趣味の話 -3-
師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文
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(「おい。この、ぱんでもくってろ、ってのがさいごか」)
「おい。この、パンでも食ってろ、ってのが最後か」
(「はい」)
「はい」
(「いつだ」)
「いつだ」
(「いつって、ついさっきですよ」)
「いつって、ついさっきですよ」
(「なんぷんまえだ」)
「何分まえだ」
(「なんぷんというか、いきなりさけびだしておきるちょくぜんですよ」)
「何分というか、いきなり叫び出して起きる直前ですよ」
(「ちょくぜん・・・・・?」)
「直前・・・・・?」
(ししょうはしんけんなひょうじょうになり、めをみひらいたまま、)
師匠は真剣な表情になり、目を見開いたまま、
(なにかをおもいだそうとするようにひたいにてをあてた。)
なにかを思い出そうとするように額に手を当てた。
(「ゆめがかわってる」)
「夢が変わってる」
(「は?」)
「は?」
(「そんな、ぶらいあんとがでてくるようなたのしいゆめじゃなかったぞ」)
「そんな、ブライアントが出てくるような楽しい夢じゃなかったぞ」
(まがおでそういわれて、なんだかわけのわからないままにさむけがしてきた。)
真顔でそう言われて、なんだかわけの分からないままに寒気がしてきた。
(「どんなゆめを、みてたんです?」)
「どんな夢を、見てたんです?」
(きょうきょうとそうたずねた。)
恐々とそう訊ねた。
(ししょうはみぎてをゆっくりとまえにつきだしてめにみえない)
師匠は右手をゆっくりと前に突き出して目に見えない
(なにかをさぐるようなしぐさをする。)
なにかを探るような仕草をする。
(「こう・・・・・だれもいないよるのまちで、)
「こう・・・・・誰もいない夜の街で、
(どうろになにかがはいずったようなあとがあって、それをたどっていくと・・・・・」)
道路になにかが這いずったような跡があって、それを辿っていくと・・・・・」
(そこでくちごもった。)
そこで口ごもった。
など
(つづけようとしたようだが、てだけがちゅうをさまようばかりで)
続けようとしたようだが、手だけが宙を彷徨うばかりで
(ことばがでてはこなかった。)
言葉が出てはこなかった。
(ししょうはいっしゅん、しんたいをふるわせたかとおもうと、またふとんにもぐりこんだ。)
師匠は一瞬、身体を震わせたかと思うと、また布団に潜り込んだ。
(あっけにとられたぼくは、しばらくそのふとんのふくらみをみつめていたが、)
あっけにとられた僕は、しばらくその布団の膨らみを見つめていたが、
(いつまでたってもそのままなので「ちょっと」とゆすった。)
いつまで経ってもそのままなので「ちょっと」と揺すった。
(「なあに?」)
「なあに?」
(「なあにじゃなくて」)
「なあにじゃなくて」
(きになるでしょう。)
気になるでしょう。
(ぼくがうながすと、ふとんのなかからささやくようなこえでこんなことばがかえってきた。)
僕が促すと、布団の中から囁くような声でこんな言葉が返ってきた。
(「なにかいるぞ」)
「なにかいるぞ」
(このまちに・・・・・)
この街に・・・・・
(そうしてふとんがこきざみにゆれた。わらっているのか。おびえているのか。)
そうして布団が小刻みに揺れた。笑っているのか。怯えているのか。
(どちらともしれなかった。)
どちらともしれなかった。
(そんなことがあってしばらくあと、ししょうはこんどはどくしんじゅつにこりはじめた。)
そんなことがあってしばらく後、師匠は今度は読唇術に凝り始めた。
(ぼくはさっそくへやによびだされ、そのれんしゅうあいてをむりやりさせられていた。)
僕はさっそく部屋に呼び出され、その練習相手を無理やりさせられていた。
(「ほんじつは・・・・・せいてんなり?」)
「ほんじつは・・・・・せいてんなり?」
(ぱくぱくぱく。)
パクパクパク。
(「かーる・・・るいす」)
「かーる・・・るいす」
(ぱくぱくぱく。)
パクパクパク。
(「がーたー・・・・・べると」)
「がーたー・・・・・べると」
(ぱくぱくぱく。)
パクパクパク。
(「とむ・・・・・と・・・・・しぇりー」)
「とむ・・・・・と・・・・・しぇりー」
(すわってくちぱくをするぼくのくちびるのうごきだけをみてなにをいっているのか)
座って口パクをする僕の唇の動きだけを見てなにを言っているのか
(あてるのだそうだ。それがせいかいならぼくはだまってうなずくことになっている。)
当てるのだそうだ。それが正解なら僕は黙って頷くことになっている。
(はずれならさゆうだ。ししょうのてもとにはどこでてにはいれたのか、)
外れなら左右だ。師匠の手元にはどこで手に入れたのか、
(どくしんじゅつのはうつーぼんがにぎられている。)
読唇術のハウツー本が握られている。
(「おっ・・・・・ぱい?」)
「おっ・・・・・ぱい?」
(せいかい。)
正解。
(ししょうはそこでちょっとたいむとばかり、りょうてをずじょうでくろすさせた。)
師匠はそこでちょっとタイムとばかり、両手を頭上でクロスさせた。
(「さあ、さっきからなんか、)
「さあ、さっきからなんか、
(ところどころえろいことばをいわせようとしていないか」)
ところどころエロい言葉を言わせようとしていないか」
(ぶんぶんとあたまをふる。)
ぶんぶんと頭を振る。
(うたがわしそうなめでにらみながらししょうはひざをつきあわせたしせいにもどる。)
疑わしそうな目で睨みながら師匠は膝を付き合わせた姿勢に戻る。
(「なんでもいいからしゃべるふりしろ、とかいわれても)
「なんでも良いから喋るフリしろ、とか言われても
(ぎゃくになにをいっていいのかわかんなくなるんですよ」)
逆に何を言って良いのか分かんなくなるんですよ」
(こうぎをすると、ししょうはすこしかんがえこみ、)
抗議をすると、師匠は少し考え込み、
(やがて「じゃあ、ぷろやきゅうせんしゅのなまえしばりでいこう」といった。)
やがて「じゃあ、プロ野球選手の名前縛りで行こう」と言った。