、ですか。このへやからですよね」) 「青いもの、ですか。この部屋からですよね」 (ししょうはそとをみつめるしせんをけわしくする。) 師匠は外を見つめる視線を険しくする。 (えんていのむこうにはふぇんすぞいにきがならんでいる。) 園庭の向こうにはフェンス沿いに木が並んでいる。 (まさかそのえだはのことではあるまい。) まさかその枝葉のことではあるまい。 (「あおいかさをもってきているこは?」というししょうのといに、) 「青い傘を持って来ている子は?」という師匠の問いに、 (「いっぱいいるとおもいます」というこたえがあった。) 「いっぱいいると思います」という答えがあった。 (せんせいのなかにもあおいかさをもってきているひとはなんにんかいて、) 先生の中にも青い傘を持って来ている人は何人かいて、 (そのひ、げんかんのげたばこにもかくじつにあおいかさはあったのだそうだ。) その日、玄関の下駄箱にも確実に青い傘はあったのだそうだ。 (「まあ、まほうじんとかんけいがあるときまったわけでもありませんが」) 「まあ、魔法陣と関係があると決まったわけでもありませんが」 (ししょうはそういったが、あきらかになにかうたがっているかおだ。) 師匠はそう言ったが、あきらかになにか疑っている顔だ。 (「そのひ、じゅういちじからにじまでのあいだしかあめはふっていません。) 「その日、十一時から二時までの間しか雨は降っていません。 (ふりだしてからはすぐにみんなえんしゃにはいり、) 降り出してからはすぐにみんな園舎に入り、 (そのあとだれもあめがあがるまでそとにでていません。) その後誰も雨が上がるまで外に出ていません。 (かくじつにいえることは、あめがあがってそうどうがもちあがったとき、) 確実に言えることは、雨が上がって騒動が持ち上がった時、 (ぬれたかさがいっぽん、もしくはにほんかさたてにあったとしたら、) 濡れた傘が一本、もしくは二本傘立てにあったとしたら、 (そのかさをおいたのは、あめがふっているあいだにそとにでてまほうじんを) その傘を置いたのは、雨が降っている間に外に出て魔法陣を (えがいたじんぶつのかのうせいがたかい、ということです」) 描いた人物の可能性が高い、ということです」 (ししょうのことばにぼくはかんしんした。) 師匠の言葉に僕は感心した。 (そうか。そのひ、だれもかさはつかっていないはずだ。) そうか。その日、誰も傘は使っていないはずだ。 (つかったとすれば、こっそりそとへでるひつようがあったじんぶつだけ。) 使ったとすれば、こっそり外へ出る必要があった人物だけ。 (ぬれたかさがかさたてにあったとしたら、) 濡れた傘が傘立てにあったとしたら、 (それはすなわちまほうじんをえがいたはんにんのものにちがいないのだ。) それはすなわち魔法陣を描いた犯人のものに違いないのだ。 (そこまでかんがえてぼくは、いやちがう、とおもった。) そこまで考えて僕は、いや違う、と思った。 (はんにんがじぶんのかさをつかったとはかぎらない。) 犯人が自分の傘を使ったとは限らない。 (ましてがいぶからのしんにゅうしゃだとすればとうぜんだ。) まして外部からの侵入者だとすれば当然だ。 (しかも、ほいくしたちはそろってくびをよこにふった。) しかも、保育士たちは揃って首を横に振った。 (だれもげたばこのぬれたかさなどかくにんしていないのだ。) 誰も下駄箱の濡れた傘など確認していないのだ。 (そのそうどうのなか、そこまでちえがまわらなくてもしかたがないといえた。) その騒動の中、そこまで知恵が回らなくても仕方がないと言えた。 (もはやゆいいつといっていいぶっしょうもたたれたようだ。) もはや唯一と言っていい物証も断たれたようだ。 (しばしちんもくがおりた。) しばし沈黙が降りた。
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